子供がかかりやすい病気の1つとして、「溶連菌」という名前を耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。正しくは「溶連菌感染症」という名称で、急な発熱や強いのどの痛みに加え、顔や体に発疹が出ることもあります。くしゃみや唾液で人にうつってしまうため、感染の疑いがある場合はできるだけ早く検査をしたいですよね。
今回は、溶連菌感染症の検査について、キットも含めた検査方法や、実施するタイミングについてまとめました。
溶連菌感染症ってどんな病気?
溶連菌感染症の原因は?
「溶連菌感染症」とは、「A群β(ベータ)群溶血性連鎖球菌(溶連菌)」という細菌の感染が原因で起こる病気の総称です。幼児や就学児のあいだで、くしゃみや唾液によって飛沫感染しやすい病気ですが、免疫力が低下している大人や妊婦さんにも感染することがあります。
溶連菌感染症の症状は?
まず、38度以上の発熱、頭痛、のどの痛み、食欲不振、吐き気といった風邪のような症状から始まります。のどがかなり赤く腫れ、舌の表面に「イチゴ舌」と呼ばれるブツブツの赤みができることが多くあります。
発熱から1~2日たつと、かゆみを伴う小さな赤い発疹が全身に現れることがあります。通常は1週間ほどでおさまりますが、そのあと手足の皮膚がポロポロとむけることもあります。
溶連菌感染症の治療法は?
一般的に、溶連菌感染症の治療には抗菌薬が処方されます。服薬によって1~2日ほどで熱は下がり、1週間以内にのどの痛みは緩和されますが、治療をきちんと行わなかった場合、症状が治まって2週間ほどたってから「急性糸球体腎炎」や「リウマチ熱」などの合併症を引き起こす恐れがあります。
溶連菌を完全に取り除くためにも、医師の指示に従って、抗菌薬を7〜10日間飲み続けることが大切です。
溶連菌の検査・診断方法は?
溶連菌に感染しているかどうか検査・診断するには、主に3つの方法があります。どれも基本的には健康保険が適用される検査ですが、費用は病院によって異なるため、詳しくは問い合わせてみてくださいね。
咽頭培養検査
最も確実な方法は、咽頭培養により菌を分離する「咽頭培養検査」です。綿棒でのどの菌を採取し、そのあと専用の容器で細菌を増やしてから顕微鏡で調べます。
メリットとして、溶連菌だけでなく他の細菌感染の有無も調べることができますが、数日~1週間待たないと結果が出ないというデメリットもあります。
溶連菌迅速診断キット
「溶連菌迅速診断キット」を利用する場合も、綿棒でのどの粘膜をこすって菌を採取する必要があります。
5分ほどで結果が出る迅速さがメリットで、感度は80%以上といわれていますが、キットの種類によってその感度はまちまちです(※1)。陰性だった場合に、溶連菌に感染していないとは言い切れないこともデメリットです。
血清抗体検査(血液検査)
リウマチ熱や急性糸球体腎炎を合併していると、咽頭培養によって溶連菌を検出できないため、「血清抗体検査」を行い、溶連菌が産生する毒素に対する抗体(ASO)や酵素に対する抗体(ASK)の数値を測定します。
様々な領域を幅広く診断できる基幹病院などでは溶連菌以外の病気も発見できる可能性があり、結果は30分程度でわかります。
ただし、溶連菌に感染していない健康な人でもある程度の抗体価を示すこともあり、個人差があるため、抗体価の上昇と体に現れている症状を総合的に考えて診断します。
溶連菌の検査はいつから受けられる?
子供が通う保育園や幼稚園、小学校で溶連菌が流行っていると聞くと、「うちの子も感染しているかも?」と、早く検査を受けさせたいと思うパパやママもいるかもしれません。
しかし、インフルエンザなどほかの感染症と同じように、溶連菌にも潜伏期間があるので、そのあいだに検査を受けたとしても、実は感染しているのに「陰性」という結果が出てしまいかねません。
国立感染症研究所によると、溶連菌の潜伏期間は2~5日間です(※1)。確実な検査結果を得るためには、子供が発熱したり、のどの強い痛みを訴えたりするなど、溶連菌感染症の初期症状と思われるものが現れてから検査を受ける方が良いでしょう。
子供が溶連菌に感染!いつから登園・登校できるの?
学校保健安全法における溶連菌感染症の位置づけは、第三種の感染症です。
インフルエンザを含む「第二種」の場合は、保育園や幼稚園、学校の出席停止期間が定められていますが、「第三種」の場合、「病状により学校医その他の医師において感染のおそれがないと認めるまで」としか記載されていません(※2)。
溶連菌感染症に感染すると、高熱が出ているあいだは他人への感染力が強いですが、有効な抗生剤を24時間以上内服すれば、感染力がほとんどなくなるとされています。
ただし地域や学校で流行しているなどの状況を考慮したうえで、判断する必要があります。病院を受診した日から2~3日間は登園・登校を控え、あとは医師の判断を仰ぐようにしてください。
繰り返しになりますが、溶連菌感染症を治療するためには、7〜10日間服薬を継続する必要があります。症状が治まって登園・登校できるようになったあとも、医師に指示された期間は忘れずに薬を飲み続けるよう、特に子供が感染した場合はパパとママがしっかりフォローしてあげてくださいね。
溶連菌の検査を受けるときはタイミングに注意
子供たちのあいだで溶連菌が流行り出すと、親としては自分の子供も感染していないかどうか、心配になりますよね。
しかし、今回お伝えしたように、検査のタイミングが早すぎると正確な結果が得られず、「陰性」と出て安心していたら実は感染していた、ということにもなりかねません。
まずは発熱やのどの痛みなど、初期症状が子供に出ていないかよく観察し、しかるべきタイミングで検査を受けるようにしてくださいね。
また、溶連菌を予防するには、普段から充分な睡眠と栄養ある食事をとり、免疫力をつけておくことと、手洗いやうがいを徹底することが大切です。子供だけでなく大人でも感染する可能性はあるので、家族みんなで感染予防を心がけましょう。