「マタハラ」や「パタハラ」という言葉を耳にすることが増えてきました。もしかしたら今現在、被害にあっているという人もいるかもしれませんね。今回は、マタハラやパタハラとはどのようなものなのか、具体的な事例にはどのようなものがあるのか、相談窓口はどこにあるのかなどについてご説明します。
マタハラ・パタハラとは?意味や定義は?
マタハラとは「マタニティ・ハラスメント」、パタハラとは「パタニティ・ハラスメント」の略です。マタニティは英語で「母親らしさ」、パタニティは「父親らしさ」を意味しています。
どちらも仕事に関わるハラスメントの一種で、厚生労働省によると、その定義は「職場における妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント」となっています(※1)。
マタハラ・パタハラの具体的な事例は?
定義や意味はわかったけれど、実際にどのようなものがマタハラ、あるいはパタハラに相当するのかすぐには思いつかないかもしれませんね。そこで、マタハラやパタハラの具体的な事例をいくつか紹介します(※1,2)。
マタハラの事例1
上司に妊娠を報告したら、「他の人を雇うので早めに辞めてもらうしかない」と言われた。
マタハラの事例2
妊婦健診のために休暇を取得したいと上司に相談したら、「病院は休みの日に行くものだ」と言われ、相手にしてもらえなかった。
マタハラの事例3
妊娠により立ち仕事を免除してもらっていたら、「あなたばかり座って仕事をしているなんてずるい!」と同僚から言われ、仲間外れにされてしまった。以来、仕事が手につかない。
パタハラの事例1
育児休業を上司に申し出たところ、「男のくせに育休を取るなんでありえない!」と言われ、育休を断念せざるをえなかった。
パタハラの事例2
残業の免除について上司に相談したところ、「次の査定では昇進しないと思え」と言われた。
マタハラ・パタハラは就業規則や法律で禁止されている?
マタハラやパタハラは、男女雇用機会均等法と育児・介護休業法という2つの法律で禁止されており、会社側が防止措置を取るように義務づけられています。
防止措置の具体例は、次の通りです(※1)。
● 就業規則などにマタハラやパタハラが起きたときの罰則を明記する
● マタハラやパタハラについて相談できる担当者や部署を用意する
● 社員に対して研修やパンフレットなどで啓発を行う
社外にも適用されるの?
社外でのマタハラやパタハラも法律で禁止されています。例えば、出張先や業務用車の車中、取引先との打ち合わせ場所で起きたマタハラやパタハラなどです。
ただし、勤務時間外の宴会や懇親会などは、法律が適用されない場合もあります。気になる場合は、この後に説明する相談窓口に確認した方がいいでしょう(※1)。
正社員以外にも適用されるの?
法律が適用されるのは正社員だけではありません。パートタイム労働者や契約社員、派遣社員など、いわゆる非正規労働者と呼ばれる人たちにも男女雇用機会均等法や育児・介護休業法が適用されます(※1)。
マタハラ・パタハラの相談窓口は?
マタハラやパタハラは、残念ながら受け流しているだけでは状況が改善されることはあまりありません。「やめてください」「私は嫌です」というふうに、自分の意思をできるだけ相手に伝えるようにしましょう。
とはいえ、一緒に働く職場の同僚や上司へ、拒否の意思を示すのは難しい場合もあるでしょう。そんなときは、会社の人事や労務の担当者、あるいは部署が違ってもいいので信頼できる上司などに相談してみてはいかがでしょうか。勤務先に労働組合があるのであれば、そこでもいいかもしれません。
社内に相談できそうな人や部署がない場合、または相談しても改善されない場合は、各都道府県にある「都道府県労働局雇用環境・均等部(室)」に相談してください(※2)。
「東京労働局 雇用環境」といったように「◯◯労働局 雇用環境」の◯◯に県名を入れて検索すると、各窓口のウェブサイトが見つかるはずです。
マタハラ・パタハラは一人で抱え込まないで
マタハラやパタハラを受けると、「自分が悪いのかな」と思ってしまうこともあるかもしれません。しかし、どちらも法律で禁止されていることです。マタハラやパタハラを受けたら、自分だけに問題があるとは思わないようにしましょう。
残念ながら、黙って我慢していると、事態がさらに悪化してしまう可能性もあります。相手にはっきりと意思を示したり、相談窓口に相談したりすることが、解決につながるだけでなく、同じようにマタハラやパタハラで悩んでいる他の人を救うことにもつながりますよ。
マタハラやパタハラは個人の問題ではなく、会社の問題です。自分一人で抱え込まず、信頼できる人や窓口に相談してくださいね。