「子供が急に吐いちゃった!でも熱はないみたい…」という状況になると、何の病気なのかわからず、対応に悩んだという経験もありますよね。このような症状が出たときに疑う病気としては、「嘔吐下痢症」があります。今回は乳幼児に起こる嘔吐下痢症について、原因や症状、治療法、食事はどうするかをご紹介します。
子供が嘔吐と下痢を繰り返すのに熱なし…病気なの?

子供が突然嘔吐と下痢を繰り返すのに熱がない、という場合に考えられるのは「嘔吐下痢症」という病気です。
嘔吐下痢症とは、「ノロウイルス」や「ロタウイルス」、「アデノウイルス」といったウイルスが体内に入り込み、ひどい嘔吐や下痢の症状が出る病気です(※1)。ウイルスの感染から生じるため、感染性胃腸炎とも診断されます。
ときには39度以上の発熱を伴うこともあるものの、熱は上がらない場合も多くあります(※2)。嘔吐は比較的短期間で治まりますが、嘔吐に加えて下痢が続くと脱水症状を起こす危険性があるので注意すべき病気です。
子供の嘔吐下痢症の原因は?

嘔吐下痢症の原因はウイルスの感染です。体内に侵入した悪いウイルスを追い出そうとして、嘔吐や下痢を繰り返します。季節によって感染しやすいウイルスは異なります。
ノロウイルス
一年を通して起こるものの、特に秋から冬にかけて感染が広がるのがノロウイルスです(※3)。数時間前まで元気で食欲もあったのに、急に嘔吐をし始めて驚くことも多いウイルスです。
あまり発熱がないことも特徴で、何度も嘔吐を繰り返し、食べたものを吐き切ると、黄色い胃液を吐き戻すこともあります。
ロタウイルス
ロタウイルスは年末から春先にかけて、6歳以下の乳幼児がかかりやすいウイルスです(※2)。ノロウイルスよりも症状が重くなることが多く、嘔吐・食欲低下・下痢も長引くことが多いとされています。熱が上がることが多く、感染力が強いウイルスです。
特徴的なのは便の色で、3人に1人くらいは白い便に変わります(※2)。1週間くらいは症状が治まっていてもウイルスが便に排泄されるため、注意が必要です。
また、ロタウイルスは重度の脱水症のほか、脳症・腎炎・心筋炎・けいれん重積などの重い感染となることがあります。生後6週目から受けられるロタウイルスワクチンを接種することで、感染したときの症状の悪化を防いでくれる効果が期待できます(※2)。
可能であれば生後14週6日までにロタウイルスワクチンを接種することを検討してください。
腸管アデノウイルス
夏場に比較的多いのですが、一年を通して感染するのが腸管アデノウイルスです(※4)。アデノウイルスが腸管に感染することで増殖してしまい、下痢や嘔吐、微熱などの症状を引き起こします。
下痢や腹痛の症状はロタウイルスと似ているものの、感染しても症状がないこともあります。ただし乳幼児が感染した場合は重症化することもあります。
子供の嘔吐下痢症の症状や感染期間は?

ウイルスに感染しても目に見えないため、「何の前触れもなく」という表現がぴったりくるほど、元気だった子供が突然吐き始めます。嘔吐は一度で終わらず何度も続き、ほぼ同時に下痢も始まります。子供によっては嘔吐だけ、下痢だけというケースもあります。
嘔吐自体は1日程度で終わりますが、下痢は長引きやすく1週間程度続く場合が多いようです。下痢は、便の色がクリーム色状になったり水便になったりするので、おむつを替えるときに確認してあげてください。
子供の下痢や嘔吐が止まらないとき病院に行くべき?

乳幼児はお腹を少し押すだけでも嘔吐してしまうなど、もともと敏感で嘔吐しやすいため、病院に行くべきなのか迷うということもありますよね。嘔吐は数時間か長くても1日で治まるので、子供の様子をよく見ながら症状が治まるのを待ちましょう。
ただし、嘔吐が2日目まで続き、「おしっこがほとんど出ていない」「涙や汗が出ていない」「口周りや頬が渇いてきた」「顔色が悪い」など、脱水症状が疑われる場合は、早急に病院を受診してください。口からの水分補給が難しくても、病院であれば点滴で水分と塩分の補給ができます。
また、下痢に血が混ざっている場合もすぐに病院を受診しましょう。
熱はないけど子供が嘔吐と下痢を繰り返す…登園してもいいの?

熱がなくとも、嘔吐下痢症はウイルス感染でほかの人にもうつるので、嘔吐や下痢などの症状が出ている間は保育園や幼稚園、学校は控えましょう。特に便には1週間ほどウイルスが排出されるので、治ったと思っても油断は禁物です(※2)。
登園停止になる期間は、保育園や幼稚園によって異なるため、通園先のルールを確認するようにしてください。
子供が嘔吐と下痢を繰り返す・熱なしのときの対処法は?

