妊活中や妊娠中の女性は、葉酸の摂取が大切だといわれています。しっかり摂取したいですが、摂りすぎることによるリスクや副作用はあるのでしょうか?今回は、葉酸の正しい摂取量や、過剰摂取したときのリスクについてご説明します。
妊娠中に葉酸が必要なのはどうして?
そもそも、妊活中や妊娠中に葉酸が必要だといわれているのはどうしてなのでしょうか?妊娠時期によって、下記のような理由があります。
妊活中・妊娠初期
妊娠初期は、赤ちゃんの細胞増殖が盛んな時期です。葉酸は、細胞増殖に必要なDNAを合成する材料になります。
もしこの時期に葉酸が不足し、細胞増殖がうまくいかないと、赤ちゃんが「神経管閉鎖障害」を発症するリスクが高まります。
「神経管閉鎖障害」とは、脳や脊髄など、中枢神経の元になる「神経管」の一部が塞がる病気です。生まれてから、運動障害や知的障害などの症状が現れる可能性がある「二分脊椎症」と、脳が形成されず、生まれてから外の世界で生きていくことができない「無脳症」の二種類にわけられます。
二分脊椎症、無脳症ともに原因は様々で、完全に防ぎきれるものではありませんが、妊娠してから約1ヶ月の間に葉酸をしっかりと摂取することで、予防できる可能性が高まります(※1)。
この間はまだ妊娠に気づいていない人も多いので、葉酸は妊活中から摂取することが大切だといわれています。
妊娠中期・妊娠後期
妊娠中期以降に葉酸が不足すると、「葉酸欠乏性貧血(巨赤芽球性貧血)」になる可能性があります。
葉酸欠乏性貧血は30歳以上の多産婦さんに多くみられ、発生頻度は0.5~26%ともいわれています(※2)。
葉酸欠乏性貧血になると、一般的な貧血症状に加えて、食欲不振、吐き気、下痢などの症状が出ます。症状は栄養剤の投与で改善することがほとんどですが、葉酸の摂取で予防をすることが大切です。
妊娠中の葉酸の過剰摂取量は?
厚生労働省が発表した「日本人の食事摂取基準(2015年版)」によると、18~49歳の妊婦さんは、1日あたり480μgの葉酸摂取が推奨されています(※3)。
また厚生労働省は、1日の葉酸摂取量は、1,000μg(1mg)を越えるべきではないとも発表しています(※4)。
食材に含まれる葉酸は、調理や消化の過程で失われることが多いので、普通に生活していれば、1日1mg以上の葉酸を摂取することはそうありません。
しかしサプリメントを必要以上に服用すると、過剰摂取になりかねません。サプリメントは、適切な量を摂取するようにしましょう。
妊娠中に葉酸を過剰摂取すると副作用やリスクはある?
葉酸を過剰摂取することによって発症する病気などは、特に知られていません(※4)。
しかし厚生労働省は、葉酸の過剰摂取における副作用やリスクについて、「ビタミンB12欠乏症の診断がしにくくなる」というものをあげています(※5)。
ビタミンB12欠乏症は、妊婦さんの巨赤芽球性貧血や体力低下、赤ちゃんの運動障害や発育障害を引き起こす可能性がある病気です。
葉酸は、ビタミンB12と協力して赤血球を作り出す働きがありますが、摂りすぎると、ビタミンB12欠乏症であることを気づきにくくさせます。ビタミンB12欠乏症に気がつかず放っておくと、赤ちゃんへの影響が残る可能性も高まります。
妊婦さんの体には様々な栄養がバランス良く必要なので、葉酸ばかり過剰に摂取しても意味がありません。厚生労働省が定める推奨量を守るようにしましょう。
妊娠中に葉酸サプリを過剰摂取すると危険?
厚生労働省は、食品からの葉酸摂取とあわせて、サプリメントからも葉酸を摂取するよう推奨しています(※4)。
食品に含まれる天然葉酸よりも、サプリメントに含まれる合成葉酸の方が体内への吸収力が良く、赤ちゃんの神経管閉鎖障害のリスク減少にもつながるということがわかっているからです。
ただし、サプリメントを摂取しすぎると、葉酸の過剰摂取につながります。サプリメントは製品によって適量が異なるので、食品表示や商品のラベルなどをよく読み、適切な量を摂取するようにしてください。
葉酸サプリメントを過剰摂取することによる副作用などは、日本では特に報告されていませんが、先に紹介したビタミンB12欠乏症に気がつきにくくなる恐れがあります。
妊娠中の葉酸は過剰摂取に注意して
葉酸は妊娠中に欠かせない栄養素ですが、たくさん摂れば摂るほど良いというわけではありません。特にサプリメントを服用しすぎると、簡単に過剰摂取になってしまうので、適量を守るようにしてください。
妊娠中は、栄養のバランスが大切です。葉酸だけでなく、様々な栄養素が適量ずつ摂れるように、食事にも工夫をしてみてくださいね。