自分の基礎体温をつけていて、一般的な基礎体温グラフとのあいだにズレがあると気になりますよね。「低温期が短い」というのもその一つです。今回は、「低温期が短いのは病気なの?」「妊娠しづらくなったりするの?」と心配している人のために、その原因や妊娠への影響についてご説明します。
基礎体温の低温期と高温期とは?
基礎体温とは、運動や食事、感情の起伏など、体温に影響を与える条件を避けて測った体温のことです。
女性が基礎体温を毎日測ってグラフにすると、生理周期によって「低温期」と「高温期」の二相に分かれるのが正常な状態です。基本的に高温期は14日間前後続き、低温期の長さは人によって幅があります。
上のグラフのとおり、生理(月経)初日から排卵までの「卵胞期」には、卵巣のなかで卵胞が発育し、「エストロゲン(卵胞ホルモン)」が分泌されます。この期間は、基礎体温の低温期にあたります。
そして、排卵が起こったあとは、卵胞が黄体へと変化し、妊娠しやすいよう子宮環境を整えるために「プロゲステロン(黄体ホルモン)」が多く分泌されて、次の生理を迎えるまで高温期が続きます。
「低温期が短い」状態とは?正常な長さは?
前述のとおり、高温期の長さは約14日間です。正常な生理周期は25~38日のあいだなので、低温期は11~24日くらいであれば正常と考えられます(※1)。
低温期は、卵胞が発育していく期間にあたるため、「低温期が短い」ということは、下記2つの状態のどちらかであるといえます。
- 卵胞の発育が不十分なまま高温期を迎えている
- 卵胞が発育するスピードが速い
いずれにせよ、低温期が短くなると、生理周期全体が短くなるため、基礎体温をつけていない人でも「生理が早く来た」と自覚するようになります。
低温期が短い原因は?妊娠への影響は?
それでは、どのような原因で低温期が短くなるのでしょうか?
前述の二つの状態それぞれについて、考えられる原因をご説明します。
卵胞の発育が不十分である
過度なストレスや急激な体重減少、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)などが原因で、脳下垂体や視床下部が機能障害を起こすことがあります(※1)。
この結果、卵胞刺激ホルモンがうまく分泌されず、卵胞期(つまり低温期)が短くなり、卵胞が十分に発育しないことがあります(※1)。
この状態を放置してしまうと、排卵が起こらなくなる「無排卵月経(無排卵周期症)」となり、不妊につながる恐れがあるので注意が必要です。
卵胞が発育するスピードが速い
女性は、生まれた時点で一生のうちに排卵する卵子の数が決まっていて、年齢が上がるにつれてだんだんと体内の卵胞が少なくなっていきます。
特に40歳くらいを過ぎると、卵胞の数が急減し、それに伴って血液中の卵胞刺激ホルモンの濃度が急激に上昇することがわかっています(※2)。
卵胞刺激ホルモンの分泌が過剰に増えることで、卵巣のなかにある卵胞の発育スピードが速くなり、排卵までの期間(つまり低温期)が短くなります(※3)。
このように、閉経が近くなると、低温期が短くなるのは自然なことといえます。
ただし、40歳未満の若い女性でも「早発卵巣不全(早発閉経)」になると、同じ現象が起こることがあります。排卵や生理が止まってしまうと妊娠できなくなる恐れがあるため、早めの治療が必要です。
低温期が短いときは病院へいくべき?
低温期が短くなると、生理周期も短くなります。医学的には、生理周期が24日以下の場合、「頻発月経」とみなされ、治療の対象となります。
ただし、生理周期は環境の変化や体調などによっても左右されるものなので、一時的に生理が早まっただけであれば大きな心配はありません。
「これまで特に生理不順ではなかったのに、今回は24日以内に生理が来た」という場合、基礎体温を記録しつつ、次の生理周期まで様子を見ましょう。
もし、「生理周期が24日以下で、そのうちの低温期が11日より短い」ということが何周期か続いた場合には、婦人科を受診してください。
低温期が短いときの治療法は?
治療方法は原因によっても異なりますが、排卵誘発剤を使用して卵胞の成長や排卵を促したり、低用量ピルなどによるホルモン療法で、人工的に生理周期を整えたりするのが一般的です。
なお、低用量ピルの服用中は妊娠できないので、早めに妊娠を希望する女性は婦人科医に治療法を相談しましょう。
低温期が短いときは早めに婦人科で相談を
基礎体温を毎月つけていて、低温期がいつもより短いことに気づくと、不安になるかもしれません。一時的なものであれば大きな問題はありませんが、もし低温期が短い周期が何度か続くときは、基礎体温の記録を持って婦人科を受診しましょう。
生理周期には個人差がありますが、極端に短い場合、不妊につながる何らかの異常が隠れている可能性もあります。できるだけ早めに検査を受け、必要であればすぐ治療を始めてくださいね。