生まれたばかりの赤ちゃんに起こり得る症状のひとつに、血液中の糖分が少ない「低血糖」があります。新生児に低血糖が見られても、すぐに正常な血糖値に回復することが多いのですが、なかには低血糖の状態が続いてしまうケースも。低血糖は脳に悪影響を与える恐れがあるので、注意が必要です。今回は新生児に起こる低血糖について、原因や症状、診断方法、治療法などをご紹介します。
新生児の低血糖とは?
低血糖とは、血液中の糖分が少なくなっている状態のことを指します。
糖分は、人間の脳の働きを支える重要なエネルギー源であり、低血糖の状態が続いてしまうと、脳に悪影響を与えて神経系の後遺症を引き起こす可能性があります(※1)。
赤ちゃんは低血糖にならないように、ママのお腹の中にいるときから胎盤を通して糖分を摂取し、出生後には母乳やミルクから糖分を得て、正常な血糖値を保っていきます。
新生児は低血糖になりやすい?
赤ちゃんは生まれると、それまで胎盤を通じて行われていた栄養供給が止まり、母乳かミルクを飲むまでは栄養を摂取できなくなります。
胎盤を通じて得ていた糖分も一時的に途切れてしまうため、新生児が低血糖になるのは生理的なものだといえます。一般的に、赤ちゃんの血糖値は生まれた後に急速に下がり、1〜4時間後には最も低くなります(※2)。
出生直後に血糖値が下がっても、ほとんどの新生児は体内のしくみのおかげで、徐々に血糖値は上昇していきます。しかし、なかには血糖値が正常に上がらず、低血糖の治療が必要になる場合もあります。
新生児の低血糖の原因は?低出生体重児はなりやすい?
新生児の低血糖を引き起こす原因は様々で、主にインスリン過剰分泌がある場合と、ない場合に分けられます。
インスリンは血糖値を下げる働きを持つホルモンで、インスリンが過剰分泌されていたり、成長ホルモンなど血糖値を上げるホルモンが欠乏していたりすると、低血糖を引き起こします(※1)。
たとえば、妊娠中に糖尿病にかかっていた場合、胎盤を通して通常より多くのブドウ糖が胎児に送られるため、血糖値を下げる働きを持つホルモン「インスリン」の分泌量も増えます。赤ちゃんが生まれると、胎盤によるブドウ糖の供給は止まりますが、インスリンは分泌され続けるため、血糖値が下がり、新生児が低血糖になります。
また、早産児や低出生体重児で、体内のグリコーゲン(筋肉などのエネルギー源)の蓄えが少ないと、一時的に低下した血糖値を上げることができず、低血糖を引き起こしやすくなります(※2)。
このほか、感染症も新生児の低血糖を引き起こす原因として考えられています(※2)。
新生児の低血糖の症状は?
新生児の低血糖が軽症だと、目立った症状が現れないことが多いのですが、重症の場合は以下のような症状が現れることがあります(※2)。
新生児の低血糖の主な症状
・元気がなく、母乳を飲まない
・ボーッとして意識レベルが低い
・痙攣に似た動きをする
・無呼吸になる
・顔色が悪く、青白くなっていたり、チアノーゼが起きている
・汗をたくさんかき、呼吸が荒くなる
新生児の低血糖の診断方法は?
新生児の低血糖の診断は、血糖値を調べる血液検査によって行われるのが一般的です。低血糖と共に起きやすい電解質異常を調べる検査が行われることもあります(※3)。
新生児の低血糖の治療法は?
低血糖の治療法は、基本的にブドウ糖を点滴して行います。点滴だけでは症状が良くならない場合は、ステロイド投与や血糖を上昇させるホルモン、またはインスリンの働きを抑える薬が使われることがあります(※2)。
また、何かの病気によって低血糖が引き起こされている場合は、その治療も行われます。
血糖値と体調が落ち着いてきたら、ママのおっぱいを増量し、糖分を供給していきます。血糖値が安定し、点滴の必要がなくなるまでは、入院して治療を行います。
新生児低血糖は早期治療が大切
新生児の低血糖は、発見が遅くなって治療が遅れてしまうと、低血糖の状態が長く続き、脳になんらかの障害を残す恐れがあります。特に早産児や低出生体重児で産まれ、新生児仮死があった場合は、様子を注意深く観察する必要があります。
ただ、低血糖と診断されても、点滴などで治療できるので、医師と相談のうえ落ち着いて対処していきましょう。