経産婦に起こりやすい「子宮下垂」。子宮は女性にとって大切な臓器なので、子宮の病気といわれると不安に感じてしまいますよね。そこで今回は、子宮下垂について、原因や症状、治療方法などをご説明します。
子宮下垂とは?
子宮は本来、腟の奥側の骨盤内にありますが、様々な原因で子宮が腟のなかに落ち込んでしまうことがあります。これが「子宮下垂」です。
子宮下垂は命に関わる病気ではありませんが、放っておくと子宮が腟の外まで出てしまう「子宮脱」になる危険性があります。
子宮下垂の原因は?
子宮下垂の主な原因は、子宮を支える支持靭帯が弱くなったり、緩んだりすることで、骨盤を支える力が低下することにあります。
この靭帯は妊娠・出産を繰り返しているうちに弱くなるほか、閉経後、エストロゲンが低下することで弛緩することもあります。そのため子宮下垂は、高齢の人や、出産経験がある人に多く見られます(※1,2)。
子宮下垂の症状は?
程度の軽い子宮下垂の場合、自覚症状はほとんどありません。子宮脱になるまで見た目にも分からず、自分が子宮下垂になっていることに気がつかない人も多くいます。
しかし半分くらいの人は、下垂が進むにつれて、腟の異物感や下腹の圧迫感、太ももまで広がる痛みなど、主に下腹部を中心に違和感を覚えるようになります。
また、下垂が進むに連れて、膀胱や、子宮と直腸の間に位置する腹膜腔も一緒に引き出され、膀胱瘤や小腸瘤を伴うことがあります。
子宮下垂がさらに進み、子宮脱になると、外に出た子宮が外陰部や太もも、下着に触れるため、不快感や炎症、ただれといった症状があらわれます。また、排尿や排便が困難になったり、歩けなくなったりと、日常生活に支障が出ることもあります。
子宮下垂の治療方法は?手術が必要?
子宮下垂は、下垂の程度や本人の年齢、妊娠希望の有無などによって治療方法が変わります。
一般的にはまず、子宮の下垂を食い止める治療を行い、それでも治らない場合には手術を行います。
具体的には、下記のような治療が施されます(※1)。
骨盤底筋体操(ケーゲル体操)
妊娠中や産後に行うことも推奨されている骨盤底筋体操は、初期の子宮下垂の改善に効果的です。方法は後から詳しく説明しますが、どこでも気軽に行えるので、日常生活に取り入れたいですね。
ペッサリー挿入法
子宮が、処女膜の1cm上よりも下垂している場合、「ペッサリー」と呼ばれるリングを腟内に入れて子宮の下垂を食い止める、「ペッサリー挿入法」を行います(※1)。
以前は、医師によって挿入し、定期的に点検を受けながらペッサリーを使う方法が一般的でしたが、最近では、患者が自分で挿入と除去を行う、自己着脱方式も用いられるようになりました。
手術療法
骨盤底筋体操やペッサリー挿入法で完治できないほど下垂が進み、子宮脱になった場合は、手術が行われます。
将来妊娠を希望しない場合、子宮を摘出することもありますが、妊娠を希望する場合は、妊娠の可能性を残せる方法で手術を行います。
子宮下垂におすすめの体操とは?予防もできる?
先に述べたように、初期の子宮下垂の改善には、骨盤底筋体操が効果的です。普段から行っていると、子宮下垂の予防にもなりますよ。下記のような手順で行いましょう(※3)。
1. 仰向けの姿勢で膝を立て、足を30cmくらい開く
2. 頭の下にクッションを置き、腕を体の両側に垂らす
3. 肛門と腟の筋肉を引き締める
4. 力を入れて、締めた状態を8~10秒キープする
5. ゆっくりと力を抜き、リラックスする
6. その後、力を抜いてまた締めなおす。1~5を10~20回程度繰り返す
今回は仰向けになって行う方法をご紹介しましたが、骨盤底筋体操は、立った姿勢でも、座ったままでも行えます。
骨盤底筋体操は毎日続けることで効果が期待できるので、普段の生活のなかで、思い出したときに肛門と腟周りにぎゅっと力を入れてみると良いですね。
子宮下垂になったら性行為はどうする?
子宮下垂や子宮脱になると、性交痛を感じることがあります(※4)。性行為を行うときは、体調をみて、無理のないようにしてくださいね。
性行為が心配なときは、事前に医師に相談してみましょう。下垂の状況などに応じて、適切なアドバイスをもらえますよ。
子宮下垂は正しい治療を
子宮が腟の外に出てしまうと聞くと心配になる人も多いと思いますが、子宮下垂自体は危険な病気ではありません。放っておかずに正しく対処をすれば妊娠もできるので、諦めずに治療に取り組んでみてくださいね。