昼間はおしっこもうんちも1人でできるのに…なかなかなくならないのは、夜のおねしょ。毎朝広げられる世界地図を前に、困り果てているママも多いのではないでしょうか。5~6歳をすぎても治らない場合、「夜尿症」かもしれません。今回は、子供の夜尿症の原因と対策、治療法についてご説明します。
夜尿症とは?おねしょとの違いは?
夜寝ている間に無意識で排尿をしてしまう「おねしょ」は、おむつを外した乳幼児によく見られ、小学校入学前の6歳頃まで続く場合もあります。
まだ未就学児であれば、おねしょをするのは発達の過程で見られる生理的な現象であり、だんだんと排泄のコントロールを覚えていくので、過度に心配する必要はありません(※1)。
ただし、小学校に上がるくらいの年齢を過ぎても、週に2~3回以上おねしょが続く場合には、「夜尿症」と呼ばれるようになり、治療の対象として考えられます。大半は、子供が成長するにしたがって治りますが、なかには大人になっても続くことがあります(※2,3)。
夜尿症の原因は?
排尿の仕組みとは?
人間の体には、排尿を調整する仕組みがあります。膀胱に尿がたまると、その情報が脳に伝わって尿意が生まれます。しかし、「今は排尿してはいけない」と脳が判断すれば、尿道を締めて尿が漏れないようにしてくれています。
睡眠中は自分の意志で判断できないので、睡眠中にバソプレシンという抗利尿ホルモンをたくさん分泌して、尿が漏れないようにしています。尿を濃くして水分量が多くならないようにすることで、夜間中の尿を膀胱内にとどめておくことができるのです。
子供のおねしょの原因は?
子供の膀胱は、5~6歳になると尿を長時間ためておくのに十分な大きさになります。また、膀胱の大きさが安定してくるにしたがって、夜間の尿量も減ってきます。
しかし、まだ年齢の低い子供の場合、膀胱が小さかったり、尿をコントロールするホルモンの分泌不足などが原因で夜間の尿量が多かったりすると、おねしょをしてしまうことがあるのです。
子供の夜尿症の原因は?
5~6歳をすぎてもおねしょが続く夜尿症の場合、次に挙げる様々な原因が組み合わさっていると考えられます(※1)。
・膀胱が年齢相応の大きさよりも小さい
・膀胱に尿をためる力が弱い
・先天的な泌尿器科の疾患がある
・強いストレスによって神経の働きが鈍い
ちなみに、夜尿症の子供の割合は、男の子と女の子でおよそ2:1です(※1)。
夜尿症は自然に治るの?
最初に触れたとおり、乳幼児のおねしょは生理現象であり、成長していくにつれて頻度は減っていくことが多いため、あまり心配はいりません。子供の成長は個人差が大きいので、パパやママが広い心で見守ってあげましょう。
ただし、5~6歳を過ぎて夜尿症が見られる場合、何らかの身体的要因がある可能性もありますし、本人の心理的ストレスも大きくなっていきます。
また、1年間で夜尿症が自然治癒する確率が10~15%であるのに対して、適切に診断・治療を行った場合の治癒率は約50%というデータもあり、小学校入学の段階で積極的に治療を始めることが推奨されています(※1)。
夜尿症対策!生活習慣を見直そう
子供の夜尿症対策として、まずは生活習慣を見直してみましょう。次のような対策を試してみてください(※1)。
規則正しい生活を送る
早寝早起きで、昼間はしっかり体を動かす、という規則正しい生活をしていると、自律神経が整えられて夜の抗利尿ホルモンの分泌量が増えます。
生活リズムが崩れると、睡眠不足になったり、成長ホルモンの分泌が妨げられたりして、夜尿症以外にも様々な悪影響が出てしまいます。
水分・塩分を摂りすぎない
水分を多く摂取してしまうと、子供の膀胱の容量を超えてしまい、夜間の尿量が増えます。また、味の濃い食事やスナック菓子などで塩分を摂取しすぎると、喉が渇いて水分を摂取したくなるので、できるだけ控えるようにしましょう。
ただ、夜に排尿してしまうことを心配して水分摂取量を制限しすぎると、脱水症状を招く危険性があります。健康を害さない程度で、夜寝る1~2時間前からは水分を摂らないように注意してくださいね。
体を冷やさないようにする
体が冷えると、眠っている間に排尿しやすくなってしまいます。手足が冷たかったり、しもやけができやすかったりする子は、特に注意しましょう。また、夏のエアコンのつけすぎも、冷えの原因となります。
普段から暖かい服装をさせるように心がけ、寝る前はお風呂に入って体を温め、寝室や寝具を湯たんぽで温めておくなど、冷え対策を十分にしてあげてください。
寝る前にトイレに行く
夜、布団に入る前にトイレでおしっこをする習慣をつけましょう。
ただし、寝ている子供を起こしてトイレに行かせてしまうと、夜間の抗利尿ホルモンの分泌が減り、かえって夜尿が多くなってしまいます。
おしっこを我慢する訓練をする
膀胱の容量が小さかったり、尿をためておく機能が弱かったりする場合は、家で子供が尿意を感じたときに、排尿をぎりぎりまで我慢する訓練をするよう、医師から指示を受けることもあります。
この排尿を抑制する訓練を続けることで、夜間の膀胱容量がだんだんと広がり、夜尿症が改善していきます。
夜尿症を薬で治療することもあるの?
上で説明したような生活習慣の改善で効果が見られないときや、夜尿症が重症の場合は、薬物療法を実施することもあります。
たとえば、三環系抗うつ薬や抗利尿ホルモンを鼻の中にスプレー噴射する方法などがありますが、食欲がなくなる、だるさを感じるといった副作用が出ることもあるので、医師の指示に従って適切に薬を使う必要があります(※1)。
また、夜間に膀胱が尿をためておく力が少ないケースだと、尿が少し漏れるとアラームが鳴る「アラーム療法」を行うこともあります。
ただし、先ほども触れたとおり、寝ている子供を完全に起こしてしまうと夜尿が増えてしまう可能性があるので、アラームを子供が自分で止めたあとは、トイレに行かせず、すぐに寝かせることが鉄則です(※1,2)。
夜尿症は早めに対策と治療を
おむつが外れたばかりの時期にはよく見られるものの、小学校に上がるくらいまでには自然に治ることも多いおねしょ。未就学児の場合、おねしょはよくあることだと考えて、焦らず、叱らず、あたたかく見守ってあげましょう。
ただし、小学生以降の夜尿症は、神経系の障害や強いストレスなどの原因も考えられます。5~6歳を過ぎても週に何回かおねしょをする場合は、一度小児科や泌尿器科を受診しましょう。
学校の宿泊行事が始まると、子供自身にとっても大きな悩みになりますので、できるだけ早めに対処してあげるようにしてくださいね。