溶連菌は自然治癒できるの?そのまま様子をみて大丈夫なの?

監修医師 小児科 武井 智昭
武井 智昭 日本小児科学会専門医。2002年、慶応義塾大学医学部卒。神奈川県内の病院・クリニックで小児科医としての経験を積み、現在は神奈川県大和市の高座渋谷つばさクリニックに院長として勤務。内科・小児科・アレルギ... 監修記事一覧へ

4~10歳ぐらいの子供がかかることの多い「溶連菌感染症」。子育てをしているなかで、一度は名前を聞いたことがある病気かもしれません。溶連菌感染症は、病院を受診して抗生物質を服用することで治療します。しかしなかには「溶連菌は放っておけば自然に治るのでは?」と思っている人もいるかもしれません。今回は、溶連菌感染症が自然治癒することはあるのか、自然治癒しないのならどんな治療を行うべきなのかについてご説明します。

溶連菌感染症ってどんな病気?

疑問 クエスチョン
そもそも、「溶連菌感染症」とはどんな病気なのでしょうか。ここでは、原因と主な症状、検査方法についてご説明します。

溶連菌感染症の原因

「溶連菌感染症」とは、「A群β溶血性連鎖球菌(溶連菌)」という細菌に感染することによって起こる病気の総称です。溶連菌そのものは、健康な子供の咽頭にも存在する常在菌ですが、体の抵抗力が落ちていたりすると、のどや皮膚に感染します。

くしゃみや唾液によって飛沫感染するので、幼稚園や保育園、小学校で感染しやすい病気です。ただし、免疫力が低下している大人や妊婦さんに感染する可能性もゼロではないので、家族みんなで気をつける必要があります。

溶連菌感染症の症状

溶連菌感染症の初期症状は、38度以上の発熱、頭痛、のどの痛み、食欲不振、首のリンパ節の腫れなど、風邪に似ています。のどがかなり赤くなるので、子供が強いのどの痛みを訴えたら、溶連菌感染症を疑って良いでしょう。

舌の表面にブツブツの赤みができる「いちご舌」の症状が出るのも溶連菌感染症の特徴です。

発熱から1~2日たつと、小さな赤い発疹が顔や体・手足に現れ、かゆみを伴うこともあり、この症状で判断されることもあります。通常は1週間ほどで発疹がおさまりますが、そのあと手足の皮膚がくず状にポロポロとむける場合もあります。

溶連菌感染症の検査・診断方法

一般的に、綿棒でのどの粘膜をこすって細菌を採取し、菌を増やしてから顕微鏡で調べる「咽頭培養検査」が最も確実な診断方法です。

しかし結果が出るまで数日~1週間待つ必要があるため、最近では5分程度で感染の有無がわかる「溶連菌迅速診断キット」が普及しています。

溶連菌は自然治癒するの?

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溶連菌感染症と診断された場合、風邪と同じように自然治癒できるものなのでしょうか?それには病原体の違いから説明する必要があります。

一般的な風邪は「ウイルス感染」によるものです(※1)。ウイルスは、自分自身で増殖する力がありません。また、生きている細胞の中でしか増殖できず、感染しても比較的症状が軽いことが多いのが特徴です。

一方、溶連菌感染症は「細菌感染」によるものです。細菌は構造の中に細胞を持っていて、自分の力で増殖することができるため、感染すると症状が重くなることがあり、こじらせると合併症を起こすリスクもあります。

細菌感染の場合は、細菌の構造を破壊する効果がある抗生物質を使うことができます。感染症の原因となっている細菌を突き止めたら、その細菌にあった抗生物質を服用することが一番の治療法となります(※2)。

溶連菌感染症の初期症状は、確かに風邪と似ているため「病院に行かなくても、しばらく休ませれば大丈夫かな」と思ってしまう人もいるかもしれません。しかしこのように、ウイルスと細菌は似て非なるものです。

溶連菌は、自然治癒することもありますが、治療をしないまま放置しておくと、急性腎炎(明らかな血尿とむくみ)やアレルギー性紫斑病(足に盛り上がったような発疹)などの合併症を起こすことがあります。

他人への感染リスクもあるので、病院を受診して治療することが望ましいといえます。

溶連菌の治療方法は?

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それでは、溶連菌は自然治癒を待たずにどんな治療を行うべきなのでしょうか。

溶連菌に感染していることがわかった場合、小児科や内科でペニシリンなどの抗菌剤(抗生物質)が処方されるのが一般的です。服薬によって1~2日ほどで熱が下がり、発疹もおさまり、1週間以内にのどの痛みがひきます。

そのあと、指先の皮膚がポロポロとむけてくることもありますが、ほとんどの場合、3週間程度でおさまります。

ただし目に見える症状が治ったからといって、油断は禁物です。溶連菌はまだ体内にいる状態なので、医師から処方された抗生物質の量や回数を守り、10日間程度、指示通り服用し続けましょう。

溶連菌感染症が完治する前に、自己判断で薬の服用をやめてしまったり、回数を減らしてしまったりすると、発熱から2~3週間後に、急性腎炎やリウマチ熱、アレルギー性紫斑病などの合併症を引き起こし、治療が長引く恐れもあります。

子供は、体が元気になってくると薬を飲みたがらないかもしれません。しっかり最後まで服用するよう、ママ・パパがフォローしてあげてくださいね。

なお、溶連菌感染症の症状が出ているあいだは、子供にしっかり水分補給をさせるようにしましょう。のどの痛みが強い時期は、のどに刺激を与えない、消化の良い食事を用意してあげると良いですよ。

溶連菌は自然治癒を待たずに病院へ

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溶連菌は、幼児や就学児がよく感染する病気で、風邪に似た症状が出ることから、自然治癒するのではないかと思ってしまう人も少なくないようです。

免疫によって自然治癒することもありますが、無治療の場合には急性糸球体腎炎・リウマチ熱・アレルギー性紫斑病などの合併症が懸念されますので、抗菌薬を服用することが大切です。

薬を飲むことで症状はすぐにおさまってくるものの、体内には細菌がまだ留まっているので、医師に指示された量・回数を最後まで守ってくださいね。

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