陰部にかゆみや痛み、炎症などの症状があると、性病(性感染症)の可能性があります。そのなかでも患者数が多いのが「性器クラミジア感染症」です。クラミジアを正しく治療するために、クラミジアに効く薬の種類や、市販薬があるのかどうかについてご説明します。
クラミジアとは?治療しないと不妊になる?
性器クラミジア感染症を引き起こすのは、「クラミジア・トラコマティス」という微生物です。性行為によって女性の膣や子宮、男性の尿道、男女の咽頭などへ感染します。
性器クラミジア感染症を発症すると、女性の場合はおりものの増加や下腹部の痛み、不正出血、男性には尿道のかゆみや不快感、排尿痛などが現れます。ただし、感染しても目立った自覚症状が現れないことがほとんどで、感染に気がつかないまま放置されるケースも少なくありません。
女性の場合、クラミジアの感染により子宮内膜炎や卵管炎などを引き起こす可能性があります。炎症が進むと、不妊や子宮外妊娠の原因になる恐れがあるので、きちんと治療することが肝心です。
クラミジアの治療法は?抗菌薬を服用するの?
性器クラミジア感染症が悪化するのは、膣内に進入したクラミジアが子宮頚管粘膜で増殖し、子宮内膜や卵管へと広がっていくことが原因です。そのため、抗菌薬でクラミジアの増殖を抑えることが治療の基本になります。
すべての抗菌薬がクラミジアに対して効力を発揮するわけではないので、少ない投与回数で効果が得られる薬を正しく使うことが必要です。
クラミジアの治療薬の種類は?
クラミジアに効果があるとされる薬は主に3つあります。どれが効果を発揮するかは人によって異なるため、効果を見ながら順番に投与されるのが一般的です。
薬によっては、1日に複数回、数週間飲み続ける必要があるため、飲み忘れに注意しましょう。
マクロライド系(ジスロマック、クラリス、クラリシッドなど)
マクロライド系の抗菌薬は、抗菌力が強く、クラミジアに最も効くといわれます。性器クラミジア感染症と診断された場合、最初の治療薬として選択されます。
また、妊娠中に性器クラミジア感染症にかかった場合は、胎児に影響が及ぶリスクが少ないマクロライド系の抗菌薬が処方されます(※1)。
マクロライド系の抗菌薬は、1回あたりの投与量が多いほど有効性が高く、耐性菌を誘導しづらいことから、一度にジスロマック2.0gを服用する治療法などが実施されています(※2,3)。
テトラサイクリン系(ビブラマイシン、ミノマイシンなど)
細菌のタンパク質合成を阻害し、増殖を抑える効果のある薬です。テトラサイクリン系の抗菌薬は、クラミジア以外にも気管支炎や膀胱炎、梅毒などの感染症治療に広く使われます。
ニューキノロン系(クラビット、トスキサシン、オゼックスなど)
ニューキロノン系も、クラミジアや淋病の治療によく使われてきた抗生物質です。ただし、淋菌には耐性ができたため、ニューキノロン系の薬は効果がありません。
クラミジアに効く市販薬の抗菌薬はある?
クラミジアへの感染の可能性があっても、「病院に行きたくない…」「忙しくて受診できない…」という人は、ドラッグストアなどで抗菌薬を購入したいと思うかもしれません。
しかし、抗菌薬は医師の処方なしでは購入できない薬で、市販されていません。まずは婦人科か泌尿器科で診察を受け、性器クラミジア感染症と診断されたら、治療薬を処方してもらう必要があります。
最近ではインターネット通販で海外から個人輸入するという方法で抗菌薬を購入する人もいます。しかし、海外製の薬は品質の保証がなく、副作用などが起きてもすべて自己責任になるリスクが伴います。また、飲み合わせなど薬を服用するときの注意事項もあるので、必ず病院で薬の処方を受けるようにしてください。
クラミジアに効く薬は病院で処方してもらおう
性器クラミジア感染症は、きちんと治療をしないと子宮内膜などで炎症を起こし、不妊症になる恐れがあります。また、性交渉を通じてパートナーへ感染させてしまう恐れもあります。おりものの増加など気になる変化があれば、念のため婦人科を受診しましょう。
治療薬を処方されたあと、目立った症状がなくなったからといって、抗菌薬の服用を途中で止めてしまうと、体内に残っていた病原体が増殖して猛威を振るうこともありえます。一度クラミジアに感染したら、医師の指示を守って、正しく治療を続けてください。