不妊検査を受けた結果、「原因不明の不妊」と診断されることがあります。原因が分からないと言われると不安になりますが、不妊の原因が見つからないのは珍しいことではありません。今回は、原因不明の不妊について、その割合や治療方法などをご紹介します。
不妊とは?
「不妊」とは、妊娠を望む健康な男女が、1年間避妊をしないで性交をしているにもかかわらず、妊娠しない状態のことをいいます(※1)。
不妊に悩むカップルや夫婦の数は年々増加し、厚生労働省によると、不妊の治療を受けているカップルは、平成14年度時点で46万人を超えています(※2)。
不妊の原因は?不明なものなの?
不妊が疑われる場合、不妊外来のある病院の産婦人科や不妊治療専門のクリニックで、不妊の原因を調べる「不妊検査」を行うことができます。
その際、下記のような不妊の原因が見つかることがあります。
女性の不妊の原因
● 排卵が起こりにくい排卵障害
● 卵子の通り道である卵管の問題
● 子宮筋腫・子宮内膜症など、子宮や卵巣の病気
● 子宮と膣をつなぐ、子宮頸管の異常
● 受精卵が子宮内膜に着床できない、着床障害
男性の不妊の原因
● 勃起障害など、射精の問題
● 精子の濃度や運動率の問題
原因不明の不妊ってなに?割合はどれくらい?
不妊検査を行っても、排卵障害や子宮の病気など、不妊の原因となる異常が特に見当たらないことがあります。その状態を「原因不明の不妊」と呼びます。
原因不明の不妊症は、不妊症全体の1/3を占めるほどよくあるものです(※3)。
原因不明の不妊で疑われる病気は?
原因不明の不妊といっても、本当に原因がないわけでなく、検査では見つけられない何らかの原因で、精子と卵子が体内で受精できていないことが考えられます(※3)。
また原因不明の不妊は、夫婦の年齢が上昇すると割合が高くなることが報告されており、高齢の場合、精子や卵子そのものの赤ちゃんを作る力が低下していることが考えられます。
精子や卵子の力が一度なくなると、現在の医学では有効な治療がほとんどありません(※3)。そのため、妊娠を望む場合、早めに不妊治療を開始することが大切です。
原因不明の不妊は、精密検査で原因が分かる?
一般的な不妊検査で原因が分からなかった場合でも、「腹腔鏡検査」という精密検査を行うと、原因が特定できることもあります。
腹腔鏡検査は、全身麻酔をかけ、おへそのあたりから小さな内視鏡を差し込み、子宮や卵巣、卵管などを直接観察する検査です。検査では、卵管の癒着や子宮内膜症などがないかを目で確認する他、色素を注入することで卵管の通りも見ることができます。
腹腔鏡検査でもし異常が見つかった場合、軽い癒着や子宮内膜症などであれば、そのまま処置することができます。また検査中は痛みがなく、傷跡も数ミリ程度でおさまります。
しかし、腹腔鏡検査を行ったとしても、全ての原因が見つかるわけではありません。特に、一般的な不妊症検査で原因がわからなかった際に最も可能性が高い「卵管のピックアップ障害」を発見できないこともあります。
費用も10~20万円と高額で、基本的に入院する必要があるため、パートナーや医師とよく相談して方針を決めてくださいね。
原因不明の不妊は治療可能?人工授精や体外受精を行うの?
原因不明の不妊でも、不妊治療を行うことは可能です。経過をみて数周期で妊娠しない場合には、下記のようなステップで治療を行います(※1)。
1. タイミング法
最も妊娠しやすいタイミングにあわせて性交を行うことを「タイミング法」といいます。毎日の基礎体温や超音波、ホルモン検査などから排卵日を予測し、医師から効果的なタイミングのアドバイスを受けることができます。
2. 排卵誘発法
内服薬や注射を使って、排卵を促す方法が「排卵誘発法」です。主に排卵障害による不妊の治療に使用される方法ですが、排卵がある原因不明の不妊の場合にも、妊娠率を上げる目的で使用されることがあります。
3. 人工授精
「人工授精」とは、精子を人工的に女性の子宮内に注入する方法です。マスターベーションで採取した精液から良好な精子を取り出し、妊娠しやすいタイミングに合わせて子宮内に注入します。
4. 体外受精
「体外受精」とは、精子と卵子を採取して、体外で受精させる方法のことです。体外受精によって受精卵が得られたら、ある程度まで成長させてから子宮に戻します。
体外受精は精子と卵子を培養液に入れ、自然に受精するのを待ちますが、顕微鏡とガラス針を用い、人工的に授精させる「顕微授精」が行われることもあります。
原因不明の不妊の治療はできることから始めよう
不妊の原因がはっきりしないと、どうしていいか分からず途方にくれてしまう人もいるかもしれません。
しかし、原因不明の不妊に治療方法がないわけではありません。原因を知るために精密検査をしたり、不妊治療のステップを一段階上げたり、これからどうすべきか夫婦で相談してみましょう。
そして、妊娠しやすい体づくりをするために栄養バランスを考えたり、排卵タイミングを知るために基礎体温をつけたりと、できることから始めてみてくださいね。