昨今はひとり親家庭が増加傾向にあり、そのうちの約90%を母子世帯が占めていますが、母子世帯の平均年収は243万円と、安定して生活できる状況とはいえません(※1)。
シングルマザーを支援する手当や助成金は様々ですが、種類が多くて手続きの方法なども複雑です。今回は、母子家庭の安定した生活や養育のために、国や自治体からもらうことができる手当や助成金についてご紹介します。
母子家庭がもらえる手当とは?

母子家庭やひとり親、子供がいる家庭を対象に、国や自治体から手当や助成金としてもらえるお金があります。申請を忘れると損をしてしまうこともあるので、まずは住んでいる自治体の制度を調べておきましょう。
母子家庭では、主に以下のような手当や助成を受けることができます。
● 児童扶養手当
● 児童手当
● 特別児童扶養手当
● 児童育成手当(東京都独自)
● ひとり親家庭医療費助成制度
● 乳幼児医療費助成
なかには母子家庭以外でも受けることができるものもありますが、次から詳しくみていきましょう。
母子家庭の児童の養育に関する手当は?

ここでは、主に児童の養育に関する手当について、「児童扶養手当」「児童手当」「特別児童扶養手当」「児童育成手当」の4つを詳しくご紹介します。
児童扶養手当(※1)
概要
離婚・死別などで、ひとり親になった場合、もしくは夫婦どちらかが重度の障害をもった場合などに、生活の安定と児童の福祉を増進するための手当。
対象
18歳に達する日以降の最初の3月31日までの間にある児童(障害児の場合は20歳未満)を扶養している家庭。
申請・振り込み月
・住んでいる市区町村の役所に書類を持参
・1月、3月、5月、7月、9月、11月にそれぞれ2ヶ月分をまとめて、申請した金融機関の口座に振り込まれる
手当月額(※2)
・前年の所得によって、全額支給と一部支給あり
全部支給 | 一部支給 (所得による) |
|
児童1人の場合 | 43,070円 | 43,060~10,160円 |
児童2人目の加算額 | 10,170円 | 10,160~5,090円 |
児童3人目以降の加算額 (1人につき) |
6,100円 | 6,090~3,050円 |
所得制限限度額
扶養親族等の数 | 全部支給の 所得制限限度額 |
一部支給の 所得制限限度額 |
0人 | 49万円 | 192万円 |
1人 | 87万円 | 230万円 |
2人 | 125万円 | 268万円 |
3人 | 163万円 | 306万円 |
4人 | 201万円 | 344万円 |
5人 | 239万円 | 382万円 |
備考
児童扶養手当の手続きを一度した場合、毎年8月に、所得の状況などを確認する「現況届」を役所に提出する必要があります。子供が祖父母と同居するようになったり、再婚したりした場合には、受給する資格がなくなるため必ず届出が必要です。
また、平成29年4月から物価スライド制が導入され、物の価格の上がり下がりを表した「全国消費者物価指数」に合わせて支給額が変わるようになりました。
児童手当(※3)
概要
子育てをしている家庭の生活の安定と児童の健やかな成長に資する手当。
対象
15歳到達後の最初の3月31日までの間にいる児童(中学終了前)を養育している家庭。
申請・振り込み月
・住んでいる市区町村の役所に書類を持参
・2月、6月、10月にそれぞれ前月分までをまとめて支払い(申請した金融機関の口座)
手当月額
0~3歳未満 | 一律15,000円 |
3歳~小学校修了前 | 10,000円(第3子以降は15,000円/人) |
中学生 | 一律10,000円 |
所得制限限度額
扶養親族等の数 | 所得制限限度額 | 所得上限限度額 |
0人 | 622万 | 858万 |
1人 | 660万 | 896万 |
2人 | 698万 | 934万 |
3人 | 736万 | 972万 |
4人 | 774万 | 1010万 |
5人 | 812万円 | 1048万円 |
備考
児童手当は、令和4年6月から原則「現況届」の提出が不要となりました。ただし市区町村によっては、継続して児童手当を受給するには現況届の提出が必要な場合があるため、必ず自治体に確認しましょう。
また、児童扶養手当と二重での受給が可能ですが、条件や制限は各自治体に確認してください。
特別児童扶養手当(※4)
概要
精神または身体に障害を有する児童の福祉の増進をするための手当。
対象
20歳未満で、精神または身体に障害を有する児童を養育する家庭。
申請・振り込み月
・住んでいる市区町村の役所に書類を持参
・4月、8月、12月に、それぞれ前月分までをまとめて支払い(申請した金融機関の口座)
手当月額(令和4年4月〜)
1級…52,400円
2級…34,900円
所得制限限度額
・受給者もしくはその配偶者、または扶養義務者の前年の所得が一定の額以上であるときは対象外
扶養親族等の数 | 本人 | 配偶者及び 扶養義務者所得額 |
||
所得額 | 収入額 | 所得額 | 収入額 | |
0人 | 459.6万 | 642万 | 628.7万 | 831.9万 |
1人 | 497.6万 | 686.2万 | 653.6万 | 858.6万 |
2人 | 535.6万 | 728.4万 | 674.9万 | 879.9万 |
3人 | 573.6万 | 770.7万 | 696.2万 | 901.2万 |
4人 | 611.6万 | 812.9万 | 717.5万 | 922.5万 |
5人 | 649.6万 | 854.6万 | 738.8万 | 943.8万 |
児童育成手当(※5)
概要
離婚・死別などで、ひとり親になった場合、もしくは夫婦どちらかが重度の障害をもった場合に、生活の安定と児童の福祉を増進するための手当で、東京都独自の制度。
その他、父または母がDVで保護命令を受けている児童、父または母の生死が不明の児童なども含まれます。
対象
18歳になった最初の3月31日までの児童を養育している家庭で、東京都在住。
申請・振り込み月
・ 住んでいる市区町村の役所に書類を持参
・ 申請のあった翌月から、毎年6月・10月・2月に、それぞれ前月分までをまとめて支払い(申請した金融機関の口座)
手当月額
・児童1人につき:13,500円
所得制限限度額
扶養親族等の数 | 所得額 |
0人 | 360.04万 |
1人 | 398.4万 |
2人 | 436.4万 |
3人 | 474.4万 |
4人 | 512.4万 |
5人以上 | 一人につき38万円加算 |
備考
児童育成手当は市区町村が定める条例などに基づいて支給されるため、各市区町村によって支給額や所得制限額などが異なることがあります。詳しくは各自治体で確認してください。
母子家庭の医療に関する手当や条件

