自宅出産は危険なの?費用はどうなる?メリットやデメリットは?

監修専門家 助産師 佐藤 裕子
佐藤 裕子 日本赤十字社助産師学校卒業後、大学病院総合周産期母子医療センターにて9年勤務。現在は神奈川県横浜市の助産院マタニティハウスSATOにて勤務しております。妊娠から出産、産後までトータルサポートのできる助... 監修記事一覧へ

現在の日本では、ほとんどの妊婦さんが病院などの医療機関で出産をします。しかし、一昔前は自宅で出産するのが当たり前で、病院での出産が定着したのは現在の美智子皇后が皇室史上初めて宮内庁病院で出産されたことがきっかけだったともいわれています。ただ最近、病院ではなく自宅で出産を迎えたいという妊婦さんが増えてきているそうです。興味はあっても本当に自宅で出産できるの?と気になりますね。今回は自宅出産のメリット・デメリット、費用はどうなるのかなどをご紹介します。

自宅出産って本当にできるの?

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日本では、かかりつけの産婦人科で診てもらいながら陣痛が来たらその病院で出産するのが一般的なので、「自宅で出産してもいいの?」と驚く人もいるかもしれません。

しかし、必ず病院で出産しなければならないということではありません。最近では、病院などの医療機関で管理されながら出産するのではなく、精神的に落ち着ける場所で出産したいと助産院兼自宅などの場所で出産する人も増えています。自宅で出産するのは決して無理なことではありませんよ。

自宅出産ができない人もいるの?

助産師 妊婦

自宅出産を望むからといって、すべてを自分でするわけではありません。妊娠中は病院でお産する人と同じように助産師さんや産婦人科の医師に診てもらいながら、妊娠経過に不安要素がないかどうかをチェックします。

助産院で出産する場合と同じように、正常な妊娠経過で、以下の症状がなくて自然分娩できる人に限られます。

● 逆子(骨盤位)ではない
● 多胎ではない(双子、三つ子など)
● 帝王切開をしたことがない
● 過去もしくは現在、子宮に異常がない(子宮筋腫など)
● 喘息・甲状腺異常などの合併症がない
● B型肝炎、C型肝炎、HIVなどの感染症がない
● 胎盤の位置に問題がない(前置胎盤など)
● 血液型がRH(−)ではない
● 胎児に異常がない(胎児発育遅延、奇形など)
● 羊水に異常がない(羊水が多い・少ないなど)
● 妊娠経過に異常がない(高血圧、高血糖など)
● 過去に4人以上のお産をしていない

基本的に、以上の項目に1つでもあてはまるときは、緊急時でもすぐに医療的な対処ができる産婦人科で出産することになります。そのほか問題がないかどうかは人によって違うので、しっかりと確認しておくことが大切です。

自宅出産の方法や流れは?

ステップ 流れ

自宅出産をすると決めたら、まずは出産をサポートしてくれる助産師を探してください。助産師は自宅出産に臨むママの強い味方で、分娩時のサポートはもちろん、妊娠中から心身のケアをしてくれます。

また、助産院でも妊婦健診ができるので、定期的に健康チェックもしてもらえます。ただし、すべての助産師が自宅出産に対応してくれるわけではないので、早めに探しておきましょう。

そして、陣痛が始まったら分娩本番です。まずは助産師に電話で連絡します。助産師は24時間いつでも駆けつけてくれます。自宅に来てもらって陣痛から分娩終了時までつき添ってもらいます。

産後も定期的なケアをしてくれます。分娩のリハーサルを一緒にしてくれることもいるので、助産師を探すときに確認しておきましょう。

自宅出産のメリットは?

赤ちゃん

自宅出産の最大のメリットは、妊婦さんが普段生活している慣れた環境で出産ができること。そして、家族全員で立ち会えるので、赤ちゃんの誕生の瞬間を迎えられます。自宅出産したママはリラックスした状態で自然分娩ができるので、産後の回復が早い人も多いそうです。

また、同じ助産師さんに最初から最後まで付き添ってもらえるので安心です。妊娠中の体のチェックから分娩中、出産後の母乳マッサージや沐浴の指導、育児相談にいたるまで、助産師さんの継続的なサポートを受けられます。

自宅出産のデメリットは?リスクはあるの?

リスク

自宅出産の最大のデメリットは、産科医がいないことです。どんなに妊娠経過が順調でも、分娩時にトラブルが起こることは少なくありません。

しかし、なんらかの不測の事態が起きたときに、助産師は医療行為ができません。助産師ができるお産は法律によって「合併症がなく、妊娠中の経過に大きな異常がない場合」に限られているからです。

助産院では提携している病院があるので、万が一のトラブルが起きたときでもその病院に搬送してもらえます。ただ、搬送を終えるまでに時間がかかるので、緊急時の対処が遅れてしまうことがあります。お産は命がけのものなので、命に関わるリスクがゼロではないことは覚えておいてください。

自宅出産の費用はどれくらい?

お願いする助産師によって違いますが、自宅出産の費用はおよそ30~50万円です。助産師による妊婦健診は初診が8,000円ほどで、それ以後は1回ごとに5,000円ほどかかりますが、自治体から妊婦健診補助券が発行されて出産後に還付されるので安くすみます。

また、病院での出産と比べると入院費がかからないので、その分の費用は安くなります。もちろん自宅出産でも1児につき42万円の「出産育児一時金」が出ます。

ただし、助産院によっては自宅出張にかかる交通費や衛生環境を整えるための材料費など追加料金が発生することもあるので、総額でどれくらいになるかは事前に確認しておきましょう。

自宅出産が不安になったら?

カップル 男女 夫婦 妊婦

自宅出産を望んでいても、不安になったら助産院や病院での出産に切り替えることはできます。

しかし、医療機関はベッドが空いているかどうかの問題もあり、特に妊娠後期になると対応できないところも多くあるので、早めに相談してくださいね。

妊娠・出産は何が起こるかわからないので、何が何でも自宅出産をすると考えすぎると、万が一のトラブルへの対応が遅れてしまいかねません。自宅出産を望んでいても、助産師さんとのコミュニケーションをしっかり取り、病院との連携も確認しておいて万全の体制を整えてよりよい出産を迎えてくださいね。

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