卵巣出血とは?原因や症状、治療法は?妊娠への影響は?

監修医師 産婦人科医 間瀬 徳光
間瀬 徳光 2005年 山梨医科大学(現 山梨大学)医学部卒。板橋中央総合病院、沖縄県立中部病院などを経て、現在は医療法人工藤医院院長。産婦人科専門医、周産期専門医として、産科・婦人科のいずれも幅広く診療を行って... 監修記事一覧へ

女性が突然、激しい下腹部痛を感じたら、卵巣出血などのトラブルが起きている可能性があります。妊娠に大きな関わりを持つ卵巣からの出血と聞くと、これからの妊娠や出産に影響があるのでないかと心配になりますよね。そこで今回は、卵巣出血の原因や症状、治療法をご説明します。

卵巣出血とは?

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卵巣出血とは、子宮にある卵巣から排卵時の傷などが原因で出血してしまうことを指します。婦人科の急性腹症の中では代表的なもので、月経があるうちは誰にでも起こる可能性があり、日本産科婦人科学会によると、12歳〜52歳まで報告例があります(※1)。

重症化すると出血によるショック症状が見られることもあるため、急激な下腹部痛を感じたときには、できるだけ早く産婦人科を受診するようにしましょう。

卵巣出血の原因は?

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卵巣出血の原因は、特発性・外因性・内因性の3つに分けられます(※1)。

特発性

特発性卵巣出血には、排卵に伴う卵胞出血か、もしくは、卵胞出血が黄体の中に溜まって血腫ができ、嚢胞化した場合があります。卵巣出血のうち、この黄体嚢胞が破裂してお腹の中に出血したものが多いとされます。

また、妊娠初期にできる「妊娠黄体」が破けてお腹の中に出血することもあるので、妊婦さんも注意が必要です。

外因性

外因性卵巣出血の原因として、体外受精のための採卵や卵巣手術による傷や、お腹の外傷のほか、子宮内膜症や悪性腫瘍(がん)などが卵巣に影響して出血につながることがあります。

内因性

内因性卵巣出血は、全身性の血液凝固異常や、抗凝固剤の服用、排卵誘発剤などによる過剰刺激によるものなどが原因になります。

卵巣出血の特徴は?

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卵巣出血の特徴は、主に次のとおりです(※1)。

右側の卵巣で起こりやすい

卵巣出血は、左右の卵巣のうち右側で発生しやすいといわれています。

左側の卵巣周辺には直腸と「S状結腸」という臓器があり、卵巣への衝撃を吸収するクッション代わりになって血管の破裂を防ぐためではないか、と一説には考えられています。

お腹の右下あたりが痛む場合、虫垂炎(盲腸)などほかの病気と区別することが大切です。

黄体期に起こりやすい

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卵巣出血は、排卵後から生理前にあたる「黄体期」の間に起こることが多くあります。これは、先ほど触れた黄体嚢胞からの出血が主です。

また、その前の「排卵期」に起こるのは卵胞出血です。

性交後に起こりやすい

外因性卵巣出血のように、卵巣の傷が出血に関係しているときは、性行為によって傷が広がり、お腹の中で出血を起こしてしまうこともあります。

そのため、下腹部痛を訴えて診察を受けるときには、直近の性交の有無や時期を問診で聞かれることがあります。

特に、黄体期に性交渉を行ったあとの腹痛は、卵巣出血の可能性が高いとされます。

卵巣出血の症状は?

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卵巣出血の主な症状は、急激な下腹部痛ですが、その強さは出血の程度によります。ほかに、お腹が圧迫されるような感じや、吐き気、嘔吐、下痢などの消化器症状が見られることもあります(※1)。

黄体嚢胞が破裂すると、腹膜刺激症状が現れたり、まれに大量出血によるショック症状に陥る可能性もあります(※2)。

命に関わる恐れもあるため、急な下腹部痛が現れたら我慢しようとせず、病院を受診することをおすすめします。

卵巣出血の治療法は?

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卵巣出血の治療法は、痛みや出血量にもよりますが、基本的には入院して安静に過ごします。

出血量は500ml以下の場合がほとんどで、出血が少量で全身の血液循環の状態が安定していれば、手術せず経過観察で済みます(※1)。

しかし、出血量が500ml以上あるか、ヘモグロビン濃度(血色素量)が8g/dL未満、かつ卵巣出血が続いていて全身状態が悪化しているときは、緊急手術が必要になることがあります。

卵巣出血は妊娠に影響があるの?

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卵巣は卵子をつくる臓器なので、出血があると今後の妊娠や出産への影響が気になるかもしれません。

卵巣出血があっても排卵機能が正常であれば、今後の妊娠に影響しないことがほとんどです。

非常にまれですが、卵巣出血の原因が子宮内膜症や悪性腫瘍である場合、それらの病気が不妊につながる恐れがあります。

卵巣出血は予防できるの?

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排卵に伴って起こる卵巣出血を予防するには、ピルを服用して排卵を止め、卵巣を休ませるという方法が考えられます。ただし、これは妊娠を希望しているときは利用できない方法です。

卵巣出血には様々な原因があり、排卵誘発剤の使用や体外受精の採卵など、不妊治療の結果として起こっている場合もあります。

予防することは難しいですが、急な下腹部痛や気になる症状が見られたときは、すぐに産婦人科を受診しましょう。

卵巣出血の疑いがあれば早めの受診を

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卵巣出血が起こることは、さほど珍しいことではありませんが、原因によっては病気が潜んでいる可能性もあるため、甘く考えることはできません。

卵巣は体の奥の方にある臓器なので、異変に気づくことはなかなか難しいのですが、急な下腹部痛や吐き気などの症状がある場合は、早めに婦人科を受診しましょう。

なお、お腹の中で出血している場合、検査によって子宮外妊娠(異所性妊娠)と診断されることもあります。詳しくは、下の関連記事を参考にしてください。

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