医療費を全額、または一部助成してくれる「ひとり親家庭医療費助成制度」と「乳幼児医療費助成制度」がありますが、内容や呼び名が各自治体によって異なります。
ここでは、東京都のケースを例にご紹介します。
ひとり親家庭医療費助成制度(マル親)(※6)
概要
国民健康保険や健康保険など、各種医療保険の自己負担分から一部負担金を差し引いた額を助成。
対象
ひとり親家庭で、18歳になった最初の3月31日まで(児童に障害がある場合は20歳未満)の児童を養育している家庭の母または父、養育者。
申請・助成方法
・住んでいる市区町村の役所に書類を持参し、マル親医療証の交付を受ける
・保険を扱う医療機関で受診する際に、窓口で保険証とマル親医療証を提示する
自己負担金(東京都の場合)
マル親一部負担金 | ひと月あたりの 自己負担上限額 |
||
住民税課税者 | 通院 | 1割 | 18,000円(年間上限144,000円) |
入院 | 1割 | 57,600円(12ヶ月以内に4回目以降は44,400円) | |
住民税非課税者 | 通院 | 負担なし | |
入院 | 負担なし |
所得制限限度額
・ひとり親家庭の所得が限度額以上の場合は対象外
備考
対象となるのは、医療保険の対象となる医療費や薬剤費のみなので、医療保険の対象とならないものは対象外です。
自治体によっては実施していない場所もあり、所得制限額も自治体によって異なるため、事前に確認しましょう。生活保護や施設等に措置を受けている場合は対象外になることがあります。
乳幼児医療費助成(マル乳)(※7)
概要
国民健康保険や健康保険などの各種医療保険の自己負担分を助成してくれる制度。
対象
・6歳に達する日以後の最初の3月31日までの乳幼児(義務教育就学前までの乳幼児)を養育している家庭。
申請・助成方法
・住んでいる市区町村の役所に書類を持参し、マル乳医療証の交付を受ける
・保険を扱う医療機関で保険証とマル乳医療証を提示して、受診する
助成範囲
・医療保険の対象となる医療費や薬剤費等の自己負担分
備考
自治体によっては、一定額以上の収入がある場合は乳幼児医療費助成制度が適用外となることがあるので、詳しくは各自治体で確認してください。
母子家庭への手当や助成金を活用しよう

母子家庭の手当や助成金の他にも、国や自治体ではシングルマザーの就職に関する自立支援としての給付金や、生活に困ったときのための無利子や低金利での貸付制度もあります。
日常生活で必要な粗大ごみ等の処理手数料や上下水道料金などの減免、保育料の免除などもあるので、どんな制度が利用できるのか、自治体に相談してみましょう。