子供に熱がなく、嘔吐と下痢を繰り返す場合の対処法としては、ウイルスが体外に出て行くのを待つしかありません。このとき重要なのは、子供が脱水症にならないようにすることと、二次感染を防ぐことです。
水分補給
2017年の小児急性胃腸炎ガイドラインによると、水分補給をさせたい場合は、吐き気をもよおさない程度に小さじ1杯、キャップ1杯をあげるようにすることとされています。その際、少し塩を入れるとミネラル補給にもなって効果的ですよ。
注意点
吐き始めてしばらくの間は、何か口に入れると吐き気が増してしまうので、嘔吐している間は水分補給は最低限にしてください。
ひどい嘔吐や下痢を繰り返してぐったりしている子供を見ると「水分補給させなければ!」と慌ててしまいがちですが、無理に水分を飲ませなくても大丈夫ですよ。お腹を空っぽにさせたほうが胃を休ませることができ、吐き出すものがなくなれば体力を温存できます。
スポーツ飲料は脱水症状には効果がありますが、塩分が少ないものだと嘔吐を繰り返すうちに、体のミネラルバランスに異常が起きて、症状を悪化させる可能性があるので、吐き気が治まるまでは控えましょう。薬局や自動販売機で販売されるOS-1などの経口補水液を利用するのもおすすめです。
消毒
子供の嘔吐物や便のついたおむつを処理した後は、必ずアルコール消毒をしてください。もしも服に嘔吐物や便がついてしまった場合は、熱湯や漂白剤で消毒をしてから洗濯しましょう。
注意点
嘔吐下痢症を引き起こすウイルスは大人にも感染する危険性があるため、消毒する際には必ず手袋とマスクをつけましょう。また、子供と同じタオルを使うことは避けてください。
子供に熱はなく、嘔吐と下痢を繰り返すときの食事はどうする?

嘔吐や下痢が続いている間は、結局吐き戻してしまうため、無理に食事を摂る必要はありません。嘔吐が治まり、食欲が戻ってきたら、うどんやおかゆ、ジャガイモなどの煮物といった消化のいい食べ物、みそ汁やスープなどを少しずつ食べさせてあげましょう。
離乳食期の乳児のときは、いつもより軟らかく煮て、一つ前の段階の離乳食に戻すとよいでしょう。水のような下痢から軟便くらいまで改善されたら、通常の離乳食に戻しても構いません。ただし、肉や魚といった脂質の多いもの、嘔吐を引き起こしやすい柑橘類は避けた方がいいでしょう。
子供の嘔吐と下痢がひどい…熱なしならお風呂に入れる?

体のだるさも収まり、発熱もないようであれば、お風呂に入っても構いません。ただし、1日に10回近く下痢や嘔吐を繰り返しているようなら、無理して入浴させるよりも濡れたタオルなどで体を拭く程度にしておきましょう。
お風呂に入れるときも、お風呂につかると体調が変わるなどして便が漏れ出すこともあるため、しばらくはシャワーだけにしておくのがおすすめですよ。
子供に嘔吐と下痢…熱なしなら薬は必要?

熱はないとはいえ、子供が嘔吐や下痢で辛そうな姿を見ていると、市販薬でもなんとかしてあげたいと思いますよね。しかし、自己判断で下痢止めや吐き気どめなどを使うことはやめましょう。
体からウイルスを追い出そうとしているのに、薬で止めてしまうと、かえって嘔吐や下痢の症状を長引かせてしまいます。
市販で購入するときは、経口補水液などで脱水症状に対応するくらいにしてください。
ただし病院では、併発する熱や咳などに対しての抗生物質、腸内の必要な細菌を補充するための整腸剤、嘔吐下痢が激しく脱水症状の危険が感じられる際には、下痢止めや吐き気止めが処方されることもあります。処方された場合は、医師の指示に従って正しく服用しましょう。
どの薬もウイルスの増殖を抑制したり、死滅させる効果はないため、基本は脱水症状に注意しながら様子を見ることが大切です。
嘔吐下痢症の予防法は?

嘔吐下痢症はウイルスの感染から起こる感染症胃腸炎なので、感染予防が大切です。
● 外から帰ったら手洗い・うがいを徹底する
● 食べ物から感染しないように食品を十分加熱する
など、日頃からウイルスの感染に気をつけてください。
もし子供が感染してしまったときは、先述のように二次感染対策が大切です。子供と一緒にママやパパが感染してしまわないように、注意しましょう。
嘔吐や下痢が治まっても、2週間程度は二次感染に注意して過ごすようにしてくださいね。
子供の嘔吐と下痢が続くときは、どっしり構えて!

子供がひどい下痢と嘔吐を繰り返すと、熱はなくてもその症状の大変さに驚くと思います。何度も吐き出し、ひどい下痢でおむつが汚れてしまうのを見ると、心配になりますよね。
ただ、嘔吐下痢症の原因を根治する治療薬がないので、脱水症状に気をつけながら看病してあげるしかありません。
ママ・パパが動揺すると子供も不安になってしまうので、症状はひどくても時間がたてば治るものだとどっしり構え、子供から感染しないように注意しながら、寄り添ってあげてくださいね。