「めまい」というと貧血が原因というイメージを持っている人もいるかもしれませんが、子供のめまいの多くは別のところに原因があります。そこで今回は、子供のめまいの原因は何なのか、また、子供がめまいを訴えたときは何科の病院で診てもらえばいいのかなどについてご説明します。
めまいとは?
「めまい(眩暈)」とは、風景がぐるぐる回って見えたり、流れているように見えたりする状態のことです。しかし一口にめまいといっても、起きるタイミングや持続する時間などに違いがあります。
例えば、何のきっかけもなく突然起きるめまいもあれば、体を動かしたときに起きるめまいもあります。持続時間が数秒から数分の場合もあれば、数日間に渡って続く場合もあります(※1)。
子供もめまいを感じるの?
「めまいは大人だけがなるもの」というイメージを持っている人もいるかもしれませんが、子供もめまいを感じます。ただし、めまいが起きる頻度は大人よりとても低いと考えられます。
例えば、大阪大学の報告によれば、14年間で4000人以上のめまいを訴える人が付属病院を受診していますが、そのうち15歳未満の患者は1.6%しかいなかったとのことです(※1)。
子供のめまいの原因は?吐き気や頭痛も伴うときは?
子供のめまいは、様々な病気によって引き起こされます。以下では、その一例をご紹介します。
良性発作性めまい
子供のめまいの約20%が、この良性発作性めまいによるものです。ぐるぐる回るような感覚や、回って倒れるような感覚を感じるめまいで、2〜4歳頃に発症することが多く、通常は成長とともに症状が消えます。
原因はよくわかっていませんが、めまいの多くは数秒から数分しか続かず、めまいが起きていない間は特に異常は見られません。
なお、良性発作性めまい患者の53%は家族に片頭痛持ちがおり、患者の21%はこの後に説明する前庭片頭痛を発症しています(※1)。
前庭片頭痛
良性発作性めまいと同じく、子供のめまいの約20%がこの病気によって起きています。発症しやすいのは12歳頃です。
発症すると片頭痛とともに、日常生活に支障をきたすほどの回転するようなめまいや、ふわっと浮くような感覚などが現れます。前庭片頭痛は特に前触れもなく症状が出ることもあれば、頭を動かしたり、目の疲れ、心理的なストレスなどがきっかけとなって症状が出ることもあります。
めまいの持続時間は、短いと数分、長いと数日続くこともあり、場合によりまちまちです(※1)。
起立性調節障害
子供のめまいは起立性調節障害によって起きることもあります(※1)。
この障害は自律神経の異常や水分の摂取不足などによって起き、めまい以外に朝起きにくくなったり、吐き気や倦怠感、動悸などを感じることがあります。10〜16歳頃に発症しやすく、小学生では約5%、中学生では約10%以上の子供が発症しています(※2)。
メニエール病
メニエール病とは、めまいと吐き気の発作が繰り返し起こる病気で、耳鳴りや難聴を伴うことも多くあります。30〜50歳頃にかかりやすいとされていますが、子供でも小学生ごろから発症することがあります(※1,3)。
ムンプス
ムンプス(おたふく風邪)は発熱や唾液腺の腫れ、ものを飲み込むときに痛みを感じたりするウイルス性の感染症で、子供のめまいの原因となることもあります(※1)。また、20,000人に1人の割合で難聴を併発することがあります(※4)。
側頭葉てんかん
てんかんとは、大脳の異常によってけいれんなどが起きる病気で、脳の側頭葉という部分に原因があるてんかんのことを側頭葉てんかんと呼びます(※5)。
側頭葉てんかんは幼児期に見つかりやすく、めまいの後に意識がなくなったり、けいれんのような動きが見られたりする場合は、この病気が原因でめまいを起こしている可能性があります(※1)。
脳腫瘍
稀ではありますが、子供のめまいは脳腫瘍が原因であることもあります(※1)。
脳腫瘍は脳そのものや、脳を包む幕、脳から出ている神経などにできる腫瘍のことです。脳腫瘍は小児がんのなかでは白血病に次いで多く、小児がん患者の5人に1人に相当します(※6)。
子供のめまいは何科で診てもらえばいい?
子供のめまいを診断する方法は医師や病院によって異なると考えられますが、難聴を伴っているかどうかを確認することがあります。そのため、子供がめまいを訴えたらまずは耳鼻咽喉科で診てもらいましょう。
耳鼻咽喉科では、めまいの後に意識を失うかどうか、めまいが急に起きるのか、それとも持続しているのか、あるいは難聴を伴っているかどうかといったことを問診や検査によって確認しながら、子供のめまいの原因を診察してくれますよ(※1)。
子供がめまいを訴えたときの治療法は?
子供のめまいが良性発作性めまいだった場合、その多くは治療を必要としません。しかし、頭痛を伴う場合は鎮痛薬を使います。
子供のめまいが前庭片頭痛によるめまいだった場合、再び前庭片頭痛によるめまいが起こらないように、塩酸ロメリジンが処方されます。片頭痛の症状を抑えるためには、トリプタン製剤やエルゴタミン製剤と呼ばれる薬を使います(※1)。
良性発作性めまいや前庭片頭痛以外が原因のめまいの場合は、めまいを抑えるためというよりも、その病気に対する治療が行われます。
子供のめまいには寄り添う気持ちが大切
めまいを正しく診断するには、詳細な情報が必要です。
めまいは何らかの病気のサインであることも多いので、もし子供がめまいを訴えたら、どういうときにめまいを感じるのか、めまいがどのくらい続いているのかといったことを、ゆっくり丁寧に聞いてあげるか、様子を注意深く観察しましょう。
小さな子供ほど自分の不調をママやパパに伝えるのを苦手としています。子供の心に寄り添いながら、不安な気持ちを受け止めてあげてください。何度もめまいを繰り返したり、他にも症状が見られたら、早めに病院を受診してくださいね。