腸閉塞とは、腸が塞がれて食べ物やガスなどが通れなくなる病気です。症状は嘔吐や顔色が悪くなることなどですが、血液の流れに障害を起こしている場合は急いで手術をする必要があるので、注意すべき病気といえます。そこで今回は、赤ちゃんや子供が腸閉塞になったときに慌てずにすむように、腸閉塞の症状や原因、治療法、そしてどのようなときに手術が必要なのかについて説明します。
腸閉塞(イレウス)とは?
腸閉塞(ちょうへいそく)とは別名「イレウス」とも呼ばれており、さまざまな原因により腸が塞がれてしまい、食べ物や消化液、ガスなどが通過しなくなってしまう病気です。
腸閉塞は大人だけでなく、生まれたばかりの赤ちゃんや小さな子供でも腸の先天的な奇形によって発症することがあります。
腸閉塞には2種類あります。腸の内容物の通過にのみ支障をきたしている「閉塞性腸閉塞」と、それに伴い血液の流れに障害がある「絞扼性(こうやくせい)腸閉塞」です。
腸閉塞は急激な腹痛を伴う病気の中でも、虫垂炎についで多いとされています(※1)。
腸閉塞は赤ちゃんや子供もなる?
子供や赤ちゃんは、様々な病気によって腸閉塞になってしまうことが知られています。以下に、生まれてすぐに腸閉塞を引き起こす病気と、生後しばらく経ってから腸閉塞を引き起こす病気を紹介します(※2)。
生まれてすぐに腸閉塞を引き起こす病気
赤ちゃんが生まれてすぐに腸閉塞を引き起こすのは、先天性の病気が原因の場合もあれば、後天性の病気による場合もあります。
● 先天性食道閉鎖
● 先天性十二指腸閉鎖・狭窄
● 先天性小腸閉鎖・狭窄
● 直腸肛門奇形
● ヒルシュスプルング病
● ヒルシュスプルング病類縁疾患
● 周産期胎児循環異常
● 敗血症
● 甲状腺機能低下症
なお、最近は先天性の腸閉塞は出生前に判明することが増えています。
病気ではありませんが、低出生体重児も生まれてすぐに腸閉塞になってしまう可能性があります。
生後しばらくたってから腸閉塞を引き起こす病気
生まれてしばらくたった赤ちゃんや、小さな子供で腸閉塞を引き起こす病気も複数あります。ただし年齢によって発症する病気の頻度は異なります。
● 壊死性腸炎(低出生体重児に多い)
● 肥厚性幽門狭窄症(生後1ヶ月程度)
● 腸重積(生後3ヶ月に多い)
● 腸回転異常・中腸軸捻転
● メッケル憩室
● 腸管重複症
● 術後イレウス
● 巨大水腎症
● 神経芽腫、腎芽腫
● 胃食道逆流症
● 食道裂孔ヘルニア
● 胃軸捻転症
病気ではありませんが、ミルクアレルギーを持っている赤ちゃんも生後しばらくたってから腸閉塞に似た症状を引き起こすことがあります。
腸閉塞の症状は?便秘になるの?
では、腸閉塞になるとどのような症状があるのでしょうか?
腸閉塞の症状は、原因や閉塞が起こっている部位、発症から診断までの時間経過などによって異なります。
子供が腸閉塞になったときの典型的な症状は以下の通りです(※3)。
● 嘔吐
● お腹の張り
● 便が出ない
● 繰り返し起こる腹痛
● 不機嫌
腸閉塞の原因は?ストレスでなる?
腸閉塞の原因には「機械的閉塞」と「機能的閉塞」の2つがあります(※1)。
機械的閉塞(腸の形が原因で起こる閉塞)
腸の働きは正常だけれども、大腸がんや異物などで腸がふさがってしまったり、開腹手術後に腸が癒着して起きる場合を機械的閉塞といいます。腸閉塞の原因の90%を占めています。
機能的閉塞(腸の動きが原因で起こる閉塞)
腸はねじ曲がったりしていないけれど、麻痺や痙攣を起こし、腸が正常に働かなくなってしまったことで起きる閉塞を機能的閉塞といいます。主にウイルス感染により腸の動きが麻痺したときにみられます。
腸閉塞の検査方法は?新生児と乳幼児はちがう?
子供に腸閉塞の疑いがあるときは、初期診断にエックス線撮影を用います。この検査では、考えられる関連合併症についても何かしら情報が得られる可能性があります。
手術をする場合には、超音波検査や造影検査、CT検査を行うこともあります(※3)。
腸閉塞は手術が必要?食事はダメ?入院するの?
子供が腸閉塞になってしまったら、どうやって治療するのでしょうか?
腸閉塞になると脱水症状になってしまうため、点滴などを行って失われた塩分・体液を補います。次に鼻などからチューブを入れ、内容物を吸引してお腹の圧を下げます。新生児の場合は敗血症の合併が疑われるため、通常、培養検査を行った後に抗菌薬を投与します。
子供が血流障害を伴い絞扼性腸閉塞を起こしていたら、腸が壊死したりすることがあるので急いで手術をする必要があります。
手術を行わない治療は、基本的には癒着や炎症による腸閉塞のときだけです。その場合はチューブによる吸引か抗炎症薬での治療になります。ただし、12〜24時間以内に症状が改善しない場合は手術をする必要があるとされています(※3)。
腸閉塞かなと思ったら病院に行きましょう
腸閉塞で重要なのは、腸が血行障害を起こしているかどうかで治療方針が異なるということです(※2)。もし、血行障害を伴う絞扼性腸閉塞であれば、すぐに手術をしなければなりません。
子供が吐いたり便秘だからからといって自分で腸閉塞だと判断するのではなく、まずは内科や消化器科のある病院で診てもらいましょう。
予防するのは難しいかもしれませんが、腸閉塞がどんな病気で、どんな症状が出るのかを知っておけば、いざというときに落ち着いて対処できます。家族の誰もがかかる可能性のある病気のひとつとして、頭の片隅に置いておいてくださいね。