子供の成長には個人差がありますが、周りの子供に比べて我が子の成長が遅いと、「もしかして発達障害かな…」と思うことがあるかもしれません。それでは、発達障害の子供には、どのような特徴が見られるのでしょうか?また、どのような教育を行っていけば良いのでしょうか?今回は子供の発達障害について、原因や特徴、診断方法、治療方法などをご紹介します。
発達障害とは?

発達障害とは、脳機能に関する生まれつきの障害で、成長の過程で日常生活に支障をもつことで気づかされます。
発達障害がある子供は、コミュニケーションや対人関係の構築が苦手なため、行動や態度を誤解されて、周りから敬遠されてしまうこともあります。本人の障害への対処だけでなく、周りに障害を理解してもらえるようにサポートしていくことも、心がけていく必要があります。
発達障害の原因は?

発達障害は脳機能の障害によって起きているとされていますが、なぜ脳機能に障害が発生するのかは、はっきりと分かっていないのが現状です。
「子供の発達障害は、親の教育方法に原因がある」という説もありますが、現時点ではそれを裏付ける医学的根拠はありません。
発達障害にはどんな種類がある?特徴は?

発達障害には様々な種類があり、それぞれに以下のような特徴があります。
広汎性発達障害
広汎性発達障害とは、自閉症やアスペルガー症候群、レット症候群、小児期崩壊性障害などコミュニケーション能力や社会性に関わる発達障害の総称です。
自閉症
自閉症の特徴としては、「言語能力の発達の遅れ」「コミュニケーションの障害」「パターン化した行動」「特定のモノへの強いこだわり」などがあります(※1)。
アスペルガー症候群
アスペルガー症候群は、広義では自閉症の一種で、「コミュニケーションの障害」「パターン化した行動」「特定のモノへの強いこだわり」といった特徴があります。言語能力を含めた運動・知能発達の遅れがないため、思春期・成人になって初めて診断されることもあります(※1)。
また、強い興味や関心を抱いたものに関して、大人が驚くほどの知識を持っていることがあります。電車の時刻をすべて暗記しているなどがその例です。
注意欠陥多動性障害(ADHD)
注意欠陥多動性障害(ADHD:Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder)とは、「集中できない」「じっとしていられない」「衝動的に動いてしまう」といった特徴がある発達障害です(※1)。
特に時間に関する約束を忘れてしまったり、落ち着いて行動できなかったりしますが、周囲に目が行き届き、気配りが上手な面もあります。また、行動力は良好である側面もあります。
学習障害(LD)
学習障害(LD:Learning DisordersまたはLearning Disabilities)とは、全般的な知的発達には遅れがないのに、聞く、話す、読む、書く、計算する、推論するなどの特定の作業が得意ではない状態を指します。
知的発達に遅れはないので、ある作業が上手くできなくても、工夫をしてやり方を変えるといった対処ができます。
発達障害に気づくためのポイントは?

発達障害がある子供はコミュニケーションが苦手なため、幼稚園や保育園、小学校などの集団に入ると、様々な困難にぶつかり、ストレスを感じて不登校や引きこもりになることもあります。
できる限り早く症状に気づいてあげ、子供の個性を伸ばしながら、社会に適応する力を育んであげることが大切です。
政府広報オンラインは、発達障害に気づくためのポイントを公表しています(※2)。以下の特徴のうち、いくつか当てはまり、発達障害の疑いがある場合は、自治体の保健センターや発達障害支援センターに相談してみてください。
人との関わり方
一人遊びが多い、同年齢の子供となかなか遊べない
コミュニケーション
一方的に話すことが多い、話を聞かなければならない場面で聞いていない
イマジネーション・想像性
相手を傷つけることを言ってしまう、集団行動のときにボーっとしている
注意・集中
落ち着きがない、一つのことに没頭すると他の人の話が耳に入らない
感覚
同じ洋服でないと気に食わない、極端に偏食する
運動
身体がクニャクニャとしていることが多い、声が大きすぎる
学習
頭の回転が速いにも関わらず作業が遅い、読書好きだが作文が苦手
情緒・感情
一度感情が高まると興奮がおさまらない、思い通りにならないとパニックになる
発達障害の診断方法は?

発達障害の診断は、子供の様子をしばらく観察したり、親から普段の様子を聞いたりして行うのが一般的です。
発達障害の診断には、専門的な知識と経験が必要になるので、乳幼児健診などで可能性を指摘された場合は、各都道府県の発達障害者支援センターや地方自治体の障害福祉課に問い合わせて、専門医を紹介してもらいましょう。
発達障害の治療法は?

発達障害の治療法は、その種類によって異なります。
広汎性発達障害
広汎性発達障害は、薬を服用すれば完治するというようなことはなく、周りにサポートしてもらいながら、社会に適応するための力を培っていく必要があります。
まずは、小さな集団での療育で適応力を伸ばしていきます。療育とは、「医療や訓練、教育、福祉などを通じて、障害があっても社会に適応し自立できるように育成すること」を意味します。
広汎性発達障害を持っている子供のなかには、言葉が苦手な子もいるので、イラストや写真を使って、視覚的なコミュニケーションがとれる環境を整えてあげます。物事を組み立てる順序を丁寧に教えてあげると、子供の不安が減って、集団活動への意欲が高まります。
そして、子供が失敗したときは責めず、成功したときは褒めて、子供の自己肯定感や自信を強めてあげましょう。「どのようにすれば、うまくできるようになるのか」についてのアドバイスは、褒めたときに、具体的かつ肯定的に伝えます。
注意欠陥多動性障害(ADHD)
注意欠陥多動性障害は、薬物療法や生活環境の調整を行って対処していきます。
薬物療法で主に使用する薬は、アトモキセチンと塩酸メチルフェニデートで、どちらも脳内の神経伝達物質であるノルアドレナリンやドーパミンの不足を改善させる働きを持っています(※3)。
環境調整では、勉強をするときなど集中しないといけないときに、周りのおもちゃを片づけたり、テレビを消したりして、子供の集中を妨げる刺激を取り除きます。
学習障害(LD)
学習障害の子供には、その子の得意・不得意に合わせた教育支援を行うことが大切です。
例えば、読むことが苦手な場合には、大きな文字で書いて、それを指でなぞりながら読む、書くことが不得意な場合には、大きなマス目のノートにゆっくり文字を書くなどして、子供の個性を考慮した教育を行っていきます。
子供の得意な分野は褒めながら、どんどん伸ばしてあげましょう。
発達障害には早めの対処を
子供が発達障害だと診断されたら、「どうやって育てていけば良いのだろう」と不安を感じることもあるかもしれません。しかし、子供の発達障害は、成長によって状況がどんどん変わっていきます。
早い段階で発達障害に気づき、練習や訓練を積んでいけば、周りとコミュニケーションを取る方法を学び、成人したときに自立して生活できることもあります。発達障害との向き合い方について不安があるときは、一人で悩まずに、信頼できる人や機関に相談しましょう。
子供の個性を伸ばしてあげられる教育方法を見つけ、健やかな成長を支えていけるといいですね。