嘔吐下痢症に感染!感染期間や感染力は?人からうつるの?

監修医師 小児科 武井 智昭
武井 智昭 日本小児科学会専門医。2002年、慶応義塾大学医学部卒。神奈川県内の病院・クリニックで小児科医としての経験を積み、現在は神奈川県大和市の高座渋谷つばさクリニックに院長として勤務。内科・小児科・アレルギ... 監修記事一覧へ

その名のとおり、嘔吐や下痢などの症状を引き起こす「嘔吐下痢症」。実は子供がとても感染しやすい病気でもあります。そこで今回は、嘔吐下痢症はうつるのかどうかや、感染経路、感染力や感染期間などについてご紹介します。

嘔吐下痢症とは?

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嘔吐下痢症とは、嘔吐や下痢などの症状を引き起こす感染症の総称で、感染性胃腸炎とも呼ばれています。嘔吐や下痢に加え、発熱や吐き気、腹痛などの症状も現れることがあります。

嘔吐下痢症は、細菌やウイルス、寄生虫など、さまざまな原因によって起こります。原因として多く報告されているのはウイルスによるものが多く、感染者の年齢層は幼児~小学生が多いと考えられています(※1)。

原因となるウイルスには次のようなものがあります。

ロタウイルス

ロタウイルスとは、3~4月に流行のピークを迎えるウイルスで、感染すると、嘔吐と水っぽい下痢に加え、発熱や、乳児の場合は痙攣の症状も現れます。症状が続くと、脱水症状などを起こすこともあります。

感染者は生後6ヶ月から2歳までの子供が多く、5歳までにほとんどの子供が一度は感染すると言われています(※2)。

便の色に特徴があり、患者の約半数に白色から黄色がかった白色の便が出たというデータもあります(※3)。

ノロウイルス

ノロウイルスは、11~12月に流行のピークを迎えるウイルスで、感染すると、嘔吐、下痢に加え、頻度は低いものの、発熱や痙攣の症状などが現れることがあります。

年齢に関係なく、乳幼児からお年寄りまで感染する可能性があります。

アデノウイルス

アデノウイルスは、季節に関係なく一年中感染者が見られるウイルスで、特に夏は感染者が多い傾向があります。型が50種類以上あり、その中で31型、40型、41型に感染すると、嘔吐、下痢のほかに、腹痛や発熱などの症状が現れます(※4)。

アデノウイルス感染による胃腸炎は、乳幼児が多く発症します。

嘔吐下痢症はうつる?感染経路は?

嘔吐下痢症は感染症のため、原因となる細菌やウイルス、寄生虫によっては、人から人にうつることがあります。

人から人にうつる場合の感染経路は、感染者の嘔吐物や便に含まれるウイルスが手やものを介して口に入る経口感染や、便が乾燥することで空中にウイルスが放出されて、それを吸い込むことで感染する空気感染があります。

また、細菌やウイルス、寄生虫に汚染された水や食品を口にすることでも、感染することがあります。

嘔吐下痢症の感染力は?

増加 グラフ 増える 黒板 アップ

嘔吐下痢症の感染力は、原因になっているウイルスによって異なります。特に感染力が強いのは、ロタウイルスです。

ロタウイルスの感染者の便には、1gあたり1000億から1兆個ものロタウイルスが含まれていますが、そのうち10~100個のウイルスが体内に入っただけでも感染し、嘔吐下痢症にかかる可能性があります(※5)。

そのため、おもちゃやタオルなど、共有物の多い保育園や学校などでは、特に感染が広がりやすい傾向があります。

嘔吐下痢症に感染する期間は?

時計 カレンダー 時間

嘔吐下痢症は、一年を通して感染する可能性があります。冬~春はノロウイルスやロタウイルス、夏はカンピロバクターやサルモネラ、腸炎ビブリオなどの細菌や食中毒などが原因で、感染者が増える傾向があります。

また、嘔吐下痢症が人から人へと感染する場合、ウイルスに起因するものであれば、発症から最低1週間は便にウイルスが排出されるため、感染源になります(※6)。その期間中は、感染者への接触は特に注意しましょう。

嘔吐下痢症に感染したときの治療方法は?

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嘔吐下痢症に感染したときの治療は、原因によって方法が異なります。ウイルス性のものでは症状を和らげるための治療が中心になる一方、細菌や寄生虫が原因の場合は、それぞれの細菌に効く抗菌薬の服用や、寄生虫の摘出などの治療を行います。

嘔吐下痢症になった子供を看病していると、市販の下痢止めを与えたくなるかもしれませんが、おすすめできません。特に細菌が原因の場合は、毒素が便と一緒に排出されるのを下痢止めが妨げ、逆効果になってしまう可能性もあります。

嘔吐下痢症のときに市販の下痢止めを与えるのは避けたほうがいいでしょう。

嘔吐下痢症の感染は予防できる?

これまでご紹介してきたとおり、嘔吐下痢症の原因にはさまざまな病原体があります。そのため、全ての原因からの感染を完璧に防ぐような予防方法はありません。

しかし、食品を中心部まで十分に加熱するなど、食中毒の一般的な予防方法や、手洗いの徹底、患者との接触をできるだけ避けるなどの感染症予防を行うことは、一定の効果があるとされています(※1)。

また、ロタウイルスに関しては生後6週間から接種できるワクチンがあるので、早期の接種をおすすめします。

自宅でも、できる範囲で予防を行ってみましょう。

嘔吐下痢症は感染力が強い、うつる病気です

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嘔吐下痢症は原因となる病原体が多く、種類によっては感染力が非常に強いものもあります。しかし、感染経路や感染期間などを知ることで、兄弟姉妹やママ・パパにうつる可能性をある程度減らすことはできます。

また、もし子供が感染したとしても、ママ・パパが焦ってしまっては元も子もありません。嘔吐の症状が治まったら、脱水症状を防ぐために塩分と水分が同時に摂れるOS-1などの経口補水液などを、スプーン1杯程度から少量ずつこまめに与えます。

食欲が戻ってきたら、子供が食べやすいように柔らかく煮たうどんやおかゆ、味噌汁など、でんぷん質が多く含まれるものを水分と同様に回数を分けて少しずつ与えましょう(※6)。

子供が苦しんでいるときこそ、ママ・パパの支えが必要です。落ち着いて子供のケアをしてあげてくださいね。

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