待ちに待った赤ちゃんとの対面。育児が始まって、赤ちゃんのちょっとした変化を見ては、一喜一憂しているのではないでしょうか?そんなときに、生まれたばかりの赤ちゃんが血を吐いたり、血が混ざったうんちをしたりすると心配ですよね。もしかしたらその原因は「新生児メレナ」かもしれません。今回は赤ちゃんの吐血や血便を引き起こす新生児メレナについて、原因や診断方法、予防法などをご紹介します。
新生児メレナとは?
新生児メレナとは、新生児期に起こる消化管の出血のことをいいます。消化管で出血が起こることで、口から血を吐いたり、うんちに血が混ざったりします。
現在では一般的に、新生児メレナの予防となるビタミンKシロップの投与が、出生時、産科退院時(生後約1週間)、1ヶ月健診時の最低3回行われています。地域によっては生後3ヶ月まで週1回ずつ、ビタミンKシロップの投与されるようになっており、以前に比べて新生児メレナの発症数はかなり減っています(※1)。
新生児メレナはビタミンK不足が原因?
新生児メレナの主な原因は、ビタミンKの不足です。ビタミンKは胎盤を通りにくい性質を持っており、母乳にもあまり含まれていないため、生まれたばかりの赤ちゃんがビタミンK不足になることがあります。
ビタミンKには血液を固める作用があり、不足してしまうと出血しやすくなったり、出血が止まりにくくなったりします。ビタミンK不足による新生児メレナは、生後2~4日に起きることが多く、生まれてから24時間以内に発症することもあります(※2)。
ビタミンK不足以外の原因としては、ストレスなどによる食道炎や出血性の胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍などの消化管の異常による出血が挙げられます。
新生児メレナは吐血や血便が出るの?
新生児メレナの主な症状としては、消化管の血が逆流して口から吐いたり、うんちに血が混じって黒い血便が出たりします。また、肌に内出血が見られることもあります。
重症の場合は、ビタミンK不足により頭蓋内出血が合併してしまうこともあり注意が必要です(※2)。
新生児メレナには真性メレナと仮性メレナがある?診断方法は?
新生児メレナには、真性メレナと仮性メレナがあります。真性メレナは、消化管の出血により起こるものです。一方、仮性メレナは、分娩時の母体の出血や授乳時の乳頭周辺の出血を赤ちゃんが飲み込んでしまって起こります。
仮性メレナであれば、一時的なものなので治療の必要はありません。したがって、新生児メレナの診断では、まずは真性メレナか仮性メレナかを鑑別する必要があります。
鑑別方法としては、アプト試験があります。アプト試験は吐いた血やうんちに混ざった血の成分に苛性ソーダを混ぜて、色の変化を見る試験です。仮性セレナであればすぐに、新生児メレナであれば少しずつ暗赤色に色が変化していきます(※3)。
アプト試験の結果、真性メレナと診断された場合は、出血原因を調べるために内視鏡検査や造影検査などが行われます。
新生児メレナはどうやって治療するの?
仮性メレナであれば治療を行う必要はありませんが、真性メレナであれば、一般的にビタミンKが補充される治療が行われます。出血が多い場合には、輸血を行って対応します。
また、消化管の出血の原因によっては、出血を抑えるための薬物療法や外科的な手術が行われます。
新生児メレナは予防できる?
最近では多くの病院で、退院までの間に新生児へビタミンK2シロップ(ケーツーシロップ)を飲ませて、ビタミンKを補充します。また、生後1ヶ月の健診の際にも、ビタミンKを補充する処置が施されるので、病院で出産して健診も受けているのであれば発症することはほとんどありません。
ミルクにはビタミンKがバランスよく配合されていますが、母乳の場合はママの食事が大切です。母乳育児を中心にしている場合は、納豆や緑黄色野菜などビタミンKを多く含む食材を積極的に摂取することが日本小児科学会からも勧められています(※1)。
新生児メレナになっても落ち着いて対処を
赤ちゃんが血を吐いたり、血が混ざったうんちをしたりしたら、多くのママが驚きパニック状態に陥ってしまうことでしょう。
しかし、赤ちゃんの吐血や下血の原因としては、ママからの血液を飲み込んだことによる仮性メレナの可能性もあります。まずは落ち着いて病院に連れて行き、診断してもらうことが大切です。
近年では、病院で行われる予防のおかげで、新生児メレナを発症する赤ちゃんはほとんどいなくなりました。ただし新生児メレナを起こす可能性がなくなったというわけではないので、普段から赤ちゃんの様子をよく見てあげてください。
日頃からおむつ替えのタイミングでうんちをチェックしておくことが、早期発見につながりますよ。