望まない妊娠を避けるときに、避妊薬として「低用量ピル」が使われることもあります。低用量ピルには避妊効果があるだけではなく、生理不順や婦人科系の症状緩和にも効果を発揮することがあります。今回は低用量ピルについて、その避妊効果や生理への影響、ピルの値段などをご紹介します。
低用量ピルとは?
低用量ピルとは、いわゆる「経口避妊薬(OC)」のことです。妊娠を望まない女性が適切に服用することで、性交渉による妊娠を防ぐことができます。また、後ほどご説明するように、生理不順や婦人科系の症状緩和など避妊以外の効果もあります。
コンドームと比べると、低用量ピルの方が避妊効果が高く、女性の意思で避妊できるというメリットがあります。
低用量ピルの避妊効果は?
低用量ピルを正しく使えば、ほぼ100%避妊できます。なぜなら、低用量ピルは次の3つの作用によって妊娠を防ぐことができるからです(※1)。
1. ゴナドトロピン(性腺刺激ホルモン)を抑える
低用量ピルには「エストロゲン(卵胞ホルモン)」と「プロゲステロン(黄体ホルモン)」という2つの女性ホルモンに似た成分が配合されています。服用することで、「女性ホルモンが十分に分泌されている」という信号が脳に送られ、「妊娠した」と認識されます。
その結果、脳下垂体から分泌される2つの「ゴナドトロピン」(FSHとLH)の分泌が低下し、卵胞の発育と排卵が抑制されます。
2. 子宮内膜の増殖を抑える
低用量ピルの服用により、血液中に多くのプロゲステロンが補われるため、エストロゲン作用がうまく働かず、子宮内膜の増殖が抑えられます。
子宮内膜は本来、エストロゲン作用で厚くなり、受精卵の着床を助けますが、増殖が抑えられることで着床しにくい(妊娠しにくい)状態になります。
3. 子宮頸管粘液を変化させる
プロゲステロンの作用により子宮頸管粘液の粘り気が増し、精子が通過しにくい状態となることも、低用量ピルの避妊効果を高めます。
低用量ピルで生理をコントロールできる?
低用量ピルを服用することで、エストロゲンとプロゲステロンの作用が補われるため、避妊以外の様々な目的で処方されることもあります(※1)。
1. 生理周期を整える
低用量ピルを飲み続けることで、毎月決まったタイミングで生理が来るようになるため、生理不順が見られる場合に処方されることがあります。
2. PMSや生理痛が軽減される
生理のたびに月経前症候群(PMS)や生理痛、月経困難症に悩まされている人も多いと思いますが、低用量ピルを服用することで、頭痛や腹痛などの不快症状が軽減されることが期待できます。
3. 婦人科系の病気のリスクが下がる
先ほど触れたとおり、低用量ピルにより子宮内膜の増殖が抑えられるため、子宮内膜症の症状が緩和されます。
また、プロゲステロンに比べてエストロゲンの作用が強すぎる状態が続くと、子宮体がんの発生リスクが上昇しますが、低用量の服用により発生率が抑えられるというメリットもあります。
そのほか、線維腺腫などの良性乳房疾患や、卵巣がんの発生リスクを下げる効果もあります。
低用量ピルには副作用もあるの?
これまでご説明してきたとおり、避妊やその他の効果が期待される低用量ピルですが、副作用もあります。
副作用の症状や程度には個人差がありますが、特に飲み始めて1~2週間くらいまでは、吐き気を感じる人や不正性器出血が見られる人もいます。下痢や腹痛、便秘など、消化器系の副作用を感じることもあります。
副作用の多くは低用量ピルを適切に飲み続けることで治まっていきますが、症状がつらいときは医師に相談してください。まれに血栓症などの重い副作用が出るリスクがあるため、副作用が現れたときはしっかりと様子を見ましょう(※2)。
また、非常にわずかではありますが、子宮頸がんや乳がんが発症するリスクもあるため、低用量ピルの服用中は定期的にがん検診を受けることをおすすめします。特に子宮頸がんは、5年以上の長期に渡って服用している場合、注意が必要です(※3)。
低用量ピルの種類は?
低用量ピルには、大きく分けて「一相性」「二相性」「三相性」という3つの種類があります。ピルに含まれているホルモンの配合量の違いで分類されています。2017年現在、日本で販売されているのは一相性と三相性の低用量ピルです。
一相性の低用量ピルは、1シートに含まれるピルのホルモン含有量がすべて同じなので、どの順番で飲んでも構いません。
三相性の場合、自然のホルモン分泌に合わせて、ホルモン含有量を段階的に変化させているのが特徴です。そのため、避妊効果を得るためには、あらかじめ決められた順序でピルを飲む必要があります。
なお、低用量ピルには「21日タイプ」と「28日タイプ」がありますが、避妊効果のある実薬を21日間飲むという点では共通しており、得られる効果も同じです。
低用量ピルの値段は?通販でも買える?
低用量ピルは、月経周期28日分を1シートとして婦人科で処方してもらえます。一般的な低用量のピルの値段は1シート2,000~3,000円程度です。
また、最初に処方してもらうときは初診料がかかり、その後も再診料や処方料がかかってきますが、病院によって金額などが異なるため、事前に確認しましょう。
なお、ネット通販で低用量ピルを買うルートもありますが、基本的に自己責任での購入となります。有効成分が含まれていない偽商品を購入してしまったり、予期せぬ副作用が出てしまったりした際に、医師が対応できない可能性もあり、注意が必要です。
ネット通販が必ずしも悪いというわけではありませんが、安全に確実に避妊効果を得るのであれば、婦人科を受診して処方箋を受け取ったうえで低用量ピルを処方してもらいましょう。
低用量ピルを正しく飲んで避妊しましょう
低用量ピルはコンドームなどに比べると金銭的な負担は大きいものですが、きちんと利用していればほぼ100%避妊効果を得ることができます。また、婦人科系の病気の症状緩和も期待できます。
避妊効果を得るには、飲み忘れのないように正しく服用する必要があります。医師の指示に従い、用法・用量を守って服用してください。