【産後の尿漏れ・子宮下垂に】話題の膣トレーニングがおすすめ!やり方は?

監修医師 産婦人科医 城 伶史
城 伶史 日本産婦人科専門医。2008年東北大学医学部卒。初期臨床研修を終了後は、東北地方の中核病院で産婦人科専門研修を積み、専門医の取得後は大学病院で婦人科腫瘍部門での臨床試験に参加した経験もあります。現在は... 監修記事一覧へ

妊娠・出産によって骨盤底筋がゆるむことが原因で、産後の尿漏れや子宮脱に悩んでいる女性も少なくありません。その対策として、最近注目されているのが「膣トレーニング」。一体、どのようなトレーニングなのでしょうか?今回は、膣トレーニングのやり方や、産後の尿漏れや子宮脱に効くといわれている理由についてご説明します。

膣トレーニングとは?

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膣トレーニングとは、子宮や膀胱、内臓をハンモックのような形で下から支えている「骨盤底筋」を鍛えるトレーニングのことです。

骨盤底筋は、骨盤の一番下にある筋肉です。普段意識していないかもしれませんが、尿道や膣まわりをきゅっと締めたときに、股下でグッと持ち上がるように動くのが骨盤底筋です。意識したいときは、トイレを我慢しているときを想像すると良いかもしれませんね。

骨盤底筋は「鍛える」という意識があまりない部分なので、いつのまにかゆるんでいることも珍しくありません。特に、デスクワークなど座っている時間が長い場合は、下半身に力を入れることが少なく、骨盤底筋が弱くなりやすいといわれています。

また、女性は妊娠・出産によって骨盤底筋がゆるみやすくなります。骨盤底筋は、妊娠中にホルモンの影響でゆるんだ骨盤や靭帯を支えるために負荷がかかるほか、出産のときに引き伸ばされるためです。

骨盤底筋のゆるみをそのまま放置してしまうと骨盤がゆがみ、下半身に脂肪がつきやすくなるほか、産後に尿漏れや子宮下垂などにつながることも。

このようなトラブルの予防や改善に効果があるとされているのが、膣トレーニングなのです。

膣トレーニングは産後の尿漏れに効く?

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前述のとおり、妊娠・出産を経て骨盤底筋がゆるんでしまう女性は多いものです。その結果、下記のようなトラブルが起きることがあります。

尿漏れ

産後の尿漏れに悩まされているママは3分の1以上という報告もあるくらい、よく見られるトラブルです(※1)。

骨盤底筋がゆるむと、支えきれなくなった膀胱や尿道が下がるため、物を持ち上げる・くしゃみをする・赤ちゃんを抱っこするなど、お腹に力が入ったときに尿漏れが起こりやすくなります。

膣トレーニングを習慣にすることによって、尿道の締まりが良くなり、尿漏れが改善されることもよくあります。

子宮下垂・子宮脱

子宮脱 子宮下垂

骨盤底筋がゆるむことで、子宮が正常な位置よりも下がる状態を「子宮下垂」、それが進行して膣から出てしまうことを「子宮脱」といいます。

子宮下垂の段階であれば、膣トレーニングによって症状が改善されることもあります。

子宮脱になると、子宮を膣のなかに押し戻す必要があるため、膣トレーニングだけでなくペッサリーの挿入や手術が必要になることもあります(※2)。

膣トレーニングのやり方は?

