妊娠がわかると、うれしい半面、赤ちゃんが健康で生まれてきてくれるだろうかと心配してしまう人もいるのではないでしょうか。特にアトピーのようなアレルギー体質のある妊婦さんは、赤ちゃんもアトピーになるのではないかと不安に感じているかもしれません。そこで今回は、妊婦のアトピーが遺伝するのかどうか、妊娠中に悪化したときの対処法や注意点などをまとめました。
アトピーとは?体質的なもの?
「アトピー」は、体内の免疫機能が過剰に働いてしまうアレルギー体質のことで、アレルギー反応が肌に現れる「アトピー性皮膚炎」の略称として使われることがほとんどです。
本来は、体に有害な細菌・ウイルスを排除する免疫機能が、なんらかの理由で無害なダニやハウスダスト、花粉といった物質に過剰に反応してしまうことで発症します。
20代の9.4%、30代の8.3%、40代の4.8%がアトピー性皮膚炎であるという調査報告もあります(※1)。
妊婦のアトピーはお腹の赤ちゃんに遺伝する?
妊婦さんがアトピーだからといって、お腹の赤ちゃんに必ず遺伝するわけではありません。
しかし、厚生労働省の調査によると、両親のどちらかにアトピーがある場合は、アトピーがない両親から生まれた赤ちゃんと比べて、アトピーの発症率が約2倍になることがわかっています(※2)。「両親のどちらか」がアトピーを持っている場合なので、ママだけではなく、パパの体質も遺伝する可能性があります。
逆に、両親にアトピーがなくても、赤ちゃんがアトピーを発症することもあります。はっきりとした原因はわかっていませんが、乳幼児期の食べ物、発汗、乾燥などによる物理的な刺激、環境、細菌などが発生因子になると考えられています。
妊娠中はアトピーが悪化しやすい?注意点は?
妊娠中は体質の変化で「妊娠性痒疹」を発症し、アトピーが悪化する場合があります。
妊娠性痒疹は妊娠3~4ヶ月頃から起こり、腕や背中、胸、お腹などにかゆみを伴う発疹ができます。妊婦さんの約2%にみられる症状です(※3)。
妊娠中に悪化したアトピーは、産後に元通りになることがほとんどですが、アトピーが悪化してかゆみが強くなると、妊娠中の生活に支障をきたしてしまう可能性もあります。かかりつけの産婦人科や皮膚科に相談し、早めに対処ができるといいですね。
妊娠中のアトピーに薬は使える?ステロイドは?
「妊娠中に薬を使用すると赤ちゃんに悪影響を与えるのでは」という心配から、薬の利用を控えたいという人もいるかもしれません。しかし、薬を使うのを我慢してかゆみや肌荒れがひどくなり、ストレスをためてしまうのも、お腹の赤ちゃんに良くありません。
皮膚科で使われる軟膏やクリーム、ローションといった外用薬は、通常の範囲内であれば、妊娠中に使用してもほとんど問題ないと考えられています。ステロイドも同様で、妊娠中に使用したことで赤ちゃんに悪影響があったという報告もありません(※4)。
医師から必要だと診断されたら、用法・用量を守って正しく使ってください。
また、皮膚科を受診する際は、妊娠中であることを伝え、念のため母子手帳も持っていくようにしましょう。
妊婦のアトピーへの対処方法は?
妊娠中にアトピーが悪化した場合、薬の使用以外にも、日常生活で心掛けられることがあります。以下の対処法でホームケアをしながら、悪化を予防できるといいですね。
こまめに保湿する
アトピーになると肌が乾燥しやすく、バリア機能が弱くなっているので、こまめに肌を保湿してバリア機能を補ってあげてください。体を清潔に保ちながら、お風呂やシャワーのあとには保湿剤でケアすることを習慣にしていきましょう。
妊娠線の予防やむくみの改善も兼ねて、マッサージをするように塗り込んでみてもいいですね。
掃除や換気を行う
ハウスダストやダニがアトピーの原因であれば、こまめに部屋の掃除をし、花粉が飛ぶ時期以外なら、窓を開けて換気をしたり、布団を干したりすることも大切です。
妊娠中の掃除は大変なので、無理をせずに、パートナーや両親の手を借りるようにしてください。空気清浄機や布団用掃除機といった家電を利用するのもおすすめです。
ストレスを抱えすぎない
妊娠中のつわりやマイナートラブル、通勤などでストレスがたまると、アトピーが悪化することもあります。妊娠中は、女性ホルモンの影響でイライラしやすいので、ストレス要因はできるだけ取り除きましょう。
そうはいっても、どうしても避けられないストレスもあると思うので、休みの日などはゆっくりとリラックスして、ストレスを発散する時間を持つようにしてくださいね。
妊娠中のアトピーは心配しすぎないで
妊娠中はホルモンバランスが乱れ、体も心も不安定になりやすい時期です。そこにアトピーが加わると、自分の体や赤ちゃんのことで余計にナーバスになってしまうかもしれません。
しかし、妊娠中に不安やストレスを溜め込んでしまうと、別のマイナートラブルを引き起こしてしまうこともあります。不安があれば一人で抱え込まず、早めに医師に相談しましょう。周りの協力を得ながら、安心したマタニティライフを送れるといいですね。