子供がいる夫婦が離婚するときは、母親が子供を引き取って育てていくケースがほとんどです。子連れ離婚には、夫婦だけの離婚とは違った課題も多くあります。今回は、子連れ離婚をするときに知っておきたい子供のこと、お金のこと、自分のことについてご紹介します。
子連れ離婚とは?
「子連れ離婚」とは、子供がいる夫婦の妻または夫が、子供を引き取って養育する立場で離婚することをいいます。離婚後は、シングルマザー、またはシングルファザーとして子供を育てていくことになります。
子連れ離婚をする際には新しい生活も考えて、次のことを決める必要があります。
● 子供に関する親権・養育費・面会交流など
● お金に関する慰謝料・財産分与・婚姻費用など
こうした内容を話し合うなかで、どちらかが離婚を望まずに合意に至らなかったときは、調停離婚や裁判離婚として第三者の力も借りて離婚を進めることになります。
子連れ離婚をして子供を引き取ったからといって、必ずしも親権者になれるとは限りません。また、子供を引き取らなかった場合でも、子供が成人するまでは親としての責任があるため、養育費を支払う義務があります。
子連れ離婚の前に考えておきたいこととは?
離婚に向けて夫婦で話し合いを進めていく段階で、「もう夫(妻)に会いたくないから早く離婚したい」と思う人も多いようですが、子連れ離婚の場合は少し冷静になって、これからの子供との生活についてじっくり考えなければなりません。
子連れ離婚を決断するときには、下記の3つのことを意識して考えるようにしましょう。
● 子供のこと
● お金のこと
● 自分のこと
次からは、「子供のこと」「お金のこと」「自分のこと」それぞれについて詳しく説明していきます。
子連れ離婚を後悔しないために知っておきたい「子供のこと」
年齢によって差はあるものの、子供にとって親の離婚は精神的・物理的に大きな変化をもたらすもの。離婚するとき・離婚した後は、子供のことを第一に考えるようにしましょう。
子供の質問には丁寧に答える
「どうしてパパとママは一緒に住まないの?」「どうして苗字が変わるの?」と、急な変化に戸惑う子供も少なくありません。ごまかさず、一つずつ丁寧に子供の質問に答えるようにしましょう。
話すときのポイントは、前向きに決めたことである、とポジティブに話すことです。もし、まだ気持ちの整理がつかずに話せない場合は、「もうちょっと待ってね、今はうまく話せないの」と正直に気持ちを伝えてみましょう。
子供の年齢が低ければ低いほど、親の離婚の原因を「自分のせいだ」と思いがちです。子供からのいろいろな質問に丁寧に答えながら、「お父さんとお母さんが別々に生活するのは、あなたのせいじゃないのよ」と一言付け加えると、子供の自尊心が傷つくのを最小限に抑えることができるはずです。
子供の戸籍や姓の変更手続きを行う
離婚後に子供の戸籍や姓を母親側に移すという選択をした場合は、離婚届とは別の手続きが必要になります。子供の籍や姓をどうするのかを事前に決めておき、手続きが漏れないようにしましょう。
子連れ離婚を後悔しないために知っておきたい「お金のこと」
厚生労働省が平成23年に行った調査によると、平成22年の母子家庭における平均年収は291万円(うち、母親自身の年収は223万円)となっています(※1)。平成22年の平均年収が412万円であったことを考えると、苦しい家計が想像できます(※2)。
養育費の取り決めをする
離婚がきっかけで母親と子供とで生活をしている母子家庭において、養育費の取り決めをしているのは、たったの37.7%です(※1)。取り決めをしていない理由には、「相手に支払う意思や能力がないと思った」「相手と関わりたくない」と言った内容が多くみられます。
養育費について自分から相手に協議を持ちかけるのが難しい場合は、第三者の協力を仰ぎましょう。裁判所では「養育費・婚姻費用算定表」を元に、客観的に算出しています(※3)。
公的な手当・助成金について調べておく
母子家庭・父子家庭には、申請することで受けられる公的な手当や助成金があります。
● 児童扶養手当
● 母子、父子家庭の住宅手当
● ひとり親家族等医療費助成制度 など
世帯収入によって金額は異なりますが、生活に必要な手当てであれば申請を忘れずに行いましょう。
子連れ離婚を後悔しないために知っておきたい「自分のこと」
子連れ離婚では、つい自分のことを後回しにしてしまいがちですが、自分がこれからどうやって生きていきたいか、子供と一緒にどんな生活をしていきたいかをしっかり考えておきましょう。
偏見に立ち向かう強さを持つ
昔に比べて離婚という選択が珍しいことではなくなっているものの、いまだに子連れ離婚に対し、「子供がかわいそう」という意識を持った人もいます。職場や親族の集まりなどでこういった偏見にあったとき、さらりとかわせるだけの覚悟を持っておくことが必要です。
また、子供が「自分はかわいそうなんだ」と思わないように、今まで以上に愛情をたっぷりと注いであげることも大切です。
自分を大切にする
離婚によって住まいや仕事を変える場合は、新しい生活に順応するためにエネルギーを使うので、気づかないうちに疲労が溜まってしまうものです。
離婚をしたことで子供に迷惑をかけたくないと、つい無理をしてしまいがちですが、子供のためにも親が健康でいることが一番です。離婚後しばらくは大変な状況が続きますが、周りに頼ったり、息抜きをしたりしながら、自分らしさを失わず元気に過ごしていけるようにしたいですね。
子連れ離婚をするときの準備は?
子連れ離婚をするときは気持ちの決断も大切ですが、離婚後に向けた準備も必要です。
法律を勉強する
子連れ離婚を切り出す前に、親権や監護権、養育費などの法律について知っておきましょう。「法テラス」や市区町村の「女性センター」などでも相談できます。
準備金を用意する
離婚をするときは、離婚後に借りる住宅の資金、仕事を始める場合は就労までの資金など、約100万円程度は必要といわれています。準備金の手配が難しいときは、実家を頼るなど、しばらくの生活手段を検討しておきましょう。
離婚後の子供の状況を考える
子供が幼稚園・保育園や小学校に通っている場合、離婚の時期を学年末にすると姓が変わるときもスムーズです。離婚後の居住地によっては転校、転入などの手続きが必要になるので、早めに調べておきましょう。
子連れ離婚は子供のことを第一に考えて
子供にとって、親が笑顔でいることは何より嬉しいことです。離婚をすることで、ママやパパが笑顔を取り戻せるのであれば、子連れ離婚も一つの方法です。
離婚を進めるときは、しっかりと準備をして、ときには信頼できる人に相談して冷静に考えていきましょう。
子供のことを第一に思う気持ちを忘れずに、後悔のない決断をしていけるといいですね。