産後は、ホルモンバランスの変化や育児ストレスなどが原因で、「産後うつ」と呼ばれる状態になるママも少なくありません。「育児が大変なのはみんな同じなのだから…」と我慢しようとせず、つらいときは病院で治療を受けるのも一つの方法ですよ。今回は、産後うつの治療について、具体的な方法や期間、入院が必要かどうかなどについてご説明します。
産後うつとは?
出産後に現れる、不安感や集中力の低下、涙もろさ、情緒不安定、不眠などの軽い抑うつ状態を「マタニティブルーズ」と呼びます。この症状が悪化すると、強い抑うつ状態が現れる「産後うつ」になることがあります(※1)。
日本産科婦人科医会によると、産後は10~15%のママに産後うつの症状が見られ、特に産後1ヶ月以内に産後うつになる人が多いとされています(※2)。
産後うつは、もともと精神的な病気を抱えている、妊娠中から育児などへの不安が大きい、周りから受けられるサポートが少ないなどが原因となるほか、産後のホルモンバランスの変化によって脳が受けるストレスも一因であると考えられます(※3)。
「産後うつかも?」と感じたときは、下の関連記事にあるチェックリストで自分の症状を確認してみてくださいね。
産後うつは治療が必要?
「育児が大変なのは自分だけではないのだから、頑張るしかない」、もしくは「時間が経てば、そのうち気持ちが軽くなるだろう」と考え、つらくても我慢してしまうママもいるかもしれません。
しかし、産後うつは適切に対処しないと悪化したり、再発したりする恐れがあるので、早めの治療が大切です(※3)。
日本産科婦人科医会によると、ママが産後うつになると本人がつらいだけでなく、長期的な子供の情緒とその発達や、パートナーの心の健康にも影響を及ぼします(※2)。
産後うつと診断されたら、ママ本人を含め家族みんなが安心して過ごすためにも、病院で治療を受けることをおすすめします。
産後うつの治療はどこで相談すればいいの?
産後うつの可能性があれば、まずはパートナーや家族、近しい友人といった信頼できる人に気持ちを打ち明けてみましょう。不安や悩みを打ち明けて、育児の負担を軽くしてもらうだけでもよくなることがあります。
近くに相談する相手がいなかったり、話しづらかったりすることがあれば、地域の子育て支援センターや精神保健センター、かかりつけの産婦人科などで医師や専門スタッフに相談することもできます。
相談や問診の結果、産後うつとわかった場合は、精神科や心療内科を紹介してもらえることがあります。こういったところを受診するのに抵抗がある人もいるかもしれませんが、患者さんのプライバシーはしっかりと守られるので安心してくださいね。
病院に行かないまま放置してしまうと、症状が悪化し、双極性障害など精神的な病気を新たに発症してしまう恐れもあります。そうなる前に、できるだけ早めに専門医のカウンセリングを受けておくことをおすすめします。
産後うつの治療法とは?薬は安全なの?
産後うつと診断された場合は、カウンセリングと抗うつ薬による治療が基本となります(※2)。
授乳をしているママは特に、母乳を通じて赤ちゃんに薬の悪影響が出るのではないか、と心配になるかもしれません。しかし、よく使われる抗うつ薬の「選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)」などは、母乳に成分が移行することは少なく、赤ちゃんへの影響もほとんどないと考えられています(※2)。
現在は、授乳中に飲んでも安全性が高い薬が多くあるので、医師ともよく相談してみてくださいね。
また薬以外にも「認知行動療法」や「対人関係療法」といった心理療法を受けられることもあるので、治療法については病院で医師と相談してみましょう。
産後うつの治療で入院も必要?期間は?
産後うつの症状が重く、赤ちゃんのお世話が難しい、周りに頼れる人がいないといった場合には、入院が必要になることもあります。
入院中は通院での治療と同じく、カウンセリングと薬物療法が行われます。赤ちゃんと一緒に入院する母子専門病棟もありますが、身のまわりのことは病院のスタッフが協力してくれるので、ママは赤ちゃんのお世話から少し距離を置いて、心身の健康状態を回復するための治療に専念できます。
入院期間はママの心身の状態によって異なり、1週間程度で退院することもあれば、数ヶ月の入院が必要と医師が判断することもあります。
治療内容や費用、赤ちゃんのお世話をどうするかなど、パートナーや医師と相談のうえ、入院による治療も検討してみてくださいね。
産後うつは治療する方法があります
産後うつの原因は、決して「ママの頑張りが足りないから」ではありません。ホルモンバランスの変化や妊娠中・産後の環境など、様々な要因が組み合わさることによって発症するものです。
適切な治療を早めに受ければ改善されることも多いので、地域の保健センターや病院で相談してみてくださいね。
なお最近では、女性だけでなく男性も、子育ての不安や仕事との両立のプレッシャーなどから産後うつになることが少なくない、ということがわかってきています(※4)。
産後はママもパパも大忙しだと思いますが、毎日少しでも話す時間を作るなどしましょう。また、産後うつは本人が気づけないことも多いとされているので、相手に少しでも変化があれば、病院で相談してください。
ママとパパが心身ともに健康でいられるように、信頼関係を築いていきたいですね。