ときどき、子供が睾丸の痛みを訴えることがあります。もしかすると、「精巣捻転」という病気が隠れているかもしれません。症状が現れたら早急に診察や治療が必要なものなので、原因や症状、治療法、見分け方などを知っておきましょう。
精巣捻転とは?
精巣捻転は、思春期前後に多くみられる、男の子の病気です。新生児や、まれに成人男性にもみられることがあります。
精巣捻転は、精巣(睾丸)につながる「精索」という精子を運ぶ管や、血管が突然ねじれることで起こります。
後述する症状が現れたらすぐに手術を行い、ねじれを解除しないと、精巣が壊死してしまう危険性があります。6時間以内に手術を行うと、最大で90%が精巣を温存できるというデータがあるため、6時間以内の手術が望ましいとされています(※1)。
精巣捻転が疑われる場合は、休日・夜間でも、迷わず泌尿器科などの病院を受診することが大切です。
精巣捻転の原因は?
精巣捻転の原因については、はっきりと解明されていません。
しかし、第二次性徴の時期に起こることが多いことから、精巣の重量が急激に増し、精索が精巣を支えきれなくなって回転してしまうのではないかといわれています。
精巣捻転の症状は?痛みがあるの?
精巣捻転の症状は、前触れなく突然出てきます。一般的な症状には、下記のようなものがあげられます。
● 精巣(睾丸)の痛み
● 精巣(睾丸)の腫れ
● 吐き気やめまい
● 嘔吐
● 冷や汗
● 陰嚢に触ると痛みが強まる
特に精巣の激しい痛みが特徴ですが、子供が小さいときは、どこが痛むのかわからず「お腹が痛い」と言ってしまったり、思春期では恥ずかしさから痛みの部分をはっきり言えないこともあります。そのため、子供が下腹部周辺に激しい痛みを感じているときには注意が必要です。
精巣捻転の治療法は?手術は必要?
精巣捻転の治療は、手術によってねじれを元に戻すのが一般的です。
手術では、精巣のねじれを正し、今後ねじれが起きないように固定します。また、片方の精巣がねじれたということは、もう片方の精巣も精巣捻転になりやすいといえるため、精巣捻転の手術の際に、ねじれなかった方の精巣も固定することがあります。
発症から時間が経過してしまい、精巣が壊死してしまっている場合は、壊死した精巣を摘出する手術を行います。
また、発症してから4~6時間以内の場合は、手で精巣のねじれを元に戻す「徒手的整復術」が取られることもあります(※1)。徒手的整復術の場合、手術をすることなく、すぐに痛みを取り除くことが可能ですが、再度ねじれてしまう可能性が高いため、多くは手術をすすめられます。
治療開始が早ければ早いほど精巣が無事に残る可能性が高まり、痛みを感じる時間も短くなるため、早期発見と早期治療が大切な病気であるといえます。
精巣捻転は不妊の原因になるの?
精巣捻転が起こると精巣に血液が流れなくなるため、精子を作るための細胞が酸素不足になり、壊死して数が減っていってしまいます。
手術によって完全な壊死がまぬがれ、精巣が温存できれば、細胞の減少を最小限にとどめることができます。しかし精巣へのダメージが大きいときは、精子をつくる能力が減少し、将来的に不妊の原因になることもあります。
発症から手術までの時間が長くなればなるほど、妊娠させる力が弱くなってしまうため、できるだけ早めの治療が大切になります。
精巣捻転の見分け方は?
精巣捻転は、想像できないほどの激痛なので、小さな子供が精巣捻転を起こした場合には、いつもとは違う尋常ではない様子になると考えてください。
事前に知っておきたい見分け方のポイントとしては、陰嚢が腫れてくる、触れると痛がるなどです。特に、陰嚢を持ち上げたときに痛みが強まるようです。
子供が痛みを訴えたら、基本的には家庭で判断しようとせず、休日や夜間であっても急いで病院を受診することをおすすめします。痛みが強くて自力で歩けないようであれば、救急車を呼んでもいいかもしれません。
精巣捻転はスピードが大切!異変に気付いたらすぐに病院へ
精巣に痛みを感じる病気は、精巣捻転以外にも、「精巣上体炎」「精巣垂捻転」などがあり、専門医でも判別が難しいといわれています。
診断は、超音波検査で精巣絵の血液の流れが低下しているかを確認して行われますが、診断が確実でない場合は、緊急手術がすすめられることもあります。
精巣捻転は男の子なら誰でも発症する可能性がありますし、精巣に関する病気はどれも発見から治療までのスピードが大切です。
将来の不妊の原因にもなる可能性があるので、子供が陰嚢部の痛みを訴えたときは、迷うことなく病院を受診するようにしてください。