新生児一過性多呼吸とは?原因は?治療は?後遺症はある?

出生直後の赤ちゃんに見られる病気のひとつに「新生児一過性多呼吸」があります。これは、帝王切開で生まれた赤ちゃんに多く見られる呼吸障害です。今回は、新生児一過性多呼吸とはどんな症状が見られるのか、原因やその後の処置、後遺症があるのかどうかについてご説明します。

新生児一過性多呼吸とは?

新生児 保育器
新生児一過性多呼吸とは出生直後に起こる呼吸障害で、新生児の呼吸障害のなかでもっとも多く見られる病気です(※1,2)。

病名の通り、呼吸の回数が多いという症状が現れます。新生児の正常呼吸が1分間あたり40〜60回のところ、新生児一過性多呼吸では、80〜120回程度にもなります(※2)。

新生児一過性多呼吸の原因は?

出産 分娩 帝王切開

肺には、肺胞(はいほう)という空気を入れるための小さな袋が無数に存在しています。

胎児のときは、肺液(肺水)という水分で満たすことで肺胞の形を維持し、自然呼吸に備えて成熟させていきます。

陣痛が起きるとそれが刺激となり、肺液は肺の表面を覆っていた細胞によって吸収され、減っていきます。出生後、赤ちゃんが呼吸を始めると肺胞は膨らみ、残っていた肺液はさらに吸収されていきます(※2)。

しかし、陣痛が起きる前に帝王切開で出産すると、肺液の吸収が上手に進みません。

そうすると出生後も肺胞に肺液が多く残ってしまい、肺胞のなかに十分なスペースが生まれないので、1回の呼吸で肺胞に入れられる空気の量が減ってしまいます。こうして、新生児一過性多呼吸が引き起こされるのです。

どの週数の出産でも新生児一過性多呼吸は見られますが、とりわけ、妊娠34〜37週での出産でよく見られます。経腟分娩でも起こる可能性はあります(※1,2)。

新生児一過性多呼吸の症状とは?

症状
新生児一過性多呼吸は、1分間に80〜120回ほどの呼吸のほかに、息をするときに胸の一部がへこむ「陥没呼吸」が見られたり、息をするときに苦しそうにうめいたりすることもあります(※1)。

また、皮膚や粘膜が青紫色に変化する、チアノーゼが見られることもあります。

新生児一過性多呼吸の治療は?

診察
赤ちゃんがおしっこを排泄すると呼吸が安定することが多いので、新生児一過性多呼吸の多くは24時間以内に改善します(※3)。

症状が長引いても、生後3日目までには回復することが一般的です。回復が早いことが新生児一過性多呼吸の特徴でもあります(※1)。

治療は、赤ちゃんを保育器に入れて酸素を与えながら様子を見ます。チアノーゼが見られても、保育器のなかで酸素を与えることで改善することが一般的です。ごくまれですが、人工呼吸器をつけて酸素を与えることもあります(※2)。

新生児一過性多呼吸に後遺症はある?

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前述のとおり、新生児一過性多呼吸は回復が早いのが一般的ですが、ごくまれに重症化することもあります。

たとえば、肺水が溜まったままになることで、肺高血圧(遷延性肺高血症)を引き起こすこともあります(※1)。肺高血圧症とは心臓から肺に血液を送る肺動脈の血圧が高くなることで、心臓と肺に機能障害をもたらす病気です(※4)。

そのため新生児一過性多呼吸になったら、ほかに病気が隠れていないか、胸部のX線検査を行うことが一般的です。

新生児一過性多呼吸は適切な治療で改善を

赤ちゃん ママ 新生児

生まれた直後の赤ちゃんの呼吸は大人と比べて早いものですが、新生児一過性多呼吸があるとさらに呼吸が早いので、驚いてしまうかもしれません。

しかし多くの場合は、保育器で酸素を与えることで症状が改善します。

数日間、赤ちゃんと離れ離れになってしまうのは寂しいですが、元気に退院するためにも、新生児一過性多呼吸と診断されたら医師の指示に従って、適切な治療を受けるようにしてくださいね。

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