ムンプス難聴とは?原因や症状は?治療で治る?

監修医師 小児科 武井 智昭
武井 智昭 日本小児科学会専門医。2002年、慶応義塾大学医学部卒。神奈川県内の病院・クリニックで小児科医としての経験を積み、現在は神奈川県大和市の高座渋谷つばさクリニックに院長として勤務。内科・小児科・アレルギ... 監修記事一覧へ

子供に発症しやすい「ムンプス難聴」という病気をご存知でしょうか?「難聴」と聞くと心配になるかもしれませんが、しっかりと知識を持って対処したいですね。今回はムンプス難聴について、原因や症状、予防法などをご紹介します。

ムンプス難聴とは?どんな症状がある?

症状

ムンプス難聴の主な症状は、耳が聞こえなくなり(難聴)、会話などの日常生活に支障が出ることです。多くの場合、難聴は片側の耳にだけ見られますが、まれに両耳に起こることもあります。

難聴が片耳であれば、生活にすぐに支障をきたすことはありませんが、音の方向が把握できない、騒がしい場所で音が聞き取れない、ちょっとしたお喋りについていけないなど、日常生活でストレスを感じることもあります。

難聴以外には、下記のような症状を伴うこともあります。

● めまい
● 耳鳴り

しかし、これらの症状が見られることは少なく、本人が難聴に気がつかないというケースが多くあります。

ムンプス難聴の原因は?

子供 耳

ムンプス難聴は、ムンプスウイルスによる流行性耳下腺炎(おたふく風邪)の合併症です。ムンプスウイルスが唾液などを通して感染することで引き起こされます。

流行性耳下腺炎は耳の下にある「耳下腺」が腫れ上がる病気のことです。腫れの他に、発熱や頭痛、倦怠感などが現れることもあります。

その際、無菌性髄膜炎や精巣炎・卵巣炎といった合併症を伴うことがあります。

ムンプス難聴も、従来、発生頻度は2万人に1人の確率と言われ、珍しい病気とされていました。しかし、2002~2006年に日本で行われた調査で、流行性耳下腺炎にかかった1,000人に1人がムンプス難聴にもかかっているということが判明しています(※1)。

そのため、流行性耳下腺炎が完治したあとに、ムンプス難聴が発覚することもあります。

流行性耳下腺炎にかかったあとに、電話の聞こえが悪く、電話を持ち変えるようになったり、耳のモヤモヤを訴えるようになったら、ムンプス難聴が疑われます。生活に支障がある場合には、病院を受診するようにしましょう。

ムンプス難聴は治る?治療方法は?

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残念ながら、ムンプスウイルスに対する特効薬が存在せず、ムンプス難聴には効果的な治療方法がありません(※2)。

そのため、ムンプス難聴の症状が片耳だけに現れた場合は、聞こえている方の耳の聴力を悪化させないよう、気をつけながら生活をすることが大切になります。たとえば、中耳炎や内リンパ水腫など、より耳の病気に注意が必要になってきます。

両耳が全く聞こえなくなるなどして、聴力検査での平均聴力レベルが90dB以上になると、人工内耳を埋め込む手術が行われることもあります(※3)。

ムンプス難聴の予防方法は?

ムンプス難聴を予防するには、流行性耳下腺炎にかからないことが大切です。

流行性耳下腺炎の予防には、予防接種が効果的です。流行性耳下腺炎のワクチンは、ムンプスウイルスの毒性を弱めて作られており、抗体ができる確率は90%前後です(※4)。

流行性耳下腺炎の予防接種は、1歳から接種することができます。確実に免疫をつけるためには2回以上のワクチン接種が必要とされており、日本小児科学会では、生後12~15ヶ月のうちに1回目、5~6歳の間に2回目の接種を推奨しています。

流行性耳下腺炎は接触感染や飛沫感染によって感染し、保育園や幼稚園で流行することもあるので、集団生活を始める前に、できるだけ早く接種することが大切です。

流行性耳下腺炎の予防接種は任意ですが、ムンプス難聴を防ぐ唯一の手段として、きちんと接種しておくことをおすすめします。

また、流行性耳下腺炎にかかってしまったら、治った後でも、毎日子供の耳の周囲を指でこすり、音が聞こえるかどうかをチェックしてあげましょう。子供の異変にすぐ気づくことができれば、ムンプス難聴の早期発見につながります。

ムンプス難聴になったら、心のケアも大切に

ムンプス難聴になってしまったとき、一番戸惑うのは子供自身です。耳が聞こえる方から話しかけたり、園や学校と協力して席を配慮してもらったりと、子供が生活を送りやすいような環境を整えてあげましょう。

耳が聴こえないことで不安に思うこともあるかもしれませんが、周りの大人達が協力して、子供の心もケアをしてあげられるといいですね。

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