産科DICとは?治療法は?妊娠中の播種性血管内血液凝固に注意!

産科DICとは、妊娠中や出産時の様々な病気によって引き起こされる「播種性(はしゅせい)血管内血液凝固」という病気のことです。発症すると母体の命が危険にさらされることもあるため、注意が必要です。そこで今回は、産科DICとはどのような病気なのか、その治療法などについてご紹介します。

産科DIC(播種性血管内血液凝固)とは?

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DIC(播種性血管内血液凝固)とは、血液が固まりやすくなって全身に血栓ができるようになる一方で、その血栓を溶かそうとして血を固まりにくくする働きも活性化し、出血しやすくなるという、複雑な病気です。

DICは、敗血症やがん、急性白血病など、さまざまな病気によって引き起こされますが、特に妊娠や出産にまつわる病気によって引き起こされるものを産科DICと呼びます(※1)。

産科DICの原因は?

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妊娠した女性は血栓ができやすく、もともとDICを発症しやすくなっています。そこに以下のような病気を併発することで、血がより一層固まりやすくなり、産科DICを発症することがあります。

● 常位胎盤早期剥離
● 羊水塞栓症
● 出血性ショック
● 重症感染症

これらの病気のうち、産科DICの約50〜60%は常位胎盤早期剥離によって起こっています(※1)。

産科DICの症状は?

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産科DICは突発的に発症し、急激に進行するのが特徴です。最悪の場合、発症から30〜40分後には死に至ることもあります。

最初は性器から湧き出るような出血が見られることが多く、その後、全身から出血するようになり、下記のような症状が見られます。

● 紫斑(皮膚や粘膜に現れる紫色の斑点)
● 歯茎での出血
● 鼻血

また、出血が起きる一方で血栓もできやすくなっているため、産科DICを発症した女性の約20%は、血栓が原因で腎不全などになり、最終的には多臓器不全に至ることがあります(※1)。

産科DICが起こる確率は?

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産科DICが起こる確率は、妊娠している女性のおよそ200人に1人、つまり約0.5%です(※2)。

なお、産科DICの原因の約半数を占める常位胎盤早期剥離は、妊娠している女性のおよそ100人に1人、約1%で起こります。また、羊水塞栓症は1万人に3人、0.03%の確率で起こります(※1)。

いずれも確率は低いですが、発症すると母体が危険にさらされるので注意が必要な病気です。

産科DICスコアとは?診断基準は?

チェックリスト

産科DICは急激に進行するため、すべての検査結果を確認して診断をしていては治療が手遅れになってしまいます。そのため、「産科DICスコア」という診断基準を用いて、血液検査の結果を待たずに診断します。

以下で、産科DICスコアの一例を紹介します。各基準に点数が割り振られており、合計が8点以上となったときに産科DICとしての治療を開始します(※1)。

● 常位胎盤早期剥離で子宮が硬直し、赤ちゃんが亡くなっている 5点
● 1時間あたりの尿の量が5ml以下 4点
● 意識障害やけいれんがある 4点
● 脈拍が1分あたり100回以上 1点
● 出血時間が5分以上 1点

産科DICの治療法は?

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妊婦さんが産科DICになったらまず、原因となった病気とショック状態に対する治療が行われます。

原因となった病気の治療としては、胎児や胎盤を早めに取り出す、出血している部分の止血、子宮の摘出などを行います。これらに早く取りかかることができれば、産科DICの約80%は予後が良いとされています(※1)。

ショック状態に対する治療では、酸素の投与、輸血、抗ショック薬や利尿薬などの投与が行われます。

こうした治療をした後に、抗DIC療法といって、血液を固まりやすくしたり、反対に固まりにくくしたりする治療を行います(※1)。

産科DICを防ぐため体の変化に気をつけて

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産科DICは発症する確率は低いですが、発症すると急激に進行し、最悪の場合は死に至ることもある病気です。ただし、早めに治療に取りかかることができれば、ほとんどの人は治ります。

産科DICはさまざまな病気によって起こるため、妊娠中は体調の変化には気をつけましょう。

特に、産科DICの原因の約半分を占める常位胎盤早期剥離は、早いうちに治療することが重要なため、妊娠中にお腹に違和感があったり、性器から出血などがあったりした場合は、すぐにかかりつけの産婦人科で診てもらってください(※1)。

健康な出産を迎えるために、日頃から自分の体調には気を配っておきたいですね。

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