アデノウイルスは、鼻水や咳、下痢、結膜充血、発疹などの症状を引き起こす病原体です。一年を通して感染しやすく、特に子供がさまざまな症状に悩まされることが多いという特徴があります。今回は、アデノウイルスに感染したら熱が出るのか、高熱になることもあるのか、解熱剤や座薬は使うことができるのかについてご紹介します。
アデノウイルスってなに?
呼吸するための空気の通路を気道といい、そのうち鼻腔から喉までの部分を上気道と呼びます。この上気道に炎症が起こり、鼻水や咳、のどの痛み、発熱などが起こる病気を総称して「かぜ症候群」といいます。
かぜ症候群は、約80~90%がウイルスの感染により起こります(※1)。アデノウイルスは、その原因となるウイルスの一つです。
アデノウイルスは、上記のような一般的な風邪の症状だけでなく、目のかゆみや充血、腹痛、嘔吐、下痢、発疹など、さまざまな症状を引き起こします。
また、アデノウイルスには51種類の血清型があり、種類が多いため、何度も感染を繰り返すという特徴があります(※2)。基本的には、感染する血清型によってあらわれる症状が異なる傾向がありますが、同じ型の感染でも、あらわれる症状が人によって異なることもあります。
たとえば、ママがアデノウイルスに感染して風邪のような症状があらわれていても、子供にそのアデノウイルスがうつった際にあらわれた症状は、風邪ではなく目のかゆみや充血だった、ということもありえます。
アデノウイルスで熱が出る病気は?
アデノウイルスの感染により発熱することがあるのは、以下の病気です。
呼吸器感染症
呼吸器感染症になると、多くの場合は一般的な風邪の症状だけで治まりますが、肺炎や気管支炎などを併発することもあります(※2)。
熱がなかなか下がらず長引いたり、高熱になったりした場合は注意が必要です。
咽頭結膜熱(プール熱)
「プール熱」という名は、以前はプールで感染が広がっていたためにつけられたものです。しかし現在はプール以外での感染の方が多くなっています。
咽頭結膜熱の特徴は、その名の通り「喉」や「結膜」に症状があらわれ、「熱」が出ることです。具体的には、喉が腫れて痛くなったり、目が充血して目やにが出たりします。
咽頭結膜熱で発熱すると、39~40度の高熱と37~38度の微熱の間を1日の間に上下し、それが4~5日続くという特徴があります(※2)。
咽頭結膜熱は1~5歳の発症が多く、0歳でも、生後6ヶ月以上で発症が増えます(※3)。6歳以上でも、発症する可能性はあります。
なお、咽頭結膜熱は学校保健安全法で第二種学校感染症に指定されており、出席停止の対象になっています。再び学校や保育園に登校・登園できるのは、主要な症状が治まったあと3日目からです(※3)。
胃腸炎
アデノウイルスによる胃腸炎は、乳幼児期に多く発症します。腹痛や嘔吐、下痢とともに、軽い発熱が見られることもあります(※2)。
アデノウイルスの高熱には解熱剤を使える?
アデノウイルス感染症には特効薬がなく、感染したら症状を和らげる対症療法で治療を行います。
発熱した場合は、安静にして水分を補給することで、時間とともに治癒することがほとんどですが、高熱になったときは、解熱剤の内服や座薬を使うこともできます(※1)。
ただし熱の原因がわからないまま熱を下げても、解熱剤の効果が終わればまた熱が上がってしまうことになりかねません。
解熱剤は一時的に熱を下げる効果しかなく、病気の原因を取り去ることはできません。発熱によって、食欲不振や睡眠不足などのつらい症状があるときに限って、使用するようにしましょう。
なお、抗菌作用のある抗生物質はウイルスには効果がないので、一般的にアデノウイルスには使用しません(※1)。ただし細菌感染も併発しているときや、細菌感染の予防をしたほうがいいと判断されたときは、抗生物質を使用することもあります。
アデノウイルスの熱は長引いたり高熱になったりしたら要注意
アデノウイルスは、感染によって発熱することが多い病原体です。発熱しても、熱がそれほど高くなかったり、高熱でも本人がつらくなさそうだったりするときは、さほど心配する必要はありません。
しかし、発熱が長引いたり、高熱でつらそうにしていたりするときは要注意です。咽頭結膜熱の場合はしばらく学校や保育園に通うことができなくなるので、家でのケアをどうすべきかも考えなくてはいけません。
症状がなかなか改善しないときは、再度病院を受診し、医師の指示を仰ぎましょう。つらそうなときは水分補給をこまめにして、ゆっくりと休ませてあげてくださいね。