年々増えている高齢出産ですが、妊娠・出産に伴うリスクも高まることが知られています。ダウン症もその一つ。今回は、高齢出産のリスクとしてよく挙げられる「ダウン症」に焦点を当て、胎児の段階での兆候や特徴、エコーや大きさで診断できるかどうか、確定診断の方法などをご説明します。
ダウン症とは?特徴は?

ダウン症とは、遺伝にかかわる情報をもつ染色体という組織の突然変異で起こります。その多くは、本来46本あるはずの染色体が47本と1本多くなっているのが特徴です。2本が対になっていて、23組あるうちの21組目の染色体の数が1本多くなっているので「21トリソミー」とも呼ばれます。
ダウン症の子供は、精神的・身体的な発達の遅れが見られ、見た目は丸顔で起伏のない顔立ち、つり目、耳が小さい、指が短いといった特徴が現れます。全出生数に対するダウン症の赤ちゃんが生まれる確率は約800人に1人ですが、妊婦の年齢が高くなるほど確率が高くなり、40歳以上では約106人に1人まで上がります(※1)。
胎児のダウン症はエコー検査でわかる?大きさは?

妊婦健診のエコー検査を受けているなかで、胎児の心臓の形や動き、手足の長さ、首の後ろにこぶのようなふくらみがあるかなどの特徴から、胎児にダウン症などの染色体異常の疑いがあるかどうかがわかる場合もあります(※2,3)。
最近は、エコーの精度が上がっているので、赤ちゃんの外見的な特徴がわかりやすくなっているという背景があります。ただし、出生後は顔に特徴があるダウン症ですが、胎児のときにエコー写真の顔だけで判断するのは難しいとされます。
胎児のダウン症はエコー検査で判定できるの?

エコーによって見られる特徴や体重は、以前と比べて精度が高くなっているとはいえ、あくまでも推測でしかありません。エコーで見たときの赤ちゃんの向きや姿勢次第では、判断できないこともあります。
胎児がダウン症かどうかをさらに詳しく調べるには、次に挙げる出生前診断を受ける必要があります。
血清マーカー検査(妊娠15~20週)
妊婦さんの血液中に含まれる胎児・胎盤由来の成分を調べる検査です。ダウン症などの染色体異常を検出できる可能性がありますが、確定診断できるわけではありません。
羊水検査(妊娠15~16週以降)
妊婦さんのお腹に注射器を刺して羊水を採取し、その中に含まれる胎児の細胞から染色体異常を調べます。精度はほぼ100%で、ダウン症の確定診断でも行われますが、流産につながる確率が0.3~0.5%ほどある検査です(※2)。
絨毛検査(妊娠11週以降)
妊婦さんのお腹に針を刺すか、子宮頸部にカテーテルを入れて、胎盤から伸びている「絨毛」に含まれる胎児の細胞から染色体異常がないかを調べます。
絨毛検査は、出生前診断の中でも早い時期に受けられるうえ、染色体異常がわかる精度は約100%です。ただし、検査に伴う流産率が1%ほどあります(※2)。
臍帯血検査(妊娠18週以降)
へその緒を流れる赤ちゃんの血液である「臍帯血」を採取し、染色体異常を調べる検査です。羊水検査、絨毛検査と同じく、精度はほぼ100%で、確定診断で行われますが、胎児死亡の確率が約1.4%あります(※2)。
リスクが大きいため、現在はほとんど行われていません。
新型出生前診断(妊娠10週前後〜)
新型出生前診断は、正式には「NIPT」と呼ばれるもので、血液検査によって染色体の異常を検査するものです。従来の出生前診断と比べて、リスクが低く、精度が高いといわれていますが、日本産科婦人科学会の指針によって受けられる妊婦さんが限られており、誰でも受けられるわけではありません。
胎児のダウン症について、夫婦でよく話し合おう

通常の妊婦健診のエコー検査で、赤ちゃんの首の後ろにこぶのようなものが見られるなど、出生前診断をする前に「ダウン症などの疑いがある」と医師から告げられることもあるかもしれません。
胎児がダウン症かどうかは、出生前診断の進歩により、かなりの確率で診断できるようになっています。しかし、流産のリスクも伴うため、羊水検査などを受けるかどうかについては、医師からもしっかりと情報をもらって相談し、夫婦でもよく話し合って決めてください。