ビタミンK2(ケイツー)シロップとは?新生児が飲む目的は?

監修医師 小児科 武井 智昭
武井 智昭 日本小児科学会専門医。2002年、慶応義塾大学医学部卒。神奈川県内の病院・クリニックで小児科医としての経験を積み、現在は神奈川県大和市の高座渋谷つばさクリニックに院長として勤務。内科・小児科・アレルギ... 監修記事一覧へ

赤ちゃんが生まれてすぐ「ビタミンK2(ケイツー)シロップ」というシロップを飲ませることをご存知ですか?「病気でもない赤ちゃんに薬を飲ませるのは抵抗がある」という人もいるかもしれませんが、このビタミンK2シロップは、脳出血などの重篤な病気を防ぐための大切なものです。目的を理解して、赤ちゃんに正しく飲ませてあげましょう。今回は、ビタミンK2シロップについて、服用の目的や飲ませ方などをご説明します。

ビタミンK2シロップとは?新生児が飲む目的は?

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ビタミンK2シロップは、通称「ケイツーシロップ」と呼ばれ、新生児~生後1ヶ月頃の赤ちゃんが、主に「ビタミンK欠乏症」の予防のために服用するシロップのことです。見た目は黄色で、オレンジのような香りがします。

主な成分は、ビタミンKを補う「メナテトレノン」で、1ml中に2mgメナテトレノンが入っています。メナテトレノン以外の添加物は、下記の通りです(※1)。

ケイツーシロップ添加物

安息香酸ナトリウム、クエン酸水和物、ゴマ油、水酸化ナトリウム、ソルビタン脂肪酸エステル、D-ソルビトール液、パラオキシ安息香酸エチル、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、香料

ケイツーシロップで予防する「ビタミンK欠乏症」とは?

はてな クエスチョン 疑問

それでは、ケイツーシロップで予防できる「ビタミンK欠乏症」とは、どのようなものなのでしょうか?

ビタミンK欠乏症は、赤ちゃんの体内のビタミンKが足りなくなることで起こる病気です。

ビタミンKは胎盤を通過しにくいため、生まれてくる赤ちゃんの体内には元々ビタミンKが少量しかありません。さらに生まれてすぐの赤ちゃんはビタミンKを合成する腸内の細菌も発達しておらず、母乳から摂取できるビタミンKの量も限られていることから、ビタミンKが欠乏しやすい状態であるといえます。

ビタミンK欠乏症は、症状が出る時期によって、早発型と遅発型に分けられます。

早発型

早発型のビタミンK欠乏症は、生後2~4日頃に起こることが多く、消化管から出血が見られます。うんちに血が混ざったり、吐血をしたりすることで発覚します。

「新生児メレナ」とも呼ばれ、なかには生後24時間以内に発症する赤ちゃんもいます(※2)。

遅発型

遅発型のビタミンK欠乏症は、生後1~2ヶ月頃に起こるもので、早発型と違い、頭蓋内で出血が起こる可能性があります。嘔吐や痙攣などの症状も見られます(※3)。

これらの症状を防ぐためには、予防的にビタミンKを摂取するしかなく、そのときに使われるのがケイツーシロップです。

ケイツーシロップは、ビタミンK欠乏症が発症したときの治療にも用いられます。

ケイツーシロップに副作用はある?

副作用

ケイツーシロップには、副作用がほとんどないことが特徴です。

ビタミンK2自体に副作用が少なく、日本よりも赤ちゃんに投与するビタミンK2の量が多いヨーロッパからも、ビタミンK2を服用することによる副作用の報告はありません。

ただし、ビタミンK2を投与した後に嚥下性肺炎が起きたとの報告が、今までに3件あります(※4)。

新生児にケイツーシロップを飲ませる方法は?

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先に説明したように、ケイツーシロップを服用する目的には、予防と治療の2つがあります。それぞれ、赤ちゃんには下記のような飲ませ方をします。

予防としての飲ませ方

予防としてケイツーシロップを飲ませる場合、一般的に下記のタイミングで3回飲ませます(※4)。

1. 出生後、数回母乳やミルクを与えたあと
2. 生後1週間または退院時のいずれか早い方
3. 1ヶ月健診時

3回とも、ケイツーシロップ1ml(2mg)を口から1回飲ませます。初めて飲ませるときは、滅菌水で10倍に薄めることもあります。

低体重や合併症を持って生まれた赤ちゃんには、状態や経過を見て投与の量や回数を決めていきます。

また場合によっては、生後3ヶ月頃まで、週に1回ずつ飲ませることもあります(※4)。そのときは自宅で投与することになるため、下記のような方法で飲ませてみましょう。

自宅での飲ませ方

  • ケイツーシロップを少しずつスプーンに取り、赤ちゃんの口に流し込む
  • 哺乳瓶の乳首だけを赤ちゃんにくわえさせ、ケイツーシロップを少しずつ流し込む
  • ミルクや湯冷ましなどにケイツーシロップを混ぜ、哺乳瓶で飲ませる

飲ませるときは、他の薬と混ぜたり、目や鼻に入ったりしないように注意しましょう。

治療としての飲ませ方

ビタミンK欠乏症の治療にケイツーシロップを使うときは、通常1日に1回、1mlずつ飲ませます。状況によっては、1回の量を3mlまで増量することもあります(※1)。

K2シロップの服用は医師の指導に従って

病院 赤ちゃん

ケイツーシロップは新生児に飲ませることが推奨されていますが、その頻度や量は、赤ちゃんの状態によって異なります。病院の方針もあるので、自己判断せず、医師の処方に従って飲ませるようにしましょう。

また赤ちゃんのビタミンK欠乏症を防ぐためには、母乳を与えるママの栄養状態も大切です。ビタミンKが多く含まれる、納豆や野菜などを意識して摂取できると良いですね。

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