出産は、病気や怪我ではないため健康保険や医療保険の対象外となり、たくさんお金がかかってしまいます。しかし、お産がスムーズに進まず、「鉗子分娩」などの処置を行った際は、保険が適用されることがあることをご存じですか?今回は、鉗子分娩を行った際に適用される保険内容についてご紹介します。
鉗子分娩とは?痛みはあるの?
鉗子分娩とは、分娩時に妊婦さんや赤ちゃんに異常があったり、分娩が長引きそうになったりしたときに、料理を取り分けるトングのような専用の器具で、直接赤ちゃんの頭を挟んで引っ張り出す応急処置のことです。
この処置に使う専用の器具の名前が「鉗子(かんし)」なので、鉗子分娩と呼ばれます。
分娩時の応急処置には、帝王切開や吸引分娩などいくつか種類がありますが、鉗子分娩もそのうちの一つです。
鉗子分娩は、赤ちゃんの頭に強い圧力をかけて母体から引っ張り出すため、妊婦さんや赤ちゃんへのリスクはゼロではありません。
妊婦さんであれば産道や尿道、直腸などが傷ついてしまうことがあり、その場合は分娩後に縫い合わせることになります。また、赤ちゃんであれば顔や頭に鉗子の跡がついてしまったり、顔に麻痺が起きたりすることがありますが、どちらも一時的なもので自然に治ることが多いとされています(※1)。
また、鉗子分娩と自然分娩の違いは、赤ちゃんを引っ張り出すかどうかだけなので、自然分娩と同じように痛みを感じます。
また、鉗子分娩では会陰切開を行うため、その前に局部麻酔の注射をしたり、産後に抜糸をしたりすることになります(※2)。こうした処置で痛みを感じることも多いようです。
鉗子分娩は保険が適用される?
お産の経過が順調ではないときに鉗子分娩が行われると、保険の適用対象となります。医師が危険と判断した場合に行われる、医療行為と見なされるからです。
現に、日本産婦人科医会でも「医学的適応のため吸引・鉗子娩出術を行った場合は、保険扱い」と定めており、これに伴って行われる会陰切開および縫合術、会陰裂創縫合術も保険が適用されます(※3)。
ただし、危険な状態ではないものの、安全のために鉗子分娩が行われた場合には、正常分娩とみなされて、保険の適用対象から外されることもあるので注意が必要です。鉗子分娩を行ったあとで、保険が適用されていないことに気づいた場合は、病院に確認を取ってみましょう。
鉗子分娩の費用はいくら?保険の負担額は?
鉗子分娩とそれに伴う裂傷縫合の費用は、医療機関ごとに異なりますが、だいたい、6,000~25,000円ほどが追加料金としてかかるようです。
健康保険が適用されれば、上記の費用のうち3割が自己負担となります(※4)。そのため、この場合は2,000~7,500円ほどが通常の分娩費用に加算されると考えておきましょう。ただしこれはあくまで目安なので、実際の支払い額は事前に病院に確認してください。
また、民間の医療保険に加入していれば、給付金が出る可能性があります。しかし、加入している保険の種類によって金額や適用される範囲が違うので、加入している保険の約款を確認しておきましょう。
出産前、出産後に関わらず不明な点があるときは、保険会社に一度問い合わせてみてくださいね。
鉗子分娩で保険の給付金をもらうには?
民間の医療保険に入っており、鉗子分娩の費用が保険の適用対象である場合は、分娩を行った医療機関に診断書を書いてもらい、それを保険会社に提出しなければならないことがあります。
診断書作成には診断書料が別途かかるのが一般的ですが、保険会社のなかには、これを負担してくれるところもあるようです。
医療保険の給付金と適用範囲は、同じ保険会社でもプランによって違うことがあるので、自分が加入を検討している保険内容、もしくはすでに加入している保険内容がどうなっているのか、保険会社に問い合わせておくと安心ですよ。
鉗子分娩の保険はいつまでに加入するべき?
出産はなにかとお金がかかるので、民間の医療保険の加入を検討している人も多いかと思います。しかし、本当に入った方がいいのか迷ってしまいますよね。
参考になる情報としては、フコク生命が出産経験のある500名のママを対象に行った調査があります。これによると、4割のママが医療保険への加入を「妊娠前にしておいてよかったこと」として挙げています(※5)。
通常、医療保険は妊婦さんも加入できますが、ある程度の妊娠週数を過ぎてしまうと、加入するのが難しくなるとされています。もし医療保険への加入を考えている場合は、パートナーや家族とも話し合い、できるだけ早めに申し込んでおいた方がいいかもしれませんね。
鉗子分娩に備えて心の準備を
鉗子分娩になると、産後は育児だけでなく、お金にまつわるいろいろな手続きが発生し、忙しくなってしまいがちです。鉗子分娩で産むつもりはなくても、お産は何があるかわかりません。
どんな状況にも冷静に対応できるように、鉗子分娩への対処法や、それに対する保険内容、手続きなどを事前に確認し、心の準備だけはしておきたいですね。