男性が射精をするとき、「快感を得られる」というイメージがあると思います。しかし何らかの原因により、射精のたびに肛門や性器の周りに「射精痛」と呼ばれる痛みを感じる人もいます。こうした問題は、なぜ起きるのでしょうか?今回は射精痛の原因として考えられる病気や要因、そして治療法に加え、将来妊娠を望んでいる場合に射精痛が影響を及ぼすのかどうかについてご説明します。
射精痛とは?
射精痛とは、通称「オーガズム痛」とも呼ばれ、一般的には男性が射精するときに肛門や性器の周りに起こる痛みやヒリつきのことを指します。人によっては、精液が通過するときに尿道に痛みを覚えるケースもあります。
こうした痛みは苦痛なのはもちろんのこと、射精することに対して男性が恐怖感を抱き、性交がおっくうになってしまったり、それが原因となってパートナーとの関係が悪化してしまったりすることもあります。
射精痛は痛みだけではなく、精神的に追い詰められてしまうこともある深刻な問題です。
射精痛は病気なの?原因やほかの症状は?
射精時に痛みを感じる原因としては、主に以下のようなものがあります。
精巣上体炎
副睾丸ともいわれる、精巣上体という精巣の横にある器官が細菌やウイルスに感染して炎症を起こします(※1)。精巣を覆っている陰嚢全体が腫れたり、勃起時に痛みを感じることもあります。
前立腺炎
前立腺に炎症が起こる症状のことで、急性前立腺炎と慢性前立腺炎があります(※2)。射精時だけでなく排尿の際にも痛みがともなったり、陰嚢や下腹部にも違和感を覚えることがあります。
急性前立腺炎は、大腸菌などの尿路病原体やクラミジアによる尿路感染症が原因とされますが、菌がどのように侵入し、感染するのかはよくわかっていません。
慢性前立腺炎は、細菌による感染が慢性化した場合や、細菌ではない病原体が関わっている可能性もあります。またはっきりした原因がわからない場合もあります。
陰茎の神経損傷
何らかの原因により、陰茎に傷がついていたり神経が損傷していたりすると、性器周辺に痛みを感じることがあります。
神経損傷が原因で射精痛が生じている場合は、神経が治癒するに従って痛みは改善してきます。損傷の程度によっては、治療に長い時間がかかることもあります。
心理的な要因
もし、炎症や傷が特に見られないとすると、心理的な原因で射精痛が生じている可能性もあります。たとえば、不妊で悩んでいる男性がプレッシャーを感じると、その精神的苦痛が射精時の痛みとなって表れてしまい、性交に対して消極的になる…というケースもあります。
心理的要因があると思われる場合は、そのストレスを軽減する配慮が必要です。場合によってはカウンセリングが有効となることもあります。
射精痛の治療方法は?
上でご紹介した要因のうち、病気によって射精痛が引き起こされている場合には、抗菌薬の投与による治療が主となります。
精巣上体炎や前立腺炎は、クラミジアや淋菌など、いわゆる性病の細菌が原因で起こっていることがあるので、それらに対応した薬を服用します。
また急性前立腺炎は、寒気や震えをともなう発熱が起こることもあります。重症の際は、入院処置がとられることもあります。
慢性前立腺炎で原因がはっきりとしない場合は、水をたくさん飲んだり、体を動かして骨盤内のうっ血を防いだりといった対策をとることもあります(※2)。
射精痛は、妊娠に影響するの?
特に妊娠を望んでいるカップルの場合、「男性に射精痛があると、不妊につながるのではないか」という不安がよぎることもあると思います。
しかし、必ずしも「射精時の痛み=不妊」というわけではありません。ただしクラミジアなどの性感染症による病には、不妊につながるリスクがあります。
男性がクラミジアに感染して精巣上体炎にまで進行すると、精巣上体だけでなく精巣そのものにも炎症が広がり、精子を作る能力が低下することがあります(※3)。
また、精巣上体炎によって生じた「しこり」で精管が閉塞した場合は、無精子症の原因となってしまいます(※4)。その他にも、前立腺炎により精液の成分が変化してしまい、不妊症につながることもあります。
なおクラミジアに感染すると、女性も不妊や子宮外妊娠のリスクが生じます(※3)。射精痛は、男性のみならずパートナーの女性にとっても不妊の可能性を示すひとつのサインであるといえます。
射精痛は我慢せず、すぐに病院で受診を
今回ご紹介したとおり、射精痛は男性本人の肉体的な痛みや、パートナーとの性行為に対する精神的苦痛を生むだけでなく、背景にある病気に気づかずに放置してしまうと、不妊にもつながる深刻な問題につながることもあります。
生殖器の異常はとてもデリケートな問題なので、なかなか病院に足が向かないかもしれません。しかし特に赤ちゃんが欲しいと望んでいる男性は、愛するパートナーのためにも早期に診察を受けたほうがいいでしょう。適切な治療があれば、リスクを最小限に抑えることができますよ。