子どものことは十分に理解できていると思っていたのに、急にキレはじめると困惑してしまいますよね。怒鳴り散らしたり、手を出そうとしたりする子どもの様子を見て、「何かの病気なのでは?」と心配になるママやパパもいるかもしれません。
今回は、子どもがキレる原因や、キレたときにどのように接したらいいかをご説明します。
子どもがキレる原因は?
一般的に子どもが「キレる」というと、少しでも気に入らないことがあると暴言を吐く、物に当たる、物をなげる、親や友達を叩くなど、自分の感情を抑えきれずに衝動的に乱暴な言動を取ってしまうことを指します。
子どもがキレる原因はさまざまですが、主に以下のようなことが考えられます。
反抗期
子どもは成長過程で迎える「第一次反抗期」と「第二次反抗期」に、キレやすくなることがあるといわれています。また、その間の「中間反抗期」と呼ばれる時期にキレる子どももいます。
第一次反抗期(2~3歳)
幼児期の成長段階でみられ、「イヤイヤ期」とも呼ばれています。自我の芽生えから、今まで親がしていたことを「自分でやりたい」と主張したり、自分の思い通りにならないとイラついたりします。
親の反応を試したりするような行動をとることもあります。
中間反抗期(小学校低学年)
5~8歳くらいの小学校低学年頃にみられる反抗期です。小学校での集団生活が始まり、友達関係や勉強などストレスが溜まることが原因で反抗的になる子もいます。
高学年の児童やメディアなどの影響で覚えた少し乱暴な言葉を使うようになったり、大人をおちょくるような態度をしたりすることも多くなります。
第二次反抗期(中学生~高校生)
中学生から高校生の「思春期」とも呼ばれる時期にみられる反抗期です。今まで依存していた親から自立する考えが芽生え、自我の確立をしようと気持ちが揺れ動き、家族との接し方に敏感になります。
心と行動の折り合いがつきにくいことがキレる原因になることが多いです。
親との関係性
自尊心・自己肯定感が低い
幼い頃から、親や家族など身近な人に厳しく叱られてばかりいる、虐待されている、習い事などで劣等感を感じることが多い、といった環境で育つと、子どもの自尊心や自己肯定感が低くなってしまいます。
その影響から、「自分はダメな人間だ」と自暴自棄になり、キレることが多くなってしまうこともあるようです。
親の言動の影響を受ける
親がイライラしていることが多かったり、乱暴な態度で子どもに接していたりすると、その影響を受けて子どもも外で暴力をふるう、きつい言葉使いをする、といった可能性があります。
親と一緒に過ごす時間が少ない
ママやパパが常に忙しく、コミュニケーションやスキンシップをとる時間が少ないと、子どもは「話を聞いてほしいのに…」「一緒にいたいのに…」とストレスを抱えてしまうことも。
もどかしい気持ちを言葉で伝えられず、キレることで自分を表現しようとする子もいます。
生活習慣の乱れ
睡眠・運動不足
毎日夜更かしで睡眠時間が短いと、日中の疲れが取れずストレスが溜まり、キレる要因になることもあります。また、適度に体を動かさないと、夜ぐっすり眠れなくなってしまいます。
このような睡眠・運動不足の状態が続くと、精神を安定させる「セロトニン」という神経伝達物質の脳内分泌量が減り、攻撃性が高まる可能性があると考えられています(※1)。
朝食を抜いている
朝ごはんを食べないと糖質が不足して脳のエネルギーが足りなくなり、わけもなくイライラしたり集中力がなくなったりすることがあります(※2)。主食・副菜・主菜を組み合わせて栄養バランスのよい朝食をとることが大切です。
脳のエネルギーを長時間保つためには、パンよりも、ゆっくりと消化・吸収され、なだらかに血糖値を上げる「ごはん食」がおすすめですよ。
子どもがすぐキレるのは病気の可能性もある?
