近年、「アトピー性皮膚炎」を発症する子供は増加傾向にあります(※1)。しかし、患者数が多いにもかかわらず、その実態についてはあまり知られていないのが現状です。アトピーという言葉に、不安になってしまうママやパパもきっといることでしょう。今回はアトピー性皮膚炎について、原因や症状、治療法、ホームケア方法などをご紹介します。
子供のアトピー性皮膚炎とは?
子供のアトピー性皮膚炎とは、皮膚の乾燥とかゆみを伴う湿疹が現れる皮膚の病気で、症状が良くなったり悪くなったりする状態を繰り返します。
早い場合だと生後2〜3ヶ月頃から症状が現れはじめますが、乳児期のアトピー性皮膚炎は、乳児湿疹と見分けがつきにくいです。
子供がアトピー性皮膚炎を発症する原因は?
生まれつきアトピー性皮膚炎になりやすい体質の場合、食事をとおして食物アレルゲン(特にタンパク質)や、皮膚をとおして環境アレルゲン(ハウスダストやダニなど)が体内に取り込まれたとき、過敏に反応してアトピー性皮膚炎を発症すると考えられています(※2)。
また、肌が乾燥して引っ掻いたり、汗や服の素材などから刺激を受けることで、皮膚のバリア機能が低下することもアトピー性皮膚炎の原因です。
親や兄弟がアトピー体質だと、遺伝して赤ちゃんがアトピー性皮膚炎を起こす可能性がありますが、家族の誰かがアトピー体質だと、生まれてくる赤ちゃんが必ずアトピー性皮膚炎を起こすというわけではありません。
子供のアトピー性皮膚炎の症状は?
子供は成長するにつれて肌の皮脂分泌量が変化するため、アトピー性皮膚炎の症状は年齢によって異なります。
1歳頃までに起こるアトピー性皮膚炎だと、主に顔や首まわり、背中、脇の下、ひじの裏側などに赤い湿疹が現れます。また、耳のつけ根のところがただれて切れたようになる「耳切れ」が起こるのも特徴です(※3)。
2~10歳頃のアトピー性皮膚炎では、主に手足の関節の内側や首、耳たぶなどに、肌の乾燥とかゆみを伴った湿疹が見られます。
子供のアトピー性皮膚炎の診断は?
日本皮膚科学会の「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2016年版」によると、次の症状を見て、アトピー性皮膚炎の診断を下します(※4)。
・かゆみがある
・左右対称に湿疹ができている
・乳児期では2ヶ月以上、その他では6ヶ月以上湿疹が続いている
乳児期のアトピー性皮膚炎と混同しやすいものに、乳児湿疹があります。乳児湿疹は皮脂分泌量の変化によって起こる乳児期の湿疹で、肌を清潔にして保湿していれば、自然と治まっていきます。
乳児期の子供に湿疹が見られ、清潔と保湿を心がけたスキンケアを行っても症状が改善しない場合は、アトピー性皮膚炎を疑いがあります。
子供のアトピー性皮膚炎の治療法は?
現状では、アトピー性皮膚炎を根本的に治療する方法はなく、症状に合わせて、ステロイド外用薬や非ステロイド外用薬、保湿薬、かゆみ止めの服用薬を使って治療するのが一般的です。
アトピー性皮膚炎の症状がひどいときは、引き起こしている原因の物質(アレルゲン)を調べる検査を行うことがあります。
0~1歳の子供のアトピーは、卵や牛乳、小麦など食物によるアレルギーが原因で起こっていることがあり、アレルギー検査によってアレルゲンが判明した場合は、それらの食べ物の制限と摂取方法を医師から指導されることがあります(※3)。
症状が現れる部位によって、薬の塗り方が少し異なるため、処方された際は医師に確認しておきましょう。たとえば、頭皮にできた場合は、髪に守られて薬が落ちにくいので1日1回でも良いのですが、顔にできた場合は、常に空気に触れて乾燥しやすいので、何度も塗る必要があります(※2)。
子供のアトピー性皮膚炎のホームケア方法は?
アトピー性皮膚炎を発症した場合、医師の指示に従って治療を行いながら、家でも悪化させないようにケアすることが大切です。
子供は患部がかゆくて、かき壊してしまうことがあるので、普段から爪を短く切っておきましょう。
また、肌を清潔に保てるように、汗をかいたらシャワーで洗い流したり、絞った濡れタオルで拭いたりしてあげてください。入浴の際には、子供用の低刺激の石鹼をよく泡立てて、ガーゼや手で優しく洗います。そして、ぬるめのシャワーで洗い流してください。
空気が乾燥する冬は湿度を50~60%に保ち、お風呂あがりの保湿もしっかり行いましょう。そして、肌を刺激する可能性があるダニやホコリを取り除くために、部屋はこまめに掃除し、寝具は天日干しして、取り込んときに掃除機でダニの死骸などを吸い取ります。
子供のアトピー性皮膚炎は根気強く治療していこう
アトピー性皮膚炎は、良くなったり悪くなったりを繰り返す病気で、頑張ってケアしていても、悪化してしまうことがあるかもしれません。
しかし、アトピー性皮膚炎の7~8割は思春期までに治まっていきます(※3)。悪化したように見えても、治っていく途中だと考えて、根気強く治療に取り組んでいけるといいですね。まずは保湿剤のみでのケアをゴールとして、対応していきましょう。