生まれたばかりの新生児には、ママのお腹の外でもしっかりと生き抜くことができるよう「原始反射」というものが備わっています。代表的なものとして、手の平に触れるとキュッと握り返してくる「把握反射」と、おっぱいや哺乳瓶に吸いつく「吸啜反射」があります。今回は、把握反射と吸啜反射について、どんな動きが見られるのか、いつまでに消失するのか、弱いときはどんな状態なのかを含めご説明します。
把握反射・吸啜反射とは?
把握反射・吸啜反射(吸てつ反射)は、生まれたばかりの赤ちゃんにみられる原始反射です。原始反射はいくつか種類がありますが、なかでも、この2つは代表的な反射で、1ヶ月健診のチェック項目にも含まれています。
赤ちゃんがママのお腹の外でもしっかりと生きられるように、原始反射は生まれる前からすでに備わっています。特定の刺激に対して自然と反応し、その反応があることで、後の発達にも影響があると考えられています。
以下に、把握反射と吸啜反射の特徴をご紹介します。
把握反射
把握反射とは、赤ちゃんの手の平に物が触れたときに強く握り返してくる動きです。母猿に子猿がしがみつくように、人間の祖先に備わっていた反射の名残だといわれます。
足の裏でも同じような反射がみられ、足の裏の指に近い場所を刺激すると、足の指をまげて握ろうとします。
吸啜反射
吸啜(きゅうてつ)とは、その字の通り「吸う」反射のことで、赤ちゃんは口に触れたものを無意識にくわえて吸いつこうとします。
これは、おっぱいから母乳を吸い出すために備わっている動きで、同じく哺乳瓶からミルクを吸うためにも必要なもの。赤ちゃんが自ら生きるための栄養を摂取するためにとても重要な反射です。
吸啜反射に関連するもので、赤ちゃんの口のまわりを指で触ると反射的にその方向に頭をまわして口を開く「探索反射」や、赤ちゃんの口のまわりを指で触れると、舌と唇を使ってくわえようとする「捕捉反射」があります。
吸啜反射・把握反射はいつまで続く?
把握反射や吸啜反射は、成長するにつれて消失していきます。赤ちゃんの脳が発達して自発的に動けるようになり、原始的な反射が必要なくなると見られなくなりますよ。
把握反射は生まれてすぐに見られ、生後5~6ヶ月頃にはなくなります。足の裏の把握反射はもう少し長く続いて、手の把握反射から2~3ヶ月ほど遅れて消失します。
吸啜反射は、ママのお腹にいる妊娠32週頃から出始め、把握反射と同じく生後すぐから見られます。生後6ヶ月頃にはほとんど見られなくなりますが、それ以降もおっぱいや哺乳瓶から授乳できるのは、吸啜反射の流れで自発的に吸いつく力がついてきた証です。
原始反射がいつまで続くかは個人差が大きいので、あくまでも目安として考えてくださいね。
把握反射・吸啜反射が弱いのは問題あり?
把握反射・吸啜反射は、時期に個人差があるように、その反応の強弱にも個人差があります。我が子の反応を見て、「うちの子は吸啜反射や把握反射がない」と思うママもいるかもしれません。
しかし、反応がないのではなく、動きが弱いことからわかりにくいだけで、成長や発達などに問題がないことがほとんどです。
把握反射や吸啜反射をはじめとした原始反射は、現れる時期と消失する時期に個人差があるとはいえ、一定の期間が過ぎてもまったく見られない、あるいは消失すべき時期に消失していない場合は、脳障害の可能性があることも確かです。
赤ちゃんの把握反射・吸啜反射が、弱い・見られないと感じる場合は、生後1ヶ月や生後3~4ヶ月に行う乳幼児健診のときに医師に相談してみましょう。乳児健診では、中枢神経系の発達や成熟度を確認します。
自分では判断が難しいので、乳幼児健診は必ず受診するようにしてくださいね。医師から問題を指摘されなければ、心配はいりませんよ。
吸啜反射・把握反射はじっくり様子を見て
把握反射や吸啜反射は、赤ちゃんのときにしか見られない特有のもの。赤ちゃんとのスキンシップも兼ねて、授乳やミルクの前に上唇の先端を少し触ってみたり、赤ちゃんが起きているときに手の平に触れてみたりするなどして、反応をチェックしてください。
ただし、むやみに触ったり、何度も繰り返したりすると、赤ちゃんにとってストレスになることもあるので、ほどほどにしましょう。また、1回試してみて反応が弱かったからといって、過度に心配しないでくださいね。
赤ちゃんの一つ一つの動きに過敏になりすぎず、じっくりと様子を見てあげることも大切ですよ。新生児期の心配事はメモをしておき、乳児健診時にまとめて確認しておけるようにしておきましょう。