甲状腺機能低下症とは?妊娠に影響する?不妊の原因になるの?

監修医師 産婦人科医 永瀬 絵里
永瀬 絵里 産婦人科専門医。2001年、東海大学医学部卒業。神奈川県内の病院で産婦人科医としての経験を積み、現在は厚木市の塩塚産婦人科勤務。3児の母。「なんでも気軽に相談できる地元の医師」を目指して日々診療を行っ... 監修記事一覧へ

「甲状腺機能低下症」という病気は、生理不順などで婦人科を受診したときや妊娠中の検査で見つかることもあります。これから妊娠・出産を控えている女性にとっては、不妊や流産、赤ちゃんの発育などの影響が気になりますよね。今回は、甲状腺機能低下症について、妊娠や出産、胎児への影響などを中心にご説明します。

甲状腺機能低下症とは?

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喉仏の下にある甲状腺という臓器では、甲状腺ホルモンが分泌されています。

橋本病など、免疫系の病気が原因で甲状腺ホルモンの分泌が不足しているものを「顕性甲状腺機能低下症」といいます。

また、甲状腺ホルモンの数値は正常でも、脳下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)が高値であるものを「潜在性甲状腺機能低下症」といいます。

甲状腺がうまく機能していないと、不妊や流産、早産、妊娠中の合併症や赤ちゃんへの影響が現れる可能性もあるため、これから妊娠・出産を考えている女性は特に、早めの治療が大切となります(※1)。

甲状腺機能低下症でも妊娠できる?不妊の原因になるの?

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顕性・潜在性ともに、甲状腺機能低下症は不妊の原因になることもあると考えられています(※1)。

まだ明らかになっていない部分もあるものの、これまでの基礎研究では、甲状腺ホルモンは卵巣での卵胞発育や受精、受精卵の発育・着床などに関係しており、甲状腺機能が著しく下がっていると、妊娠しづらくなるという報告もあります(※1)。

ただし、甲状腺機能低下症に対して「レボチロキシン補充」の治療を行い、不足している甲状腺ホルモンを増やすことで妊娠率が上がることもわかっています(※1)。

将来的に妊娠したい人は、かかりつけの医師と相談しながら、妊娠前から甲状腺機能低下症のホルモン治療を進めておきたいですね。

甲状腺機能低下症の妊娠中の症状は?

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妊婦健診の血液検査の結果、甲状腺機能低下症と診断された妊婦さんもいるかもしれません。

妊婦さんに甲状腺機能低下症が見られる確率は0.11~0.16%で、原因のほとんどは「橋本病」という自己免疫疾患です(※2)。

甲状腺機能低下症がある場合、次のような症状が見られ、妊娠中は一時的に症状が軽くなり、産後にまた悪化することがよくあります(※2)。

● 無気力になる
● 動きがゆっくりになる
● 記憶力が下がる
● 汗をかきにくくなる
● 皮膚が乾燥する
● 声が枯れる
● 便秘になる
● むくみや体重増加が見られる
● まぶたがむくんで腫れる
● 寒気がする

甲状腺機能低下症の妊娠中の注意点は?

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甲状腺機能低下症の妊婦さんは、妊娠高血圧症候群という合併症を起こすリスクが高いので、より慎重に妊娠中の体調管理をすることが大切です(※1,2)。

妊娠高血圧症候群が起きると、高血圧による頭痛や蛋白尿、手足のむくみなどの症状が見られます。症状が悪化し、子癇(しかん)発作によるけいれんを起こすと母体と胎児の命に危険が及ぶこともあるため、体調に異変を感じたらすぐにかかりつけの産婦人科を受診しましょう(※3)。

なお、昆布やワカメなどに豊富に含まれるヨード(ヨウ素)を摂りすぎると、甲状腺ホルモンが低下することがあります。食べすぎには気をつけてくださいね。また、ヨードを含むうがい薬も使いすぎないようにしましょう。

甲状腺機能低下症が胎児に与える影響は?

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胎児の甲状腺が機能しはじめるのは、妊娠12週頃(妊娠4ヶ月頃)からです。それまでは、母体から移る甲状腺ホルモンに依存しています(※2)。

そのため、母体に甲状腺機能低下症があり、妊娠初期に甲状腺ホルモンが足りないと、胎児に神経発達障害が起き、知能指数(IQ)が低下する可能性も指摘されています(※1)。

また、甲状腺機能低下症では、流産や早産、胎児発育不全が起きる確率が高いため、内科の内分泌専門の医師と産婦人科の医師が協力して妊婦さんの管理を行うことになります(※2)。

妊娠すると、必要な甲状腺ホルモンの量が1.5倍に増えるため、妊娠がわかってから甲状腺機能低下症と診断された場合はホルモン薬の投与を開始し、妊娠前から治療していた人は服薬量を増やすこともあります(※4)。

甲状腺機能低下症は妊娠中も治療を続けよう

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妊娠前に甲状腺機能低下症とわかり、不妊になるのではないかと心配している人や、妊婦健診の血液検査で甲状腺ホルモンの数値が低いと指摘され、赤ちゃんを無事に出産できるのか不安になっている人もいるかもしれません。

たしかに甲状腺機能に異常があると、妊娠に影響を与えることがありますが、薬による治療で妊娠率が上がり、流産率や妊娠中の合併症リスクが下がることもわかっています。医師の指示に従って適切な治療を受け、母子ともに元気にお産を迎えられるといいですね。

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