子どもが普段から衝動的な行動や癇癪(かんしゃく)を起こしてトラブルになることが多い場合、「注意欠如・多動性障害(ADHD)」や「自閉スペクトラム症(ASD)」といった発達障害の可能性もあるかもしれません。
ADHDの子どもは、じっとしていることができない、集中力が乏しい、衝動的な行動をとる、といった特性があります(※3,4)。気持ちをコントロールするのが難しく、周りからは突然キレるように見えることも少なくありません。
ASDとは、「自閉症」「広汎性発達障害」「アスペルガー症候群」などをまとめた総称で、対人関係や社会的なやりとりが苦手、特定のものやルールに対して強いこだわりを示す、独特なコミュニケーションをとる、といった特性がみられます(※3,5)。
癇癪を起こす子どももいるため、キレているように感じられることもあります。子どもがADHDやASDだった場合、早く気づくことで、その子の特性にあった発達支援を行うことができます。
上記のような特性がみられる場合は、一度かかりつけの小児科や発達障害者支援センター、市区町村の保健センターなどで相談してみてくださいね。
子どもがキレやすいときの向き合い方は?
子どもがキレるのにはさまざまな原因があるため、「これさえすれば大丈夫」という解決方法を見つけるのは簡単ではありません。
子どもがキレやすくなったと感じたときは、まず親が冷静になって、子どもの言動の背景にある心の声を聴くことが大切です。以下の対応例を参考に、子どもと向き合ってみてくださいね。
成長プロセスの一環だと割り切る
第一次反抗期・中間反抗期・第二次反抗期…と、子どもが成長する過程で何度か訪れる反抗期。「いつまでたっても言うことを聞かない」と途方に暮れてしまうかもしれませんが、どれも子どもが成長していくために必要なプロセスです。
反抗期に子どもがキレやすくなるのは、ある意味仕方ないことだと割り切って、子どもの一挙一動に目くじらを立てないようにしましょう。
親子のコミュニケーションを大切にする
本当は親に話を聞いてほしい、わかってほしい、といった理由からキレている場合は、本音を理解してあげるように努めることも大切です。
頭ごなしに否定せず「どうしたの?」と問いかける、子どもの目を見て話を聞く、子どもが自分の気持ちを上手に話せるようフォローしてあげるなど、しっかりコミュニケーションを取ることを意識しましょう。
一緒にカードゲームをしたり、絵本を読んだりして、同じことをして過ごす時間を増やすのもいいですね。
「困ったときはママやパパに話そう」と子どもが思える関係性を小さいうちから築いておくことが、子どもの自尊心や自己肯定感を高めることにもつながります。
規則正しい生活習慣を身につけさせる
早寝早起き、適度な運動、できるだけ決まった時間に食事、といったことを心がけて、など、子どもの生活リズムを整えましょう。
栄養バランスのとれた食事を食べさせる
主食(ごはん、パン、麺・パスタ)、副菜(野菜、きのこ、いも、海藻料理)、主菜(肉、魚、卵、大豆料理)をバランスよく組み合わせて、できるだけたくさんの食材を摂れるように心がけましょう。
周りの人や専門家に相談する
「キレやすい子どもとちゃんと向き合わなくては」と一生懸命になるあまり、ママやパパのストレスや不安が溜まって子どもに怒鳴り散らすようなことになると、負のスパイラルに陥ってしまいます。
そうなる前に、学校の先生に子どもの普段の様子を聞いて相談するなど、周りの人に頼ることも大切です。ADHDやASDなど病気の可能性が気になるときには、発達障害を診てくれる病院で相談してみましょう。
子どもがキレたときは心の声に耳を傾けてあげて
子どもがキレて「大っ嫌い!」「放っておいて!」などと言っていたとしても、「自分の気持ちをわかってほしい」「もっと甘えたい」という本音が隠れていることも多くあります。
キレるのには子どもなりの理由があるはずなので、頭ごなしに叱ったり、黙らせたりするのではなく、一呼吸置いて、子どもの心の声に耳を傾けてあげられるといいですね。