膣トレーニング 橋のポーズ 女性 日本人

教室などに通わなくても、膣トレーニングは自宅で簡単に行うことができます。産後ヨガやピラティスにも骨盤底筋を鍛えるポーズがあるので、スポーツスタジオに通ったり、DVDを見て取り入れてみたりするのも良いかもしれません。

ポイントは、膣を締める感覚を覚えること。膣を締める感覚がわかりにくい場合は、肛門に力を入れてみましょう。肛門を締めると膣も同時に自然と締まるので、肛門に意識を持っていくとスムーズですよ。

ここでは、自宅で気軽にできる方法をいくつかご紹介します。

初心者向けの膣トレーニングのやり方

骨盤底筋体操 立ったまま引き締める eversense

1. 姿勢を正して立ち、息を吸いながら5秒間かけて膣をぐっと締めていく
2. 締めたままの状態で5秒間静止する
3. 5秒間かけて息を吐きながら膣をゆるめていく

● ポイント
立ちながら行う方法は、外出時に電車などでもできます。椅子に座ったままや、床に寝転がったままでもできるので、リラックスタイムに気軽に行ってみましょう。血行が良くなっている入浴中に行うのもおすすめです。

上記とほぼ同様の方法で、肛門をキュッと締めたらすぐに力を抜き、またキュッと締めるのをリズミカルに10回続け、10回目は少し長めに5~10秒締めたままにする方法も効果的。1日2~3セット行ってみましょう。

ヨガのポーズで行う膣トレーニングのやり方

橋のポーズ

安産体操 骨盤底筋を鍛える eversense

1. ヨガマットの上で仰向けに寝そべる
2. 両膝を立てて、肩幅に開き、手のひらを床につける
3. 床を押すようにして、お腹を突き出すように腰を持ち上げる
4. そのままお尻をキュッと締めて、ゆっくり呼吸をしながら5~10秒キープする
5. 背中、腰、お尻の順番にゆっくりと床に降ろす

● ポイント
お尻と太ももの筋肉を使う「橋のポーズ」は、骨盤底筋を鍛えると同時に血行を促進したり、内臓を引き上げたりという効果も。ヒップアップにもつながりますよ。

花輪のポーズ

骨盤底筋体操 しゃがみこみのポーズ eversense

1. 姿勢を正して立ち、両足を肩幅に開く(つまさきは外側に少し開く)
2. 胸の前で合掌し、背中をまっすぐに伸ばしたまま、ゆっくりとしゃがむ
3. 足はM字になるように、開いた両膝の間に合掌した状態の両肘を入れるようにする
4. 両肘でさらにグッと両膝を開く
5. そのまま息を吸いながら膣を胃の方に引き上げるイメージで締める
6. 5~10秒キープして力を抜く

● ポイント
骨盤底筋を鍛えるほか、骨盤の歪みを整える効果も期待できます。お腹周りの内蔵の働きを活発にしたり、足首やふくらはぎを引き締めたり、股関節周りを柔軟にしたりする効果もありますよ。

妊娠中・産後の膣トレーニングはいつから?

妊婦 ママ 日本人

妊娠中の膣トレーニングは、必ず体調の良いときに行いましょう。できれば安定期に入ってから、妊娠の経過が順調であることを条件に、医師の許可を得たうえで始めてみてくださいね。

特に「花輪のポーズ」は安産のポーズともいわれていて、骨盤底筋を引き締めながら柔軟にすることでお産を進みやすくするといわれています。ただし、お腹が張るなど体調に異変を感じたときは膣トレーニングを中断し、ゆっくり休みましょう。

産後しばらくは、大きくなった子宮が元の状態に戻るまで、無理しないことが大切です。1ヶ月健診で体が順調に回復していることを医師に確認してから、膣トレーニングに取り組んでみてくださいね。

膣トレーニングは産後以外でもおすすめ

ママ友 女性 日本人

妊娠・出産に限らず、座りっぱなしの姿勢が続いたりすることで、骨盤底筋がゆるんでしまいます。膣トレーニングをすることで、産後の子宮脱や尿漏れはもちろん、骨盤のゆがみを正して下半身太りや冷えを解消したり、生理痛を緩和したりする効果も期待できるので、すきま時間を上手に活用して実践してみてくださいね。

※「膣」は、医学上正しくは「腟」と表記しますが、本記事では読者のみなさまに親しみのある「膣」という字で表現しております。

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