一般的に、閉経は50歳前後で迎えるものですが、20~30代で閉経を迎えることがあるのをご存じですか?これは、「早発閉経(早期閉経)」といわれる症状で、女性なら誰しもなる可能性があるものです。今回は、早発閉経(早期閉経)の兆候や原因、治療法や、無月経との違いについてご説明します。
早発閉経(早期閉経)とは?
40歳未満で閉経することを、「早発閉経」や「早期閉経」といいます(※1)。
早発閉経の起こる割合は、30歳までは1,000人に1人、40歳までで100人に1人ほどです(※2)。
閉経の医学的な定義は、「12ヶ月以上月経がないこと」です。個人差はありますが、通常50歳前後に起こるもので、日本人の平均閉経年齢は52.1歳です(※3)。
早発閉経(早期閉経)の兆候や症状は?
早発閉経の兆候として、徐々に月経の間隔が広がって、回数が減り、やがて全く来なくなります。生理不順や無月経と間違われやすいのが特徴です。
早発閉経になると女性ホルモンの分泌がなくなるので、心や体に更年期障害のような症状が現れます。下記のような症状に注意しましょう。
精神的な症状
- 気分の浮き沈みが激しい
- うつっぽくなる
- 集中できない
- 不安になる
身体的な症状
- ほてり・のぼせ
- 疲れやすい
- 動悸
- 耳なり
- 頭痛・めまい
- 不眠
- 骨粗しょう症
- 脳梗塞
- 脳動脈瘤
早発閉経(早期閉経)と無月経との違いは?
本来は来るべきはずの月経が来ないことを「無月経」といいます。
無月経の場合、卵巣機能は休止しているだけで、これから回復することがあるという状態です。無月経には原因がいくつかあり、その原因を取り除くことで、再び月経を起こすことができます。
一方、早発閉経は、卵巣の機能が低下しているために、卵胞を育てる働きがある「卵胞刺激ホルモン(FSH)」の分泌量が増えすぎている状態です。ほとんどが自然には回復せず、治療を行う必要があります。
早発閉経(早期閉経)の原因は?
早発閉経の原因は様々ですが、染色体の異常によるものが20%、染色体に異常はないものが80%という報告があります(※2)。
染色体が正常だった80%のなかには、さらに様々な原因があると考えられていますが、現時点ではまだはっきりとわかっていません。
はっきりとわかっている原因としては、甲状腺機能低下症などの自己免疫性疾患や、卵巣の手術、化学療法、放射線療法の影響があります。
早発閉経(早期閉経)になりやすいのはどんな女性?
早発閉経は、卵巣の機能が低下することで起き、女性ホルモンの分泌量が減少します。
下記にあてはまり、生理が来ない、または生理の間隔が長くなっているという人は、ホルモンバランスが崩れている可能性があります。早発閉経につながる可能性もあるので、早めに婦人科を受診しましょう。
生理不順が当たり前
生理がはじまった頃から周期が安定せず、生理不順が当たり前だという人は、注意が必要です。もともと卵巣機能に何かしらの異常がある可能性があり、早発閉経につながるかもしれません。
また、生理不順が続いているのを放っておくことで、気づかないうちに早発閉経を迎えてしまうこともあります。
喫煙や過度なダイエットをしている
喫煙の習慣がある、または過度なダイエットで栄養バランスが崩れているという人も、ホルモンバランスが乱れやすい状態です。特に過度なダイエットは、卵巣の機能に直結し、排卵機能が止まってしまうこともあります。
ストレス過多
ストレスも、ホルモンバランスが乱れるきっかけになります。ストレスを全くためないということは難しいかと思いますが、ためこみすぎるとよくありません。
早発閉経(早期閉経)が起きても妊娠できる?
早発閉経は卵巣機能が完全に停止しており、排卵していない状態なので、妊娠することはできないとされていました。
しかし最近では、早発閉経後に卵巣機能が回復し、排卵や妊娠、出産をしたとの報告があることから、「早発閉経」ではなく「早発卵巣不全」と捉えるのが適切ではないか、ともいわれています。
早発閉経と診断された人が妊娠を希望するときには、ホルモン療法の不妊治療を行って排卵を促すか、卵子があるうちに採卵して、体外受精をすることで、妊娠の可能性を探ることができます。
例えば2013年には、聖マリアンナ医大などのチームが、早発閉経の患者さんから卵巣を摘出し、残っていた原始卵胞のいくつかを目覚めさせ、排卵を起こすことに成功しました。その結果、4年間月経のなかった30歳の女性が、無事に出産しています。
また早発閉経になっても、不定期に排卵している女性がいるということもわかってきました。
そうはいっても、早発閉経になると、一般的に妊娠は困難です。解明されていない部分も多く、現在も研究が進められています。
早発閉経(早期閉経)の治療法は?費用は保険適用されるの?
早発閉経の治療は、そのものを「治す」というより、ホルモンを投薬で補う「対症療法」になります。
早発閉経になると、ほとんどの場合、自然には卵巣機能が回復せず、女性ホルモンが分泌されなくなります。女性ホルモンが早期に不足してしまうと、骨粗しょう症などの疾患を発症することがあります。
そのため、平均的な閉経年齢まではホルモンを補うための投薬を続けるのが一般的です。
早発閉経(早期閉経)を予防するには?
早発閉経を予防するには、自然な排卵を妨げないよう、ホルモンバランスを適切に保つことが大切です。また、体の変化を早く察知して対処することも、早発閉経の予防につながります。
生活習慣を見直す
ホルモンバランスを整えるためには、規則正しい生活を送ることが大切です。
ポイントは、バランスの良い食事・適度な運動・質の良い睡眠です。喫煙している人は禁煙することをおすすめします。
また、ストレスをためこまず、リラックスできる時間を持つように心がけましょう。疲れたときはゆっくり休んでくださいね。
ダイエットをするなら長期間で健康的に
ダイエットをする場合には、ゆっくり体重を落とすようにしましょう。過度な食事制限や頑張りすぎはよくありません。
適度な運動は血液循環をよくし、体を整える効果もあるので、自分のペースにあった運動を習慣にできるといいですね。
自分の生理周期を知る
生理が来ているのかいないのか、何日周期で来るのかなどをきちんと記録し、把握しておきましょう。基礎体温を計るのもいいですね。
自分の体を知っておくことで、早発閉経のリスクを早く発見することができます。
無月経を放っておかない
無月経を放置しておくと、休止状態にある卵巣機能が完全に停止して、早発閉経になってしまう可能性があります。ただし、授乳中であれば生理がなくても問題ありません。
生理が来なくても特に自覚症状などはないかもしれませんが、放置せずに一度婦人科で診断を受けましょう。
早発閉経(早期閉経)の症状があればすぐに病院へ
早発閉経は、特に妊娠を希望している女性にとっては大きな問題となります。早めの発見が大切なので、3ヶ月以上生理が来ないなどで早発閉経が疑われる場合は、放置せずに産婦人科医に相談してください。
早期閉経になる前に対処をすれば、通常の生理周期に戻し、自然妊娠を目指すことも可能です。自分の状態を把握して、早めに対処したいですね。