女性のデリケートゾーンにトラブルを引き起こす「細菌性膣炎」という病気があります。成人女性によく見られますが、おりものの増加や腹部の痛み、デリケートゾーンのかゆみなどを引き起こすので、性感染症と勘違いすることがあるかもしれません。今回は、細菌性膣炎の原因や症状、治療法をご説明します。
細菌性膣炎とは?原因は?
細菌性膣炎とは、細菌が膣内で異常増殖して炎症を起こす疾患です。悪性のウイルスや細菌が感染する性感染症とは違い、大腸菌やブドウ球菌、連鎖球菌といった一般的な細菌が膣内で過剰に増殖することが原因です(※1,2)。
通常、女性の膣内は、乳酸桿菌の作用によって酸性状態に保たれており、酸性環境に弱い病原体の侵入や増殖を防いでいます。
しかし、疲れやストレスが溜まったり、体力が落ちて免疫力が下がると、膣内の自浄作用が弱まり、普段は悪さをしない細菌が増殖して細菌性膣炎を引き起こしてしまうことがあります。
細菌性膣炎の症状は?
細菌性膣炎の主な自覚症状には、おりものの増加や外陰部のかゆみなどがあります。
膣内が炎症を起こすと、乳白色でヨーグルト状、または黄色味を帯びた、悪臭のあるおりものが増えることがあります。
おりものに刺激されて、デリケートゾーンにかゆみが現れる、熱を持っているように感じる、かぶれるといった症状が出ることも。外陰部が赤くなるだけでなく、膣内に膿(うみ)のようなものが見られることもあります(※1)。
しかし、炎症が軽度であれば、かゆみや痛みがそれほど強く現れず、細菌性膣炎だと気づかずに治療が遅れてしまうこともあります。
細菌性膣炎は自然治癒するの?検査は必要?
細菌性膣炎の原因は、普段は悪さをしない細菌なので、「時間が経てば自然治癒するのでは?」と考える人もいるかもしれません。しかし、細菌の過剰増殖を抑えるためには、薬を服用する必要があります。放置せず、病院を受診してしっかりと治療を受けてください。
また、おりものの量や外陰部の異常などの症状だけでは、細菌性膣炎なのかどうか特定できません。たとえば、乳白色や黄色っぽいおりものが増えたときは、クラミジアやトリコモナス膣炎などの性感染症にかかっている可能性もあります。
気になる症状があれば、なるべく早く婦人科で検査してもらいましょう。
細菌性膣炎の治療法は?
細菌性膣炎の原因となっている細菌は、必ずしも1種類だけというわけではなく、複数の場合がよくあります。そのため、細菌性膣炎が疑われた場合は、原因菌を突き止めるために婦人科で検査を受けましょう。
細菌性膣炎の治療には、原因となっている菌に対して効果を持つ抗菌薬を使います。一般的に、膣洗浄をしたあと膣に「膣錠」を挿入しますが、炎症が広がっている場合、飲み薬もあわせて服用することがあります。
治療薬の服用期間は、だいだい7~10日間ほどです。治療中は、外陰部を石けんで洗うのは避け、ぬるま湯でやさしく洗って清潔に保ちましょう(※1,2)。
細菌性膣炎を予防するには?
細菌性膣炎の発症を予防するために、デリケートゾーンを常に清潔にしておくことが大切です。生理中、タンポンを長時間入れっぱなしにしていたり、ナプキンをこまめに取り替えなかったりすると、炎症の原因となります。
ただし、デリケートゾーンを石けんで洗いすぎてしまうと、膣が本来持っている自浄作用を低下させてしまうので逆効果。あくまでも適度に洗浄し、通気性の良い下着を身につけるようにしましょう。
また、免疫力が低下しているときに細菌感染しやすくなるので、栄養と睡眠を十分に摂り、疲れを溜めこまないように気をつけてください。
細菌性膣炎は再発に注意しよう
細菌性膣炎は、一度治っても、膣内環境が乱れると簡単に再発してしまいます。最初の発症時に薬を正しく使って治すのはもちろんのこと、治療後もデリケートゾーンを清潔に保ち、日頃からストレスを溜めず、十分な休息を取って体調管理しましょう。
※「膣」という字は医学上正しくは「腟」という字を使いますが、本記事においては一般のみなさまに親しみのある「膣」という字で記載しております。