赤ちゃん〜1歳半の癇癪!何が原因で、どう対処すべき?

監修医師 小児科 武井 智昭
武井 智昭 日本小児科学会専門医。2002年、慶応義塾大学医学部卒。神奈川県内の病院・クリニックで小児科医としての経験を積み、現在は神奈川県大和市の高座渋谷つばさクリニックに院長として勤務。内科・小児科・アレルギ... 監修記事一覧へ

赤ちゃん〜1歳半の子が癇癪(かんしゃく)持ちだと、大変な思いをすることも多いかもしれません。何をしても泣きわめいて、聞く耳を持たない子供を一日中相手にしていると、家でも外出先でも気の休まる暇がなく精神的な疲労が溜まっていきます。そんなときに癇癪の原因や対応の仕方を知っていると、少し気持が楽になりますよ。今回は赤ちゃん〜1歳半の子の癇癪について、原因や症状、対応方法、病院に行くべきかどうかなどをご紹介します。

癇癪とは?赤ちゃん〜1歳半頃の子も起こす?

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癇癪とは、欲求不満に対して起こる激しい感情反応のことです。多くの子供が成長に伴って癇癪を起すようになります。

癇癪を起こすのは4〜5歳が多く、5歳半を過ぎると自然と治っていく傾向にあるとされています(※1)。しかし、早い子だと赤ちゃん〜1歳半くらいから癇癪を起こすこともあるようです。

赤ちゃん〜1歳半の子が癇癪を起こす原因は?

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赤ちゃん〜1歳半くらいの子が癇癪を起こす主な原因は、欲求不満です。

赤ちゃんや1歳児の脳は、驚くべきペースで日々成長していきます。成長スピードには個人差がありますが、生まれた頃は何もわからなかった赤ちゃんでも、1~2歳頃になると自我がしっかり芽生えてきて、記憶力もよくなります。

すると「これがしたい!」という思いがはっきりあるにもかかわらず、それを上手く言葉で伝えることができず満たされないため、大声で泣いたり、モノを投げたりしてしまいます。

記憶力がついてくると、「~がしたいときにはこうすればいいんだ」という物事のやり方は頭では理解できてきます。しかし、赤ちゃんや1歳〜1歳半くらいの子は思い通りに体を動かせるほど身体機能がまだ発達していないため、やりたいようにできず泣きわめいてしまうのです。

また、自我の発達とは別に、兄弟ができたときに癇癪を起こすようになる子もいます。これはいわゆる「赤ちゃん返り」で、パパやママが自分だけのものでなくなることに対する危機感や、自分を見てほしいという寂しさから、癇癪という形で親の注目を得ようとします。

他にも、赤ちゃん〜1歳半の子は空腹や疲労、かゆみが原因で癇癪を起こすことがあります。

赤ちゃん〜1歳半の癇癪の症状は?

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癇癪の代表的な症状は、泣きわめいたり叫んだりと、大声を出して自分の気持ちを表現しようとするものです。赤ちゃんや1歳〜1歳半くらいの子が癇癪を起こして、いつもの声の大きさとのギャップに驚き、何か病気なのではないかと疑うママ・パパもいます。

また、イライラして感情を上手くコントロールすることができず、噛みついたり、モノを投げたり、地団駄を踏んだりと行動で表現する赤ちゃんや1歳児もいます。

癇癪は頻度もパターンも表現方法も、子供によって個人差が大きいもの。赤ちゃん〜1歳半の子が癇癪を起こしたら、まずは「成長して自我が芽生えているのだ」と捉えて、子供の感情表現をしっかり受け止めてあげましょう。

赤ちゃん〜1歳半の子が癇癪を起こしたときの対応方法は?

