子どもの成長には個人差がありますが、周りの子ができていることができなかったりすると「発達障害なのかな…」と思うことがあるかもしれません。もし、子どもが発達障害だった場合、どのような特徴・特性(症状)が見られるのでしょうか?
今回は、子どもの発達障害について、原因や特徴・特性、診断方法、向き合い方などをご紹介します。
発達障害(神経発達症)とは?
発達障害(神経発達症)とは、脳の働き方の違いによって物事のとらえかたや行動パターンに違いがおこり、日常生活に支障をきたす状態のことです(※1)。
発達障害のある子どもは、コミュニケーションや対人関係の構築が苦手なことが多く、行動や態度を誤解されて、周りから敬遠されてしまうこともあります。そのため、本人の特性に合わせて発達支援をしていくことが大切です。
発達障害の原因は?
発達障害は、生まれつきの脳の機能的な問題が原因で起こります(※2)。発達障害の種類によっては、妊娠中の喫煙や飲酒、若年での出産、妊娠中のストレス、遺伝なども関係しているのではと考えられています(※3,4)。
「育て方が悪いのかな?」「この子は怠けているの?」と不安になってしまうこともあるかもしれませんが、発達障害は、あくまでも「生まれつきの特性」なので、育て方やしつけ方、本人の性格が原因で起こることはありません。
発達障害にはどんな種類がある?特徴・特性は?
発達障害にはいくつかの種類があります。ここでは、代表的な4つの発達障害と、それぞれの特徴・特性をご紹介します。ただし、特性の現れ方や程度は人それぞれです。
知的能力症
知的機能が標準を下回っていて、正常な日常生活を送るのが難しい状態です(※1,5)。
日常生活や学校生活、社会生活を送るために必要な適応能力が、どのくらいあるか・ないかによって重症度を判断していきます。
自閉スペクトラム症(ASD)
「自閉症」「広汎性発達障害」「アスペルガー症候群」などをまとめた総称で、主に対人関係や社会的なやりとりが苦手、特定のものやルールに対して強いこだわりを示す、言語の発達が遅い、といった特性がみられます(※1,6)。
注意欠如・多動症(ADHD
幼稚園や保育園、小学校、家庭などで、注意が持続しにくかったり集中力が乏しかったりする、落ち着きがない、待てないといった特性がみられます(※1,7)。
学習症(限局性学習症、LD)
知的発達は正常ですが、読む、書く、計算するなど特定の学習のみに困難が生じる状態です(※1)。
発達障害に気づくためのポイントは?
発達障害がある子どもの多くは、人との関わりやコミュニケーションが苦手なため、幼稚園や保育園、小学校などの集団生活でさまざまな困難にぶつかり、ストレスを感じてしまうことがあります。
できるだけ早く発達障害に気づいて、子どもの特性を理解しながら社会に適応する力を育むサポートをすることが大切です。
政府広報オンラインは、「発達障害に早く気づくポイント」を公表しています(※8)。
以下の項目のいくつかに当てはまり、発達障害の可能性が疑われる場合は、自治体の保健センターや発達障害支援センターに相談してみてくださいね。
人との関わり方
・一人遊びが多い、一方的でやりとりがしにくい
・おとなしい、常に受動的
・同級生と遊べない(大人、年上の子、年下の子とは遊べる)
コミュニケーション
・話すのは上手で難しいことを知っているが、一方的に話すことが多い
・おしゃべりだが、保育士や教師の指示が伝わりにくい
・話を聞かなければならない場面で聞いていない、席を離れてしまうことが多い
イマジネーション・想像性
・相手が傷つくことや相手にとって失礼なことを言ってしまう
・友だちがわざとではなくふざけてやっていることを取り違えて、いじめられたと思ってしまう
・集団で何かしているときに、ふらふらと歩いていたりボーッとしていたりする
・急な予定変更時に混乱してしまう
注意・集中
・没頭すると話しかけても聞いていない
・落ち着きがない、集中力がない、いつもぼんやりとしている
・忘れ物が多い、片付けや支度ができない
感覚
・大きな音が苦手、ザワザワとした音に敏感で耳をふさぐ
・いつも同じ洋服でないと嫌がる、靴下を脱いでしまう、手をつなぎたがらない
・極端な偏食をする
・すき間のような狭い空間を好む、揺れている所を極端に怖がる
運動
・体がクニャクニャとしていることが多い、床に寝転がることがある
・極端に不器用、絵や字を書く時に筆圧が弱い、食べこぼしが多い
・運動をするとき乱暴と思われる動き方をする、大きすぎる声を出すことが多い
学習
・話が流暢で頭の回転が速いのに、作業は極端に遅い
・難しい漢字を読むことができる一方で、ひらがなが書けない
・本や図鑑を読むのは好きだが、文章を書くことは苦手
情緒・感情
・ちょっとしたことでも注意されるとかっとなりやすい、思い通りにならないとパニックになる
・感情が高まると興奮がなかなかおさまらない
発達障害の診断方法は?
