母乳育児中は食事の内容になにかと気を遣うもの。また、母乳をあげていると食べても食べてもお腹が空いてしまうので、「こんなに食べていて大丈夫なのかな」と心配になるママも多いですよね。今回は、授乳中に必要な摂取カロリーや栄養素についてご紹介します。
授乳中は食事に気をつけたほうがいいの?

母乳の主な成分は血液です。母乳育児中のママは授乳によってたくさんの血液を失うことになるため、食事と水分をしっかり摂る必要があります。しかし、何をいくらでも食べても良いというわけではないようです。
食事と乳腺炎との関係
食事と乳腺炎との関係について、WHOは「高塩分と高脂肪の摂取は乳腺炎の可能性を高めるなど、食べ物と乳腺炎は関係があるのではないかと考えられているが、根拠はまだはっきりしていない」と述べています(※1)。
乳腺炎は母乳が乳房内に溜まってしまうことで引き起こされますが、食べ物によって母乳がうっ滞するかどうかについては、まだはっきりとした調査研究の結果が出ていません(※2)。
実際、母乳育児の支援を行う母乳外来でも乳腺炎対策として食事の指導をすることがあります(※3)。また、脂肪分や糖分の高い食事は乳腺をつまらせることがあるため、できるだけ避けるように指導する書籍もあります(※4)。
つまり、経験則としては、食事と乳腺炎には関係があるのではないか、と考えられているのが現状だといえます。
食事と母乳の質や量との関係
赤ちゃんが乳首を吸って刺激することでオキシトシンが分泌され、母乳の量は増えていきますが、ママの食事が質と量に影響するという調査報告はありません(※2)。乳腺炎との関係同様、食事と母乳の質や量に関して、まだはっきりとした根拠はありません。
ただし、母乳は血液を成分としており、アルコールや喫煙、薬などが母乳を通じて影響をすることからも、食事を含めた様々な影響を受けているのは事実です(※2)。
母乳育児については、産院や母乳外来によって方針が異なるため、「根拠がはっきりしていないのであれば食べ物は気にしない」と考えるか、「食事に気をつけておいて損はない」と考えるかは、ママ自身の判断になります。
授乳中だからといって特別なメニューが必要なわけではありません。和食を中心に、野菜や果物、豆類などを複数品目摂っていれば自然とバランスのいい食事ができます。「偏ったものを大量に食べない、食べ続けない」といったことを心がけましょう。
授乳中の摂取カロリーはどのくらい必要?

完全母乳育児をしている場合、非授乳時に比べてエネルギー量を多く必要とします。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」によると、授乳婦の付加エネルギー量は350kcalです(※5)。
「1日たったの350キロカロリーを増やすだけでいいの?」と少ないと思う人もいるかもしれませんが、これは早足で行うウォーキング1時間分に相当する量です。それだけ授乳というのは体に負担をかけることなので、食事でしっかり補給しましょう。
一方で、食事内容によっては、あっという間に1日のカロリー摂取量を超えてしまうことも。たとえば、菓子パンには、1個で350キロカロリーを超えるものもあります。
成人女性の1日あたりのエネルギー必要量は、身体活動レベルが普通の人で1900~2000kcal、低い人で1650~1750kcal、高い人で2200~2300kcalです(※5)。非授乳時に、このエネルギー量をオーバーしていた人は、授乳中だからといって350kcalを付加する必要はありません。
まずは、自分自身の身体活動レベルや普段の必要エネルギー量を確認したうえで、必要に応じて授乳中の付加エネルギー量を摂るようにしましょう。
授乳中はカロリーだけでなく栄養素も大切

授乳中は様々な栄養素が奪われやすいので、カロリーだけでなく栄養も食事でしっかり補いましょう。ここでは、授乳中のママが積極的に摂りたい栄養素をいくつかご紹介します。
鉄
出産直後は出産による出血が原因で貧血になりやすい状態です。また、母乳は血液から作られるため、慢性的な貧血になるママも多いもの。鉄分をしっかり摂ることで貧血を予防できるので、積極的に摂取するようにしましょう。
おすすめレシピ
鉄分は油分と一緒に摂取すると吸収がよくなります。小松菜とベーコンを塩・こしょうで炒めただけの「小松菜とベーコンの炒めもの」や、茹でたほうれん草と油揚げをしょうゆと砂糖であえた「ほうれん草と油揚げの和えもの」などがおすすめです。
葉酸
葉酸は、妊娠初期の胎児の発達を促進することで有名な栄養素ですが、貧血予防や赤血球の生成や細胞の新生を助けるといった働きもあるので、産後もしっかり摂りたい栄養素です(※6)。
おすすめレシピ
皮をむいたキウイフルーツをヨーグルトに混ぜた「キウイヨーグルト」は簡単にできるうえに便秘対策にも効果的。キウイは半分食べるだけで多くの葉酸を摂取できるので、習慣的に食べることをおすすめします。
カルシウム
カルシウムは骨を丈夫にする作用があるため、赤ちゃんだけでなく産後の授乳でカルシウムを失いがちなママの骨や歯もケアしてくれます。
また、カルシウムが不足するとイライラしがちになるので、積極的に摂るようにしましょう。カルシウムは、牛乳やチーズといった乳製品にも含まれますが、小魚や野菜といった脂肪分が低い食べ物からも摂取できますよ。
おすすめレシピ
葉酸や鉄分が豊富な野菜を牛乳で煮込んだ「ミルクスープ」は、コンソメで味をつけて煮込むだけなので簡単ですよ。血行が促進され、リラックス・安眠効果もあります。
授乳中の摂取カロリーを守りながら食事を楽しもう

母乳育児中は、食べ過ぎているのではないか、これは食べてもいいのかなど、食事に気を遣うようになりますよね。授乳中に必要なカロリーを知ることで、食べ過ぎやエネルギー量の不足を把握することができるので、一度、1日のカロリー摂取量を計算してみるのもおすすめです。
授乳中の食事は、よほど食材が偏らない限り、難しく考える必要はありません。ただし、赤ちゃんに悪影響のあるアルコールやカフェインを控え、カロリーの過剰摂取には注意しましょう。
食べたいものを美味しく食べることは、ストレス解消になり心にゆとりができます。ママが笑顔で赤ちゃんに接するためにも、美味しい食事を食べて健康的に過ごせるといいですね。