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癇癪は、別の言い方をすれば「成長していくうえでの必要なステップ」でもあります。そのため、癇癪を予防するというよりも、パパやママが対応の仕方を工夫することが大切です。

赤ちゃん〜1歳半の子が癇癪を起こしたときは、次のような方法を試してみてください。

気持ちを代弁して理解する

赤ちゃん〜1歳半くらいまでの子供は、自分の気持ちを上手く表現できなかったり、遊びや食事など自分のやりたいことができなかったりすると、欲求不満で癇癪を起こします。

そんなときは「~したかったんだね」「~はイヤだよね」と、気持ちを代弁してあげるようにしましょう。

また、「●●ができたんだね、えらいね」など、自尊心を高める声掛けをしてあげるのもよいでしょう。パパやママが自分の気持ちを理解してくれると感じると、赤ちゃん〜1歳半くらいの子は少しずつ落ち着きを取り戻すこともあります。

無視をしない

赤ちゃん〜1歳半くらいの子が癇癪を起こすと、何を言っても泣きわめくので「もう勝手にして!」と思ってしまうこともあるかもしれませんが、無視はしないようにしましょう。

自分が頑張って感情を表現しようとしているのにパパやママが構ってくれなくなると、子供は精神的に傷ついてしまいます。そして、その状態が繰り返されると、自己表現すること自体をあきらめてしまったり、自我の形成に影響を与えてしまったりするかもしれません。

子供の声には耳を傾け、気持ちを理解しようとしている姿勢を示しましょう。

抱きしめる

赤ちゃん〜1歳半くらいの子が癇癪を起こしていると、頭ごなしに怒りたくなる気持ちも出てくるかもしれませんが、そんなときこそ抱きしめてあげましょう。これは子供だけでなく、パパやママの気持ちを静めることにもつながります。

徐々に子供が落ち着いてきたら「何がイヤだったの?」と聞いてあげるようにしてください。自分の意見を聞いてくれるだけでも、子供は安心感を覚えますし、質問を投げかけることで癇癪以外の自己表現の方法を学んでいくことができます。

ルールやマナーを教える

電車やバス、外食先などの公共の場で、赤ちゃん〜1歳半くらいの子が癇癪を起こしてしまった場合、気が滅入ってしまいますよね。人目をはばからず大声で泣いたりして大変です。

赤ちゃんや1歳児が激しく癇癪を起こしたときは、周りの人とぶつかってしまう恐れもあるので、まずは端に移動したり、お店の外に出たりして落ち着いて話せる環境を作りましょう。

そして、子供の気持ちを推しはかり、「みんなに迷惑がかかるよ、静かにしようね」と外と家とでは違うということを、小さい頃からきちんと教えてあげるようにしましょう。

赤ちゃん〜1歳半の子の癇癪は発達障害の可能性もある?

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癇癪は多くの赤ちゃんや1歳半くらいまでの子が通る道であり、基本的に病院へ行かなければいけないというものではありません。ただ、1日に何度も癇癪を起こしたり、15分以上続いたり、あまりにも長い期間癇癪が治まらなかったりする場合は、小児科で相談してみるのも一つの方法です。

あくまでも可能性の一つですが、赤ちゃんや1歳半くらいまでの子供の癇癪が日常的に起こるときは、何らかの障害を持っている可能性もあります。癇癪を起こしやすい発達障害としては、自閉症スペクトラム障害やADHD(注意欠陥多動性障害)などがあります。

それぞれの主な症状は以下の通りです(※2,3)。

自閉症スペクトラム障害

● 落ち着きがない
● 予測していないことが起こるとパニックになる
● 失敗するとカッとなる
● 相手の気持ちを読み取れない
● マイペースでこだわりが強い

ADHD(注意欠陥多動性障害)

● 落ち着きがない
● いつも手足をバタバタしている
● 眠りが浅い
● 気分の変動が激しい
● 怪我や誤飲が普通の子供より多い

これらの症状の中には、赤ちゃん〜1歳半頃の子供では見られないものもあるので、すぐに自閉症やADHDと診断するのは難しいのが現実です。実際には、3歳くらいまで様子を見て判断していきます。

ただし、自閉症やADHDはできるだけ早い段階で見つけてあげることで、親や周りがしっかり対応することができ、子供の成長にも良い影響を与えることができます。

赤ちゃん〜1歳半の子の癇癪で自分を責めないで

成長の過程とはいえ、赤ちゃんや1歳〜1歳半くらいまでの子が癇癪を起こすと、パパやママもつらい気持ちになってしまうと思います。ですが、あまり思いつめず、自分を責めないようにしましょう。

家族みんなが幸せになれるように、赤ちゃんや1歳半くらいまでの子が癇癪を起こしても感情的になったり、無視したりせず、子供が伝えようとしていることに精一杯耳を傾けてあげてください。

癇癪はいつかは終わると考えて、前向きに向き合っていけるといいですね。

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