「体がだるくて熱っぽい」「基礎体温の高温期が2週間以上続いている」など、妊娠初期症状を感じたとき、ほとんどの人は妊娠検査薬を使って妊娠しているかどうかを確認します。妊娠検査薬を正しく使うと、精度はほぼ100%ですが、一度陽性反応が出た後に生理がくることもあります。今回は、妊娠検査薬が陽性反応を示す仕組みや、陽性が出た後に生理がきたり、再検査で陰性になったりする理由などをご説明します。
妊娠検査薬が陽性反応を示す仕組みは?
妊娠すると、女性の体には様々な変化が起きます。そのうちの1つが、「hCG(human chorionic gonadotropin:ヒト絨毛性ゴナドトロピン)」というホルモンが分泌されることです。
受精卵が子宮内膜に着床すると、hCGの分泌量は徐々に増えていきます。妊娠検査薬は、母体の尿中のhCG濃度を検出することで、妊娠判定をする仕組みになっています。
検査薬による違いはありますが、一般的にhCG濃度が50mIU/mL以上に達していれば「陽性」で妊娠している、それ未満であれば「陰性」で妊娠していないと判定されます。
妊娠検査薬が陽性反応を示す時期はいつから?
一般的な妊娠検査薬は、尿中のhCGの量が「50mIU/mL」以上になると陽性反応を示します。それでは、この濃度に達するのはいつからなのでしょうか?
一般的に、妊娠4週頃から母体の尿中にhCGが現れるようになります(※1)。妊娠4週とは、前回生理開始日から28日後で、生理が28日周期でくる人にとっては、生理開始予定日頃です。
ただし、生理周期やhCG濃度が上昇するスピードには個人差があるため、市販されている妊娠検査薬の多くは「生理開始予定日の一週間後」から使用可能とされています。
それよりも早いタイミングで妊娠検査薬を使ってしまうと、正確な結果が得られず、蒸発線と見間違える可能性もあるので、気をつけてくださいね。
なお、最近では、尿中のhCG濃度が25mIU/mL程度であっても反応する「早期妊娠検査薬」も販売されています。商品によっては、「生理開始予定日より前から使える」と謳われているものも。ただし、精度は落ちるという点は覚えておきましょう。
妊娠検査薬の間違い?陽性でも妊娠していないことがある?
妊娠検査薬は、「尿中のhCG濃度が一定以上に達している」状態であれば、たとえ正常な妊娠ではなくても陽性反応を示すことがあるため、注意が必要です(※1)。
「陽性反応があった数日後にもう一度検査薬を使ったら、今度は陰性だった」ということや、「検査薬が陽性で病院に行ったけれど、胎嚢が確認できなかった」ということも起こりえます。
原因は主に以下のとおりですが、いずれの場合も「一定量のhCGが尿中に存在している」ことには変わりなく、妊娠検査薬が間違いを起こしているわけではありません。
妊娠していないのに検査薬が陽性反応を示すケース
- 不妊治療でhCG注射などの投与を受けている
- 子宮外妊娠(異所性妊娠)が起きている
- 胞状奇胎や絨毛がんなどの絨毛性疾患がある
妊娠検査薬で陽性反応後に生理。陰性に変わるのは間違いなの?
妊娠検査薬は一時的に陽性を示したものの、そのあと生理がきた場合、「化学流産(生化学的妊娠)」を起こした可能性があります。
化学流産とは、一度は受精卵が着床したものの、産婦人科のエコー検査で胎嚢(赤ちゃんを包む袋)が確認される妊娠5~6週より前に流産してしまい、妊娠が継続できなかったものを指します(※2)。
しかし、着床したことでhCGホルモンの分泌は始まるので、妊娠検査薬を使うタイミングによっては尿中のhCG濃度が高くなっており、検査薬が陽性反応を示します。
たとえば、妊娠4週になる前の段階で早期妊娠検査薬を試して、そのときは陽性だったのに、化学流産が起きたためにそのあとは陰性が出た…ということもあり得るのです。
妊娠検査薬のフライングに注意!陰性が陽性に変わる?
一般的に、フライングとは、妊娠検査薬の判定が可能とされている「生理開始予定日の一週間後」よりも前に妊娠検査薬を使用することです。
前述のとおり、早期妊娠検査薬のなかには「生理開始予定日の4日前」に妊娠判定できるものもありますが、タイミングが早いほど精度が落ちるため、必ずしも正しく判定されるとは限りません。
待ちきれずにフライングで検査をしてしまい陰性反応がでた場合でも、日を置いて再検査すると陽性になることもあります。検査結果が確実に出る「生理開始予定日の一週間後」の時期まで落ち着いて待ってくださいね。
妊娠検査薬で陽性反応が出たら、まずは婦人科へ
妊娠検査薬は、ドラッグストアやインターネットで手軽に購入することができ、尿をかけるだけで簡単に検査できるので、頼りになりますよね。ただし、hCGは正常な妊娠以外の場合でも分泌されるので、それに検査薬が反応して陽性反応が出ることもあります。また、陽性反応のあとに生理がきた場合は、化学流産が起こった可能性もあります。
できるだけ正確な判定結果を得るためにも、「生理開始予定日の1週間後以降」に妊娠検査薬を使い、もし陽性反応が出たら早めに産婦人科を受診しましょう。