「想像妊娠」は、実際には妊娠していないのに妊娠したかのような症状が現れる状態をいいます。気持ちに反応して体が変化するのは、不思議なことですよね。でも、一体なぜ、想像妊娠が起こるのでしょうか?今回は、想像妊娠の原因や症状、妊娠検査薬の反応、治療法はあるのかについてご説明します。
想像妊娠とは?
想像妊娠とは、妊娠していないにも関わらず、妊娠初期症状のようなものが現れる状態です。
別名「偽妊娠(ぎにんしん)」とも呼ばれ、まれにお腹が大きくなる女性もいます。
想像妊娠の原因は?
想像妊娠の詳しいメカニズムは、まだ明らかになっていません。
一説には、「赤ちゃんが欲しい」という強い願望や、逆に「妊娠したくない」という大きな不安と恐怖によって精神的に不安定な状態になり、ホルモンバランスが大きく変わることによって、本当に妊娠したかのような症状が現れるのではないか、と考えられています。
想像妊娠は、もともと神経質である、妊娠に焦りを感じている、過去に流産経験などで妊娠できるか強い不安がある、絶対に妊娠したくないと思っている、といった人に多く見られるともいわれています。
想像妊娠の症状とは?つわりやおりものは?
妊娠に対して強い願望や不安があることで、体にも変化が現れるとされる想像妊娠。一例として、次のような症状が現れることがあるとされます。
● 生理が遅れる、止まる
● おりものが増える
● 微量の不正出血がある
● 吐き気や嘔吐がある
● 胸やお腹が張る
● 乳首に黒ずみが見られる
● 母乳が出る
● 食欲不振や強い眠気がある
これらのほとんどが、妊娠初期症状と似ていますよね。実際には妊娠していないにもかかわらず、このような症状が見られることがあるのはなぜでしょうか?
たとえば、「妊娠したい」という強い願望や、「妊娠したらどうしよう」という不安があるときに、生理がいつもより遅れていると「妊娠したかも」と感じ、その期待や焦りによってさらに生理が遅れるということもありえます。
また、「妊娠したかも」と思っている時期に吐き気があると「これはつわりだ」と思いこんでしまう、ということがあるようです。
思いこみが先で、体の反応がそれに続く、というのは不思議な感じもしますが、女性の体は私たちが思っている以上にデリケートなのかもしれませんね。
想像妊娠で、妊娠検査薬は陽性になるの?
想像妊娠で妊娠検査薬が陽性反応を示すことはありません。
妊娠検査薬は、妊娠後に分泌されるhCGというホルモンを感知して陽性・陰性を判定するものなので、実際に妊娠が成立していない想像妊娠の状態では、陰性しか出ません。
検査薬が陽性…想像妊娠ではなく化学流産?
まれに、妊娠検査薬で一度陽性が出たけれど、病院に行ったら妊娠が確認できなかった、ということもあります。
これは単なる想像妊娠ではなく、一度は本当に妊娠したものの、エコー検査で赤ちゃんを包む胎嚢(たいのう)という袋が確認される前に「化学流産(生化学妊娠)」が起きた可能性も考えられます(※1)。
胎嚢は、妊娠5~6週以降であれば確認できることがほとんどです。早期妊娠検査薬などでそれよりもかなり早い段階で妊娠に気づき、そのあと赤ちゃんが育たなかった(化学流産が起きた)場合、産婦人科でエコー検査を受けても妊娠が確認できない、ということもありえるのです。
化学流産は、検査薬の技術が進んだことよって認識されるようになった現象であり、精神的なストレスから来る想像妊娠とは異なるものだといえます。
想像妊娠をすると、基礎体温はどうなる?
通常、基礎体温は排卵後に上昇し、低温期から高温期に移ります。
受精卵が着床し、妊娠が成立すれば高温期はその後も継続し、上のグラフのような状態になります。
しかし、想像妊娠の場合、実際には受精卵の着床が起きていないので、高温期は2週間ほどで終わり、やがて生理が来ます。
「いつもより高温期が長い」「生理が遅れている」といった場合でも、まずは落ち着いて、生理予定日を1週間過ぎてから妊娠検査薬を使ってみましょう。
ただし、「高温期が2週間以上続いているのに妊娠検査薬は陰性」という場合には、想像妊娠ではなく、ホルモン分泌に何らかの異常がある可能性もあります。自分の基礎体温の記録を持って、婦人科を受診してくださいね。
想像妊娠の治療方法は?
想像妊娠は病気ではないので、「治療」する方法はありませんが、以下のような方法で症状がなくなると考えられます。
妊娠検査薬やエコー検査で明確に否定する
多くの場合、妊娠検査薬の陰性反応を自分の目で確かめたり、産婦人科のエコー検査を受けて医師から「妊娠していません」と明確に伝えられたりすることで、本人が納得でき、想像妊娠の症状も治まるとされます。
精神的なストレスを取り除く
「妊娠したい・したくない」という強い気持ちが、知らず知らずのうちにストレスになっている可能性があるため、自分の願望や不安を自覚し、それをやわらげることで、症状も自然になくなることがあります。
自分ひとりで不安な気持ちを抱えず、パートナーに打ち明けたり、心療内科などで専門医に相談したりすることで、気持ちが楽になることもありますよ。
ホルモンバランスを整える
過度なストレスでホルモンバランスが乱れると、生理不順が起きることもあります。
妊娠を望んでいない人は、いつもどおり生理が来ないと「妊娠してしまったのではないか」と不安になり、それがさらに生理の遅れにつながって想像妊娠の症状を引き起こす…という悪循環に陥りかねません。
婦人科で低用量ピルを処方してもらい、適切に使うことで、ホルモンバランスが整うだけでなく、ほぼ確実に妊娠を防げるので、想像妊娠の可能性が少なくなります。
妊娠したいと考えている人は、ピルではなく、栄養バランスのとれた食事や十分な睡眠、適度な運動などを心がけ、うまくストレスを発散させることでホルモンバランスを整えていきましょう。
リラックスして想像妊娠を予防しよう
「妊娠したかも」と思いこむことで、体の状態まで変化することがある、というのは不思議な感じがしますね。思わぬ症状に振り回されないためにも、妊娠検査薬を使える時期まで落ち着いて過ごしましょう。
焦りや不安を完全に取り除く、というのはなかなか難しいですが、少しでもリラックスできる時間を持つことで、日々を少しでも穏やかに過ごせるといいですね。