発達障害で子供に現れる症状や特徴は?親はどうやって気づけばいい?

監修医師 小児科 武井 智昭
武井 智昭 日本小児科学会専門医。2002年、慶応義塾大学医学部卒。神奈川県内の病院・クリニックで小児科医としての経験を積み、現在は神奈川県大和市の高座渋谷つばさクリニックに院長として勤務。内科・小児科・アレルギ... 監修記事一覧へ

子供の成長には個人差がありますが、周りの子供に比べて我が子の成長が遅いと、「もしかして発達障害かな…」と思うことがあるかもしれません。それでは、発達障害の子供には、どのような特徴が見られるのでしょうか?また、どのような教育を行っていけば良いのでしょうか?今回は子供の発達障害について、原因や特徴、診断方法、治療方法などをご紹介します。

発達障害とは?

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発達障害とは、脳機能に関する生まれつきの障害で、成長の過程で日常生活に支障をもつことで気づかされます。

発達障害がある子供は、コミュニケーションや対人関係の構築が苦手なため、行動や態度を誤解されて、周りから敬遠されてしまうこともあります。本人の障害への対処だけでなく、周りに障害を理解してもらえるようにサポートしていくことも、心がけていく必要があります。

発達障害の原因は?

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発達障害は脳機能の障害によって起きているとされていますが、なぜ脳機能に障害が発生するのかは、はっきりと分かっていないのが現状です。

「子供の発達障害は、親の教育方法に原因がある」という説もありますが、現時点ではそれを裏付ける医学的根拠はありません。

発達障害にはどんな種類がある?特徴は?

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発達障害には様々な種類があり、それぞれに以下のような特徴があります。

広汎性発達障害

広汎性発達障害とは、自閉症やアスペルガー症候群、レット症候群、小児期崩壊性障害などコミュニケーション能力や社会性に関わる発達障害の総称です。

自閉症

自閉症の特徴としては、「言語能力の発達の遅れ」「コミュニケーションの障害」「パターン化した行動」「特定のモノへの強いこだわり」などがあります(※1)。

アスペルガー症候群

アスペルガー症候群は、広義では自閉症の一種で、「コミュニケーションの障害」「パターン化した行動」「特定のモノへの強いこだわり」といった特徴があります。言語能力を含めた運動・知能発達の遅れがないため、思春期・成人になって初めて診断されることもあります(※1)。

また、強い興味や関心を抱いたものに関して、大人が驚くほどの知識を持っていることがあります。電車の時刻をすべて暗記しているなどがその例です。

注意欠陥多動性障害(ADHD)

注意欠陥多動性障害(ADHD:Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder)とは、「集中できない」「じっとしていられない」「衝動的に動いてしまう」といった特徴がある発達障害です(※1)。

特に時間に関する約束を忘れてしまったり、落ち着いて行動できなかったりしますが、周囲に目が行き届き、気配りが上手な面もあります。また、行動力は良好である側面もあります。

学習障害(LD)

学習障害(LD:Learning DisordersまたはLearning Disabilities)とは、全般的な知的発達には遅れがないのに、聞く、話す、読む、書く、計算する、推論するなどの特定の作業が得意ではない状態を指します。

知的発達に遅れはないので、ある作業が上手くできなくても、工夫をしてやり方を変えるといった対処ができます。

発達障害に気づくためのポイントは?

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発達障害がある子供はコミュニケーションが苦手なため、幼稚園や保育園、小学校などの集団に入ると、様々な困難にぶつかり、ストレスを感じて不登校や引きこもりになることもあります。

できる限り早く症状に気づいてあげ、子供の個性を伸ばしながら、社会に適応する力を育んであげることが大切です。

政府広報オンラインは、発達障害に気づくためのポイントを公表しています(※2)。以下の特徴のうち、いくつか当てはまり、発達障害の疑いがある場合は、自治体の保健センターや発達障害支援センターに相談してみてください。

人との関わり方

一人遊びが多い、同年齢の子供となかなか遊べない

コミュニケーション

一方的に話すことが多い、話を聞かなければならない場面で聞いていない

イマジネーション・想像性

相手を傷つけることを言ってしまう、集団行動のときにボーっとしている

注意・集中

落ち着きがない、一つのことに没頭すると他の人の話が耳に入らない

感覚

同じ洋服でないと気に食わない、極端に偏食する

運動

身体がクニャクニャとしていることが多い、声が大きすぎる

学習

頭の回転が速いにも関わらず作業が遅い、読書好きだが作文が苦手

情緒・感情

一度感情が高まると興奮がおさまらない、思い通りにならないとパニックになる

発達障害の診断方法は?

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発達障害の診断は、子供の様子をしばらく観察したり、親から普段の様子を聞いたりして行うのが一般的です。

発達障害の診断には、専門的な知識と経験が必要になるので、乳幼児健診などで可能性を指摘された場合は、各都道府県の発達障害者支援センターや地方自治体の障害福祉課に問い合わせて、専門医を紹介してもらいましょう。

発達障害の治療法は?

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発達障害の治療法は、その種類によって異なります。

広汎性発達障害

広汎性発達障害は、薬を服用すれば完治するというようなことはなく、周りにサポートしてもらいながら、社会に適応するための力を培っていく必要があります。

まずは、小さな集団での療育で適応力を伸ばしていきます。療育とは、「医療や訓練、教育、福祉などを通じて、障害があっても社会に適応し自立できるように育成すること」を意味します。

広汎性発達障害を持っている子供のなかには、言葉が苦手な子もいるので、イラストや写真を使って、視覚的なコミュニケーションがとれる環境を整えてあげます。物事を組み立てる順序を丁寧に教えてあげると、子供の不安が減って、集団活動への意欲が高まります。

そして、子供が失敗したときは責めず、成功したときは褒めて、子供の自己肯定感や自信を強めてあげましょう。「どのようにすれば、うまくできるようになるのか」についてのアドバイスは、褒めたときに、具体的かつ肯定的に伝えます。

注意欠陥多動性障害(ADHD)

注意欠陥多動性障害は、薬物療法や生活環境の調整を行って対処していきます。

薬物療法で主に使用する薬は、アトモキセチンと塩酸メチルフェニデートで、どちらも脳内の神経伝達物質であるノルアドレナリンやドーパミンの不足を改善させる働きを持っています(※3)。

環境調整では、勉強をするときなど集中しないといけないときに、周りのおもちゃを片づけたり、テレビを消したりして、子供の集中を妨げる刺激を取り除きます。

学習障害(LD)

学習障害の子供には、その子の得意・不得意に合わせた教育支援を行うことが大切です。

例えば、読むことが苦手な場合には、大きな文字で書いて、それを指でなぞりながら読む、書くことが不得意な場合には、大きなマス目のノートにゆっくり文字を書くなどして、子供の個性を考慮した教育を行っていきます。

子供の得意な分野は褒めながら、どんどん伸ばしてあげましょう。

発達障害には早めの対処を

子供が発達障害だと診断されたら、「どうやって育てていけば良いのだろう」と不安を感じることもあるかもしれません。しかし、子供の発達障害は、成長によって状況がどんどん変わっていきます。

早い段階で発達障害に気づき、練習や訓練を積んでいけば、周りとコミュニケーションを取る方法を学び、成人したときに自立して生活できることもあります。発達障害との向き合い方について不安があるときは、一人で悩まずに、信頼できる人や機関に相談しましょう。

子供の個性を伸ばしてあげられる教育方法を見つけ、健やかな成長を支えていけるといいですね。

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