マイコプラズマ感染症とは?どんな症状があらわれるの?

監修医師 小児科 武井 智昭
武井 智昭 日本小児科学会専門医。2002年、慶応義塾大学医学部卒。神奈川県内の病院・クリニックで小児科医としての経験を積み、現在は神奈川県大和市の高座渋谷つばさクリニックに院長として勤務。内科・小児科・アレルギ... 監修記事一覧へ

子供に発症し、咳が長く続くことが多い「マイコプラズマ肺炎」は一般的によく知られている病気ですが、その病原体である「肺炎マイコプラズマ」は、肺炎以外にもさまざまな症状を引き起こすことをご存知でしょうか?今回は、マイコプラズマ感染症の症状や治療法についてご紹介します。

マイコプラズマ感染症とは?

細菌 ウイルス 微生物

マイコプラズマ感染症は、「肺炎マイコプラズマ」という細菌の感染により起こるさまざまな症状のことを言います。一般的によく知られている「マイコプラズマ肺炎」も、マイコプラズマ感染症の一つです。

肺炎マイコプラズマは、一年を通して、子供から大人まで年齢を問わず感染します。1歳の誕生日までに40%、5歳までに65%の子供が感染を経験しますが、5歳未満が感染しても、症状が何もないか、あっても軽い場合がほとんどです(※1)。

大人になると、97%もの人が感染を経験していると言われており、感染することは決して珍しくありません(※1)。

また一度感染しても免疫力が続かないため、何度も感染を繰り返すという特徴があります。

マイコプラズマ感染症の症状は?

喉 咳 喘息 気管支炎 のど

マイコプラズマ感染症になると、以下のような症状が見られます(※1)。

● 発熱
● 咳・痰
● 喉の痛み
● 鼻水・鼻づまり
● 頭痛
● 筋肉痛
● 関節痛
● 発疹

もちろん、マイコプラズマ感染症にかかったからといって、上記すべての症状があらわれるわけではありません。

また、よく知られる「マイコプラズマ肺炎」にかかるのは、肺炎マイコプラズマに感染した子供の約10%で、実はそれほど高い確率ではありません(※1)。

マイコプラズマ肺炎はあらわれる症状の個人差が大きく、2~3日で治ることもあれば、1ヶ月以上長引くこともあります(※1)。特に長引くのは咳で、熱が下がったあとにひどくなり、次第に痰が絡んだような湿った咳になっていきます。

マイコプラズマ感染症はどう診断する?

検査 実験 感染症

肺炎マイコプラズマに感染しているかどうかは、10分程度で判定できる「迅速診断キット」や、扁桃腺の粘液や痰を使い60分ほどで判定できる遺伝子検査の「LAMP法」で検査を行うことができます(※2,3)。

ただしどちらも、インフルエンザなどと比べて菌の量が少ないために、状態によっては、感染していても陽性と判定されない可能性があります。LAMP法は、検査結果に2~3日かかることがあります。

かといって、マイコプラズマ感染症にかかっているかどうかを症状だけで判断するのは、難しいのが実情です。

例えばマイコプラズマ肺炎の場合、一番の特徴である咳は発熱したあとにあらわれ、段々とひどくなっていきます。つまり、マイコプラズマ肺炎の特徴的な症状が見られるまで、時間がかかるのです。

そのため、肺炎マイコプラズマに感染しているかどうかは、症状の診断と検査の両方によって総合的に判断されることとなります。

マイコプラズマ感染症の治療法は?

子供 薬 シロップ

マイコプラズマ肺炎など、症状が明らかな場合には、病原体である肺炎マイコプラズマの増殖を防ぐ効果がある抗生物質を使用して、治癒を早めることもできます(※1)。

「マクロライド系」という抗生物質が使用されることが多いですが、マクロライド系に対して耐性がある細菌の感染の場合には、効果が見込めません(※1)。その場合は、「オゼックス」や「ミノマイシン(原則8歳~使用可能)」という抗生物質が使用されることもあります。

ただし前述のとおり、肺炎マイコプラズマに感染してもあらわれる症状はさまざまで、程度にも大きな差があります。熱や咳などにより本人がつらいと感じていなければ、抗生物質を使う必要はないと判断されることもあります。

マイコプラズマ感染症は出席停止になるの?

マイコプラズマ感染症は、法律上では必ず出席停止が必要とされているわけではありません。ただし、状況に応じて出席停止の措置を取ることができる病気に指定されているため、流行の状況によっては、出席停止になることもあります(※4)。

また、学校や自治体が独自に出席停止の基準を設けていることもあるので、感染がわかったら事前に問い合わせてみると良いでしょう。

なお登校の目安は、発熱や激しい咳が治まったときとされています。

マイコプラズマ感染症の予防法は?

手洗い

マイコプラズマ感染症にはワクチンがないので、感染は自分で予防するしかありません。

肺炎マイコプラズマは、保菌者の咳などの飛沫から感染します。帰宅時や食事の前に手を洗うこと、家族のなかに患者がいるときは同じ部屋で寝ないようにすることなどが効果的です(※1)。

なお、マイコプラズマ肺炎にかかると、数週間から数ヶ月の間、細菌を排出し続けることもあります(※1)。「熱が下がったから安心」とは思わず、マイコプラズマ肺炎による咳が続いている間は、周りもできるだけ対策しておきましょう。

マイコプラズマ感染症は流行に注意

マイコプラズマ感染症は、子供の間で流行しやすい病気です。特にマイコプラズマ肺炎になると咳がなかなか治まらず、かかった本人もつらい状態が続いてしまいます。

まずは、感染しないための予防をしっかり行いましょう。かかってしまったら、薬を飲んだり家で安静にしたりしてしっかりと治すことや、他の家族にうつさないことが大切です。

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