卵巣の正常な大きさは?サイズによっては手術が必要?妊娠に影響は?

監修医師 産婦人科医 藤東 淳也
藤東 淳也 日本産科婦人科学会専門医、婦人科腫瘍専門医、細胞診専門医、がん治療認定医、日本がん治療認定医機構暫定教育医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医、日本内視鏡外科学会技術認定医で、現在は藤東クリニック院長... 監修記事一覧へ

卵巣は、女性の月経(生理)や妊娠、出産のために重要な役割を果たします。しかし、とてもデリケートな器官で、細菌やウイルスの影響で腫れたり腫瘍ができたりすることもあります。卵巣を健康な状態に保つためにも、正常な状態について知っておきたいですね。そこで今回は、卵巣の役割や正常な大きさ、手術が必要となる大きさの基準についてご説明します。

卵巣の正常な大きさは?

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卵巣は、子宮の両脇に靭帯でつながっている楕円形の器官で、親指くらいの大きさ(約2~3cm)をしています。

卵巣が正常に機能していれば、卵巣のなかで発育した卵胞のうち、毎月1個が排出されます。これが「排卵」です。また卵巣は、卵胞ホルモンと黄体ホルモンという2種類の女性ホルモンを分泌していて、これによって生理周期が作り出されます。

卵巣の大きさが変わることもあるの?

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排卵の時期になると、左右どちらかの卵巣が一時的に少し腫れます。これは生理的なものなので特に心配する必要はありませんが、チクチクとした「排卵痛」を感じることもあります。

注意が必要なのは、腫瘍など卵巣の病気によって大きさが変わってしまうケースです。卵巣は腫瘍ができやすい器官といわれており、かなりの大きさまで腫れてしまうこともあります。

ただし、卵巣はお腹の奥にある器官ということもあり、腫れていても最初のうちは自覚症状が出にくいのが難点です。

そのため、婦人科で超音波検査などを行った際に卵巣の腫れが偶然見つかるケースも少なくありません。

卵巣の大きさが変わる主な病気は?

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卵巣の病気はいくつかありますが、大きさが変わる主な原因は「腫瘍」です。一般的に、卵巣腫瘍が小さいうちは特に症状がないことが多く、日常生活に支障はありません。

しかし、腫瘍が大きくなると、上図のように腫瘍の付け根部分がねじれる「卵巣腫瘍茎捻転」が起きたり、腫瘍が破裂したりして、激しい下腹部痛や吐き気を起こすこともあります(※1)。

また、卵巣腫瘍の約90%は良性ですが、残りの約10%は悪性(卵巣がん)とされているため、超音波検査や血液検査などで良性か悪性かをしっかり見極める必要があります(※1)。

卵巣の大きさに異常があるサインとは?

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先述のとおり、腫瘍によって卵巣が腫れていても、初期症状は特にないことがほとんどです。

しかし腫瘍が大きくなってくると、膀胱や直腸が圧迫されることで頻尿・便秘などの症状が現れたり、リンパ管が圧迫されて足のむくみがひどくなったりします(※1)。

また、腹水が溜まるとお腹が張ったり、見た目にもわかるくらいお腹が前に突き出てきたりすることもあります(※1)。

特に食生活が変化していないのにも関わらず、洋服のウエストがきつくなってきた…という場合は、もしかすると卵巣が腫れているサインかもしれないので、婦人科で診てもらうと安心です。

手術が必要な卵巣の大きさは?

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卵巣腫瘍が悪性と診断された場合、大きさに関係なく手術で腫瘍を摘出するのが一般的です(※1)。術後は、抗がん剤による治療で、残っている腫瘍細胞を完全に消滅させることを目指します。

良性の腫瘍だった場合、まだ小さければ経過観察となることも多いですが、一度は良性と診断されても、のちに悪性に変わるケースもあるため、油断せず定期検診を受けることが大切です。

良性腫瘍のうち手術が必要になるのは、腫瘍がどんどん大きくなっている、目安として5~6cm(握りこぶし大くらい)以上の大きさがある、茎捻転を起こしている(起こす可能性が高い)といった場合です(※2)。

手術を行う際は、悪性と良性いずれの場合も、卵巣ごと摘出する「卵巣摘出術」や、卵管なども一緒に摘出する「付属器摘出術」を行うのが一般的です。

ただし、将来妊娠を希望する場合には腫瘍だけを摘出し、正常な部分の卵巣を残す手術を選択できることもあります(※1)。

卵巣の大きさによっては妊娠に影響する?

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基本的には、卵巣腫瘍があっても生理は順調なことが多く、妊娠にはあまり影響しません(※1)。

卵巣の大きさや状態によっては手術が必要となりますが、前述のとおり、妊娠を希望する場合は腫瘍だけを取り除き、正常な卵巣を残せることもあります。

なお、卵巣は2個ある器官なので、万が一手術で片方を丸ごと摘出することになったとしても、女性ホルモンの分泌や排卵にはほとんど支障がなく、妊娠の可能性は残すことができます(※1,2)。

もし悪性の卵巣腫瘍(卵巣がん)が進行してしまうと、切除する範囲が広くなり、場合によっては術後の自然妊娠が望めないこともありますが、卵子凍結などにより不妊治療で子供を授かれることもあります。

妊娠を希望する場合は、それぞれの治療法とそのメリット・デメリットについて医師からよく説明を受け、家族とも相談したうえで慎重に決めましょう。

卵巣の大きさは婦人科検診でチェックを

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卵巣は「沈黙の臓器」と呼ばれることもあるように、腫れや異常があっても気づきにくいものです。「なんだか最近お腹が出てきた」「何度もトイレに行きたくなる」といった不快感が現れたら、そのままにせず、病気が進行する前に婦人科を受診してくださいね。

また、特に自覚症状がなくても、ほかの検査を婦人科で受けたときに偶然、卵巣の大きさの異常が見つかることもあります。自分の体を守るためにも、定期的に婦人科の医師に診てもらいましょう。

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