「もし赤ちゃんに生まれつきの病気があったら…」と心配になる妊婦さんもいるのではないでしょうか。特に染色体の病気であるダウン症については、「出生前検査で可能性がわかる」「高齢になるほど確率が上がる」といった情報を耳にして、気になっている人も多いかもしれません。
そこで今回は、ダウン症に焦点をあて、妊婦健診のエコー検査でわかるのか、確定診断できる検査はあるのかなどをご説明します。
ダウン症とは?特徴は?
ダウン症とは、遺伝にかかわる情報をもつ染色体が何らかの原因で突然変異することで起こります。ダウン症の約95%は、21番目の染色体が1本多いために起こる「21トリソミー」です(※1)。
ダウン症の症状や程度には個人差が大きいですが、一般的に精神発達の遅れや知能障害、筋力が弱い、身長が低い、顔が丸くて平坦などの特徴がみられます。目や耳、心臓、腸など他の病気を合併している例も多くあります。
ダウン症の赤ちゃんが生まれる割合は、約600〜800人に1人とされています(※2)。高齢出産になるほど発症率が高くなり、母親の年齢が20歳で1,667人に1人、30歳で952人に1人であるのに対して、35歳では385人に1人、41歳では86人に1人です(※3)。
エコー検査でダウン症がわかる?首のむくみと関係あるの?
妊娠11〜13週にエコー検査を受けて、赤ちゃんの首の後ろにむくみがみられると、ダウン症などの染色体異常が疑われることがあります(※4)。
首の後ろのむくみのことを「NT」といいます。本来、NT値の計測は出生前検査のひとつなので、希望した場合にのみ行われます(※4)。
しかし、通常の妊婦健診のエコー検査で意図せずにむくみが発見されることもあります。また、病院によっては、妊婦健診で計測をして結果を妊婦さんに報告することもあるようです。
NT値を正確に測るのは難しいですが、一般的に3.5mm以上のむくみの幅が認められたときに、染色体異常の可能性があるとされます(※4)。
ただし、NT測定による病気の疑いは、あくまでも可能性を示すもので、確定診断ではありません。NT値が高くなるほど病気の確率は上がりますが、たとえNT値が5mmであったとしても、染色体の異常がなく生まれてくる赤ちゃんもたくさんいます(※4)。
胎児のダウン症を確定診断する方法はある?
ダウン症をはじめとした染色体の病気は、妊婦健診で行われる通常のエコー検査では確定判断はできません。
赤ちゃんの染色体の病気があるかどうかを調べるには、出生前検査を受ける必要があります。出生前検査にはいくつか種類があり、以下のような「非確定的検査」と「確定的検査」にわけられます(※5)。
非確定的検査
染色体異常の可能性を調べるための検査で、確定診断ではありません。結果によっては、確定的検査を受けるかどうか検討する必要があります。
NIPT(非侵襲性出生前遺伝学的検査)
・検査できる期間:妊娠9〜10週以降
・調べられる病気:ダウン症、18トリソミー、13トリソミー
・検査方法:採血のみ
超音波マーカーの検査・コンバインド検査
・検査できる期間:妊娠11〜13週
・調べられる病気:ダウン症、18トリソミー、13トリソミー
・検査方法:超音波検査、採血
母体血清マーカーテスト
・検査できる期間:妊娠15〜18週
・調べられる病気:ダウン症、18トリソミー、開放性神経管奇形
・検査方法:採血のみ
確定的検査
赤ちゃんの染色体異常が、ほぼ100%の確率でわかります。しかし、妊婦さんのお腹に針を刺すため、わずかながら流産のリスクがあります(※4)。
羊水検査
・検査できる期間:妊娠15〜16週以降
・調べられる病気:染色体の病気全般
・検査方法:羊水を採取
・流産のリスク:約0.3~0.5%
絨毛検査
・検査できる期間:妊娠11〜14週
・調べられる病気:染色体の病気全般
・検査方法:絨毛を採取
・流産のリスク:約1%
エコー検査でわかること・わからないことを知っておこう
近年は精度の高いエコー検査を実施している病院が増えているため、赤ちゃんの外見的な特徴などがわかりやすくなっています。ただし、エコー検査だけでは、ダウン症をはじめとした染色体異常や他の病気の診断はできません。
赤ちゃんが病気をもって生まれてくるかどうかは、今回ご紹介したような出生前検査によってわかることもあります。出生前検査を検討するときは、もし病気が見つかったらどうするのかを含めて医師やパートナーとよく相談し、遺伝カウンセリングを受けるようにしましょう。