赤ちゃんがかかりやすい病気の1つに「腸重積(ちょうじゅうせき)」があります。これは、赤ちゃんの腸の一部が、同じ腸の中に入り込んでしまうという病気で、治療が遅れると、腸が壊死し重篤な症状を起こすことがあります。そのため、手遅れにならないように、腸重積の症状が見られたらすぐに病院に連れて行かなければいけません。今回は赤ちゃんの腸重積について、原因や症状、診断方法、治療法などをご紹介します。
腸重積とは?赤ちゃんに発症しやすい?
「腸重積」とは、腸の一部が腸の中に潜り込んでしまうお腹の病気です。生後6ヶ月前後の赤ちゃんに発症することが多い病気ですが、生まれたばかりの赤ちゃんや1歳を過ぎた幼児や子供もかかることがあります(※1)。
また、女の子より男の子の方が2倍くらい多く発症するといわれています(※1)。
よくあるケースは、回腸(小腸の終わりの部分で、盲腸の近く)が大腸内に入り込んでしまうもので、もぐりこんだ小腸の一部は望遠鏡を閉じたときのように、二重もしくは三重に折り重なっていきます。
腸重積は対処が遅れると、折り重なった部分の血液が止まって壊死を引き起こしてしまう恐れがあります。
赤ちゃんの腸重積の原因は?
赤ちゃんに腸重積が起きる原因については、まだはっきりとしたことが分かっていません。腸のリンパ組織が腫れて大きくなるためや、腸管のウイルス感染により異常な蠕動運動が起きるためなど、腸重積の原因についてはさまざまな説があります。
ただし、突発的に起こる腸重積はウイルスが関係していることが多く、胃腸炎が治った後などに発症しやすいといわれています。
赤ちゃんの腸重積の症状は?
腸重積の症状としては、腹痛のため不機嫌になり泣く、顔面蒼白、不機嫌、嘔吐、血便などが挙げられます。赤ちゃんや子供が腸重積になった場合、最初の症状として機嫌が悪くなったり、ぐずったりするようになります。
そこから腹痛が増してくると激しく泣いたり、顔色が悪くなったりしますが、しばらくすると痛みが引き、泣き止みます。しかし、5~15分すると再び腹痛が起こることが多く、泣いたり泣き止んだりを繰り返します。
また、折り重なった腸の部分が食べた物や飲んだ物の通りを悪くするので、嘔吐することが多くあります。症状が進むと、イチゴジャムに似た血便が出てくることもあるので、うんちもしっかり確認するようにしましょう。
腸重積は迅速に対処する必要があるので、腸重積の特徴に似た症状が現れた場合は早急に病院を受診してください。夜間や休日は、救急病院に連絡しましょう。
赤ちゃんの腸重積の診断方法は?
腸重積の診断は、月齢または年齢と現れた症状を確認したうえで、お腹を触ってソーセージのようなしこりがないかチェックしたり、腸重積が起きている可能性がある箇所を超音波検査で調べたりします。
浣腸をして、イチゴ状の血便が見られるかを調べるのもひとつの方法です。
赤ちゃんの腸重積の治療法は?
腸重積の治療は、基本的に注腸整復で行います。注腸整復とは、空気や造影剤(レントゲン写真に写る物質)を肛門から腸に入れて、腸が重なり合った部分を膨らませて、腸管をもと通りに戻す方法です。
症状の程度にもよりますが、腸重積の発症から24時間以内に注腸整復を行えば、ほとんどの腸重積が治るといわれています(※1)。
しかし、注腸整復でも治らない場合や発症から24時間以上経っている場合は、開腹手術による治療が必要です。
開腹手術で、もぐりこんだ腸を押し出し、壊死した部分があれば切除し正常な腸同士をくっつけます。手術をした場合は、一般的に10日以上入院することになります。
赤ちゃんの腸重積は再発するの?
腸重積を整復した後に再発する確率は約10%といわれており(※1)、腸重積を2~3回繰り返す赤ちゃんもいます。しかし、1歳になれば治ることがほとんどなので、しばらく様子を見るケースが多いようです。
整復後の方針として、「腸重積が再発したかも」と思ったら2時間くらい様子を見て、そのあとに浣腸薬を使うというものもあります。浣腸によって血便が出たら腸重積の可能性があるので、至急受診します。
赤ちゃんの腸重積は早期発見が大切
腸重積は腸が壊死する可能性がある怖い病気ではありますが、現れる症状もはっきりしているので、少しでも赤ちゃんの異変に気づいたらすぐに受診しましょう。発症からすぐに病院に連れて行けば、比較的簡単な処置で治る可能性もあります。
そのためにも腸重積がどんな病気で、どんな症状が現れるのかを知っておくことが大切です。赤ちゃんの腸重積は早期発見・早期治療が第一ということを覚えておいてくださいね。