発達障害の診断は、専門の医師が子どもの様子をしばらく観察したり、親から普段の様子を聞いたりして、診断基準を満たしているかで判断されるのが一般的です(※3,9)。
乳幼児健診などで発達障害の可能性を指摘された場合は、発達障害者支援センターや市区町村の保健センターに問い合わせて、専門医を紹介してもらいましょう。
特に指摘はされていなくても、もしなにか不安なことがある場合は、かかりつけの小児科医に相談してみてくださいね。
発達障害の子どもと接するときのポイントは?
発達障害は、生まれつきの脳の機能障害とされています。本人の特性に合った療育や教育的な対応を早くから行うことで、心の発達や円滑な社会生活を送るためのサポートができます。
子どもが自尊心を保ち、持っている力を発揮できるように、接するときは以下のポイントを押さえておきましょう(※8)。
できたことを褒める・できないことを叱らない
発達障害のある子どもは、ほかの子ができることが、なかなかできないことがよくあります。できないことや失敗したことばかりをみて、叱ったり責めたりするのはやめましょう。
努力した部分や少しでもうまくいっている部分を褒めて、できなかったこと・失敗したことは、どうしたら改善できるかを一緒に考えたり具体的に伝えられたりするといいですね。
目で見てわかる情報を使って説明する
発達障害のひとつである自閉スペクトラム症(ASD)の特性がある子どもの多くは、言葉で伝えられるよりも、視覚的な情報のほうが理解しやすいといわれています。
絵や写真、図などを使いながら言葉とともに説明すると、理解しやすくなるはずですよ。
短い文で順を追って具体的に説明する
発達障害の子どもは、少しでもあいまいな表現をされると理解するのに苦労します。説明をするときは、できるだけ短い文で、順を追って、具体的に話す、といったことを心がけましょう。
安心できる環境をつくる
自閉スペクトラム症(ASD)をはじめ、発達障害の種類によっては、大きな音や光などの刺激、人混みなどが苦手という特性をもつ子もいます。
刺激による不快感や不安が大きくならないように、安心できる環境を整えてあげましょう。
ルールや良いこと・悪いことをはっきり教える
社会の一般的なルールや良いこと・悪いことが理解できないことがあります。やってはいけないこと・周りに迷惑をかけることをしてしまったときは、都度しっかり注意しましょう。
その際、叱ったり怒ったりするのではなく、どうしていけないのか、どのようにしたら改善するのかなどを教えられるといいですね。
発達障害に気づいたら早めに相談しよう
発達障害に早い段階で気づくことで、子どもの特性にあったサポートやケアをしていくことができます。もし子どもに気になることがあるときは、発達障害者支援センターや市区町村の保健センター、信頼できる人に相談しましょう。
子どもの特性を伸ばしてあげられる方法を見つけ、成長を見守っていけるといいですね。