高齢出産が増えているため、ダウン症の赤ちゃんが生まれることを気にする人が多くなっています。また、兄弟や親族にダウン症患者がいたら、発症しやすいのか気になるかもしれません。ダウン症の赤ちゃんをちゃんと愛せるか、きちんと育てられるかと、不安になってしまうこともあるでしょう。そこで今回は、ダウン症は遺伝が原因なのか、兄弟や親族にいると発症しやすいのかについて紹介します。
ダウン症とは?
ダウン症の正式名称は「ダウン症候群」といい、遺伝子の集まりである染色体の異常によって起こる病気です。細胞内に46本ある染色体のうち21番目の染色体が1本多い、あるいは部分的に多いことが特徴のため、「21トリソミー」とも呼ばれます。
ダウン症の赤ちゃんは独特な顔つきをしていて、扁平な顔つき、つり上がった目、小さめの耳などが特徴です。また、顔以外の特徴として、先天性の心臓疾患や白内障、斜視、低身長、肥満などの症状が見られることもあります(※1)。
他にも、免疫力が弱かったり、知的障害や運動能力の発達に遅れが見られることが多くあります。
ダウン症は遺伝するの?兄弟や親にいたら?
ダウン症は遺伝子にかかわる病気なので、遺伝する可能性があります。
一般的にダウン症の赤ちゃんが生まれる確率は約600~700人に1人ですが、親族にダウン症患者がいる場合、その家系内でダウン症の赤ちゃんが生まれる確率は約1%と約6~7倍になります(※2)。
また、1人目にダウン症の赤ちゃんを産んだ女性は再びダウン症の赤ちゃんを産む確率が、そうでない人に比べて高くなります。例えば30歳未満の女性のうち、ダウン症の赤ちゃんを産んだことがある人はそうでない人に比べて、ダウン症の赤ちゃんを産む可能性が8.2倍になります(※2)。
ダウン症の遺伝子は検査でわかる?
ダウン症の遺伝子があるかどうかは、親あるいは胎児に染色体の異常があるか検査することでわかります。
しかし倫理的な問題から、妊娠前に卵子や受精卵に染色体異常があるか調べる「着床前診断」を使って、ダウン症の遺伝子を持っているか調べることはできません(※2)。
遺伝子の検査を受けられるのは、妊娠後に胎児が染色体異常を持っているか検査する「出生前診断」です。出生前診断には以下のようなものがあります(※2,3)。
● 母体血清マーカー検査
● 羊水検査
● 絨毛検査
● 無侵襲的出生前遺伝学的検査(NIPT)
このほかにも様々な検査方法があります。ただし、検査方法によって実施できる妊娠週数や検査精度、伴うリスク、かかる費用などが異なります。また、実施できる施設も限られています。
気になる場合はかかりつけの産婦人科医に相談してみてください。
ダウン症の遺伝子は治療できる?
ダウン症の原因となる染色体の異常は何が原因で起きるのか明らかになっていないため、ダウン症を遺伝子レベルで治療する方法はまだありません。
しかし生まれてきた子が持つダウン症の症状に対しての治療法はあります。症状は赤ちゃん1人1人異なり、また年齢によっても変わるので、それぞれに応じた治療を受けさせることが大切です(※4)。
また、運動・精神の発達、言語発達の遅れを軽減するためには早期の療育訓練が有効なので、積極的に公的サービスを利用しましょう(※4)。専門家に相談しながら、適切な指導を受けることで子供の持っている能力を引き出してあげてくださいね。
ダウン症の遺伝を否定しないで
誰しも、生まれてくる子は健康であってほしいと思うもの。自ら望んでダウン症の赤ちゃんを産む人は少ないでしょう。ダウン症が遺伝すると聞いて不安になってしまう人もいると思います。
でもだからといって、ダウン症として生まれてきた子を否定はしないでください。染色体異常がある子は流産しやすいことが知られています。そう考えると、むしろダウン症の赤ちゃんは淘汰という高いハードルを乗り越えてきた、生命力の強い子といえます。
人間は誰一人として同じ人はいません。見た目や性格、体質が一人ひとり違います。ダウン症もその一つだと考えてみてください。健康であろうとダウン症であろうと、わが子であることに変わりはありません。どんな子であっても愛してあげてくださいね。