トキシックショック症候群とは?診断基準は?症状や治療法は?

監修医師 産婦人科医 間瀬 徳光
間瀬 徳光 2005年 山梨医科大学(現 山梨大学)医学部卒。板橋中央総合病院、沖縄県立中部病院などを経て、現在は医療法人工藤医院院長。産婦人科専門医、周産期専門医として、産科・婦人科のいずれも幅広く診療を行って... 監修記事一覧へ

トキシックショック症候群という病気を聞いたことがあるでしょうか?とても稀な病気ですが、タンポンを使用している女性がかかりやすく、症状が重くなりがちなので注意が必要です。そこで今回は、トキシックショック症候群とはどのような病気なのか、診断基準はどのようなものなのか、症状や治療法などについてご説明します。

トキシックショック症候群とは?

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トキシックショック症候群とは、短時間で全身に重い症状が出る敗血症の一種です(※1)。

トキシックショック症候群は性別に関係なく、誰でもかかる可能性があります。ただし、実際には月経中の女性に起きることが多く、そのほとんどはタンポンの使用中であるという特徴があります。

残りの半数は火傷や炎症性の腫物、虫刺され、外科手術後に感染症にかかった人などです。

黄色ブドウ球菌の毒素に対する抗体は年齢とともに増えるため、若い人ほどトキシックショック症候群にかかる可能性が高くなります(※1)。

ただし、トキシックショック症候群はとても稀な病気です。そのため、ほとんどの医師はトキシックショック症候群の治療をする機会がありません。

例えば人口約5,800万人のイギリスでは、毎年約40人しか発症していません。しかし、なかには命にかかわる場合もあり、年間2〜3人が亡くなっています(※1)。

トキシックショック症候群の症状は?

数字 数 クエスチョン はてな

トキシックショック症候群になると、次のうちいくつか、あるいはすべての症状が現れます(※1)。

● 急な発熱
● 吐き気
● 日焼けのような発疹
● 失神やそれに似た症状
● 筋肉痛
● めまい
● 意識の混濁
● 下痢

トキシックショック症候群の原因は?

菌 ウイルス 細菌 病気 病原菌

トキシックショック症候群の原因は、黄色ブドウ球菌という細菌が作る毒素です。

黄色ブドウ球菌は通常は害がない細菌で、3人に1人は持っています。特に、鼻の穴や脇の下、足の付け根、膣などに生息しています。

ところが稀に、何らかの理由によって黄色ブドウ球菌が毒素を作り出すことがあり、それが原因でトキシックショック症候群にかかってしまいます(※1)。

トキシックショック症候群の診断基準は?

カルテ リスト チェック 項目

トキシックショック症候群の診断基準は次の通りです。これらを満たすとトキシックショック症候群と考えられます。

● 体温が38.9℃よりも高い
● 日焼けのような発疹がある
● 収縮期の血圧が90mm Hg未満、あるいは起立性低血圧やめまい、失神の症状がある
● 胃腸や筋肉、腎臓などに3つ以上の障害がある
● 発症してから1〜2週間以内に手のひらや足などの皮がむける

ただし、似た症状が出る病気が他にもいくつかあるため、すぐにはトキシックショック症候群とは断定できません。

通常、トキシックショック症候群の可能性がある場合は上記の診断基準だけでなく、血液検査や過去の健康状況、旅行歴、職業、趣味、月経の状況や使っている医薬品などを問診して診断します(※2)。

トキシックショック症候群の治療法は?

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トキシックショック症候群の治療法は次の5種類です(※2)。

患部を洗う

火傷や腫物、虫刺されなどによってトキシックショック症候群を発症している場合は、患部をよく洗います。また、外科手術後にトキシックショック症候群を発症した場合は、その傷跡が炎症を起こしていなくても洗います。

体液を補う

トキシックショック症候群になると、体液が大量に失われる可能性があります。そのため、体液をなるべく早く輸液します。例えば成人の場合、最初の24時間に10Lもの輸液が必要になることがあります。

抗生物質の投与

黄色ブドウ球菌には、抗生物質のペニシリンやクリンダマイシンが有効とされているため、これらの抗生物質を数時間おきに注射します。

カルシウムなどの投与

筋肉や腎臓、血液などに障害が起きないように、カルシウムとマグネシウムを十分に与えます。

保存ヒト免疫グロブリンの投与

重症の場合には、黄色ブドウ球菌の産生する毒素に対する抗体を含んでいる、保存ヒト免疫グロブリンという薬を使うこともあります。

トキシックショック症候群の予防法は?

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トキシックショック症候群は誰でもかかる可能性がありますが、特にタンポンを使用している女性は注意が必要です。

近年は、トキシックショック症候群へのかかりやすさはタンポンの吸収性と関係していると考えられています。そのため、トキシックショック症候群の予防法としては、タンポンを長時間使わず、定期的に交換することが重要です。

具体的には、次のようなことに注意した方がいいでしょう(※1)。

● 経血量に合い、かつ吸収量が最も少ないものを使用する
● 生理期間中は、生理用ナプキンやパンティー・ライナーもときどき使用する
● 出し入れするときは手を洗う
● 定期的に交換する
● 一度に2つ以上を使わない
● 夜寝る前に新しいものと交換し、朝起きたら取り除く
● 生理期間の最後には取り除く

なお、トキシックショック症候群については、各タンポンの説明書にも書いてあります。内容が更新されることがあるので、定期的に説明書を読むようにしたいですね。

トキシックショック症候群はタンポンを正しく使って予防しよう

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トキシックショック症候群はとても稀な病気ですが、発症すると急激に症状が悪化し、場合によっては亡くなる危険性もある病気です。しかも、患者の多くはタンポンを使用している女性です。

トキシックショック症候群にならないために、タンポンは説明書にしたがって正しく使用しましょう。

また、トキシックショック症候群のような症状が出たときはすぐに医師に診てもらいましょう。その際、タンポンの使用をすぐにやめ、医師にタンポンを使っていたことを伝えてください。

「慌てすぎかもしれない」と思ってしまうかもしれませんが、トキシックショック症候群かどうか確認するために必要なことです。また、もしトキシックショック症候群だった場合、早期治療にもつながります。

トキシックショック症候群は、治療が早ければ早いだけ、完治の可能性が高い病気です(※1)。

自分の健康のために、タンポンは正しく使いたいですね。

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