弛緩出血とは?原因や治療法は?二人目の出産でも起こるの?

監修医師 産婦人科医 山本 範子
山本 範子 日本産科婦人科学会専門医。平成5年、日本大学医学部卒。日本大学附属病院および関連病院で産婦人科医として経験を積み、その間に日本大学総合健診センターで婦人科検診にも力を注いできました。現在は港区の日野原... 監修記事一覧へ

お産が終わった後でも、通常、2時間程度は分娩室で過ごします。それは、母体トラブルが起こりやすく、万が一のときでも迅速に対応できるようにするためです。このときに起こる母体トラブルの一つに「弛緩出血」があります。今回は弛緩出血の原因や症状、治療法のほか、二人目を出産するときに影響があるのかどうかについてご説明します。

弛緩出血とは?

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「弛緩(しかん)出血」とは、胎児が産まれてから胎盤の取り出しが完了するまでの「分娩第三期(後産期)」、または胎盤が取り出されたあとに見られる異常出血のことです。

赤ちゃんがお腹から出てきたあとに胎盤が排出され、胎盤の剥がれた箇所から多少の出血が起こるのは普通のことです。正常な状態であれば、空っぽになった子宮が急速に収縮し、胎盤が剥がれたところの血管内に血栓が作られることで、出血が止まります。

ところが、何らかの原因で子宮がうまく収縮できなかったり、血栓の形成が妨げられたりすると、弛緩出血が起きてしまうのです。

弛緩出血の症状は?

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弛緩出血を起こすと、やわらかい状態の子宮から暗赤色の血がダラダラと出続けます。子宮の中に血液や血の塊が溜まってしまい、子宮底が圧迫されると、血液が噴出することもあります。

出血量が多いと、貧血やショック症状を引き起こし、「播種性血管内凝固(DIC)」という状態になることがあるので注意が必要です。

DICを起こすと、血が固まりにくくなってしまうためさらに出血傾向が強まり、子宮収縮も止血もうまくいかなくなってしまいます。場合によっては、輸血が必要となることもあります。

ただし、大量に出血するといっても痛みはほとんどなく、出産直後のママが自覚するのは難しいとされています。そのため、出産後に医師が出血量や子宮の収縮状態のチェックを数回行って、500mlを超える出血があったり、子宮が軟らかくて収縮の状態が悪かったりすると弛緩出血が疑われます。

弛緩出血の原因は?

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弛緩出血の主な原因は、次に挙げる2つです(※1)。

子宮筋が疲労している

子宮の筋肉が疲れ切ると収縮できなくなります。子宮筋は、お産が長引いたり、巨大児や多胎妊娠(双子や三つ子)、羊水過多などで子宮が伸びすぎたりすることで、疲労を起こします。

また、子宮筋腫や子宮奇形などの病気、子宮収縮薬の影響なども考えられます。

子宮内で炎症や感染が起きている

お産後、胎盤や卵膜の一部が正常に排出されずに子宮内に残っていると、炎症や細菌感染を起こすことがあり、子宮の収縮が妨げられてしまいます。

弛緩出血の治療法は?

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弛緩出血が疑われる場合は、まず子宮内の触診が行われ、子宮収縮と止血を促すための処置が次の手順で一つひとつ行われます(※1)。

1. 子宮内の残留物の除去

触診の結果、子宮内に胎盤などが残っていると判断された場合は、残留物を除去すれば出血は止まります。

ただし、胎盤が癒着を起こしていると、胎盤を剥がすときに大量に血が出るため、注意を払って処置されます。

2. 子宮収縮薬の投与・子宮圧迫・マッサージ

子宮収縮薬を投与する、腟内に手を挿入して子宮を直接圧迫する、お腹に手を当てて円を描くようにマッサージする、といった方法で子宮収縮を促します。

これらの方法で止血する場合、子宮筋の疲労が原因であったことがわかります。

3. 子宮内バルーンタンポナーデ

バルーンを子宮に挿入し、生理食塩水などを注入してバルーンをふくらませ、子宮の中を圧迫して止血します。

この「子宮内バルーンタンポナーデ」という方法は、体が傷つきにくく、子宮内の下部をむらなく圧迫できるという特長があります。

4. 抗DIC療法

DICは、血液を固める「凝固作用」と固まった血液を溶かす「線溶作用」が同時にランダムに起こる難しい病気です。

DICの治療が必要だと判断された場合、抗凝固剤と凝固剤の両方を適切に補充しながら止血を図ります。また、DICで消費されて減少していく血液成分を、血小板製剤や新鮮凍結血漿製剤などの薬で補う「補充療法」が行われることもあります(※2)。

5. 開腹手術など

ステップ1~4までの治療法で効果が見られなかった場合、カテーテルを入れて血管を閉じる「TAE(経カテーテル的動脈塞栓術)」などの処置を行うこともあります。

それでも止血できない重症のケースだと、開腹手術によって子宮を摘出することもあります。

弛緩出血は二人目の出産でも起こる?

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一人目の出産で弛緩出血があった場合、「二人目のときにも同じことが起こるの?」と心配になる人もいるかもしれません。

もし、体質や病気によって子宮収縮がしにくかったり、血液凝固作用が弱かったりする人の場合、二人目以降の出産でも弛緩出血が起きることもありえます。しかし、先ほどご説明したとおり弛緩出血には様々な原因があるため、一概には言えません。

「一人目で弛緩出血があったため、二人目のときもなる可能性があると医師から言われた」という人もいれば、「二人目を生むときは全く問題がなかった」という人もいます。

二人目以降を妊娠したら、念のため主治医に「過去の出産で弛緩出血が起きた」ということを伝えておきましょう。

弛緩出血は分娩トラブルの一つ

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ただでさえ痛みを伴う出産のあとに、大量出血するかも…と聞くと不安になってしまうかもしれませんが、弛緩出血は分娩時にたまに見られるトラブルの一つです。万が一起こってしまっても、病院できちんと治療してもらえば予後は良好なことが多いので、医師を信じてお産に臨みましょう。

また、過去に弛緩出血を経験した人は、二人目以降の分娩時に医師が注意しておけるよう、事前に伝えておいてくださいね。

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