妊娠中絶を薬でする危険性は?妊娠初期に中絶ピルを使うのは違法?

監修医師 産婦人科医 間瀬 徳光
間瀬 徳光 2005年 山梨医科大学(現 山梨大学)医学部卒。板橋中央総合病院、沖縄県立中部病院などを経て、現在は医療法人工藤医院院長。産婦人科専門医、周産期専門医として、産科・婦人科のいずれも幅広く診療を行って... 監修記事一覧へ

日本では、やむを得ない事情で妊娠を継続できない場合に限って、母体保護法の規定に従って「人工妊娠中絶手術」が行われることがあります。海外では、手術だけではなく「妊娠中絶薬」を使う方法もありますが、日本での使用は認められていません。今回は妊娠中絶薬について、日本や海外での取り扱いや、報告されている副作用についてご説明します。

妊娠中絶薬とは?妊娠初期に中絶ピルを飲むの?

薬

欧米では、妊娠初期の中絶を目的に「ミフェプリストン(商品名:ミフェプレックス、またはRU486)」などの妊娠中絶薬(中絶ピル)が使われることがあります。

最終月経開始日から70日以内(妊娠10週未満)にこの薬を服用することで、女性ホルモンの一つ「黄体ホルモン(プロゲステロン)」の分泌が抑えられます(※1)。

プロゲステロンの分泌が抑えられると、厚くなった子宮内膜はその状態を維持できなくなり、剥がれ落ちます。

また、ミフェプリストンとあわせて「ミソプロストール」という子宮収縮を促す薬も服用することで、人工的に流産のような状況を作り出し、妊娠の継続を難しくします(※1)。

妊娠中絶薬の使用は日本で認められているの?

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そもそも日本においては、人工妊娠中絶を行えるのは母体保護法で指定された指定医のみです。妊娠した本人を含め、指定医以外の人が堕胎すると、刑法の「堕胎罪」に問われる恐れがあります。

つまり、日本では妊娠中絶を薬で行う場合でも指定医の指導を受けなくてはなりませんが、ミフェプリストンは日本では医薬品としての承認を受けていない無承認医薬品のため、指定医のもとでも使用することはできません(※2)。

なぜなら、妊娠中絶薬は倫理上の問題があるだけではなく、副作用も重いからです。

妊娠中絶薬の使用はアメリカやイギリスなどで認められていますが、それらの国でも、熟練した医師が慎重に判断し、しっかりとした管理の下で服用するように、と決められています。

米国食品医薬品局(FDA)では、医師の処方箋なくインターネットや個人輸入でミフェプリストンを入手することのないように、注意喚起がされています。また、薬の流通についても、特別な制限が設けられています(※3)。

妊娠中絶を薬でするリスクは?

薬

妊娠中絶薬は強い薬で、非常に重い副作用が起きる可能性があります。薬の使用が法律的に認められている海外でも、慎重に使われています。

主な副作用としては、腟からの出血や腹痛、吐き気、嘔吐などがあります(※1)。また、約5~8%の頻度で、手術が必要なほどの大量出血が起きると報告されています(※4)。

ミフェプリストンは、子宮外妊娠には効果がありません。しかし、子宮外妊娠であることに気づかずに使用してしまうと、卵管破裂の危険性もあります(※2)。

また、国内で承認された医薬品の副作用で健康被害が生じた場合、通常は、独立行政法人医薬品医療機器総合機構による健康被害救済制度を活用することができます。

しかし、妊娠中絶薬は日本では承認されていない医薬品のため、もし副作用で健康被害が生じても、この制度による救済を得ることもできないのです。

妊娠中絶薬を使ってはいけない人は?

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妊娠中絶薬は、認可されている国においても、誰でも服用できるわけではなく、米国食品医薬品局(FDA)は、以下の条件に当てはまる人は使用できないとしています(※1)。

● 最終月経開始日から70日を過ぎている
● 子宮外妊娠している
● 副腎に障害がある
● 長期間ステロイド剤を服用している
● ミフェプリストンやミソプロストールなどの薬にアレルギーがある
● 血液障害がある、または抗凝血剤を服用している
● 遺伝性のポルフィリン症がある
● IUD(避妊具)を使っている

妊娠中絶薬をインターネット通販で購入するのは違法

注意 禁止

妊娠中絶薬は日本での販売が認可されていないので、「海外からインターネットを通じて個人輸入をしよう」と考える人もいるかもしれませんが、個人輸入は認められていないので、絶対にやめましょう(※2)。

また先述のように、重い副作用や死亡リスクがある妊娠中絶薬を自己判断で使用することで、深刻な健康被害につながる恐れがあります。人に言えない事情があり、こっそり妊娠中絶薬を使いたい、という人も中にはいるかもしれませんが、安易な使用は危険だということを理解しておきましょう。

妊娠中絶薬を使用せず、医師に相談を

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妊娠を望んでいなかった人は、そのまま妊娠を継続していくか悩むこともあるでしょう。誰にも相談できずに、どうにかしなければと焦る気持ちもあるかもしれません。

しかし、どんなに切羽詰まった状況でも、妊娠中絶薬を個人輸入して服用するのはやめてください。

中絶を検討している場合には、まずは産婦人科を受診し、手術の時期や方法などについてよく相談してから決断しましょう。

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